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専門店にある“特別なモノ”とは? カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 6・プロショップ編 第1回

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「カーオーディオ・プロショップ」の店内の様子(サウンドクオリティー・千葉県)。全 5 枚写真をすべて見る

カーオーディオについて調べてみると、あれこれ難解な専門用語が登場する…。それらの意味を1つ1つ解説している当連載。今回からは新章に突入し、「カーオーディオ・プロショップ」に関連した語彙について説明していく。

「カーオーディオ・プロショップ」には、試聴用の“壁”がある!?

ところで「カーオーディオ・プロショップ」も、言ってみれば「カー用品店」のうちの1タイプだ。しかしながらいわゆる「カー用品量販店」のように幅広くアイテムを扱うお店とはひと味もふた味も趣きが異なる。取り扱う製品のジャンルが狭まる反面、よりディープな様相を呈する。特別なものがさまざまあるのだ。

というわけなのでまず今回は、「カーオーディオ・プロショップ」だからこそあるスペシャルなものについて説明していこうと思う。

まず筆頭に挙げたいのは、「デモボード」だ。これはつまりは、スピーカーの試聴用の機材だ。スピーカーはできれば、音を聴いて選びたい。カタログのスペックを見ても実物を手にしても、結局はどんな音がするかが分からないと購入し難い。なので聴いて選べるように、試聴用の機材が用意されている。

ところでカー用のスピーカーは、スピーカーユニットが裸の状態で売られているので、そのままでは音を出せない。なぜなら、箱(エンクロージャー)に取り付けないとスピーカーとして成立しないからだ。

なお、箱が必要となる理由は以下のとおりだ。スピーカーユニットは裏側からも音を放つ。そしてその音は表側の音と「逆相」の関係にある。つまり、音波の形が真逆なのだ。そしてもしも「逆相」の関係にある音同士が同一空間で混ざり合うと、「キャンセリング」が引き起こされる。互いが互いを打ち消し合おうとする現象が起こるのだ。ボックスはそれを防ぐためのものでもある。スピーカーの裏側から放たれた音を箱の中に閉じ込めて「キャンセリング」を防止する。

で、カーオーディオではドアが箱の役目を果たすのだが、スピーカーの試聴をするのに各製品をクルマに装着するとなると車両が何台も必要になってしまう。そして聴き比べがしにくい。なので、試聴用のボックスが各店ごとで用意され、それにて試聴ができるようになっている。

そしてその箱を積み上げると、スピーカーが何個も取り付けられた“壁”が出現する。その“壁”のことが「デモボード」と呼ばれているのだ。

「カーオーディオ・プロショップ」の店内の様子(サブライム・群馬県)。

「カーオーディオ・プロショップ」には「木工室」がある!?

そしてカーオーディオ・プロショップには、「ピット」もある。ちなみに「ピット」は「カー用品」を扱うお店には大概備わっている。というのも、カー用品は取り付け作業に手間がかかる場合が多い。例えばタイヤやオイルの交換も簡単ではない。そういった作業もやってもらいたいと思うドライバーは多いので、「カー用品店」は取り付け等の作業を行うスペースを何らか用意している場合がほとんどだ。

「カーオーディオ・プロショップ」もしかりだ。「ピット」を併設し、そこでカーオーディオ機器の取り付けを行っている。

なお多くの「カーオーディオ・プロショップ」には、「ピット」とは別のスペシャルな作業室も用意されている。その作業場とは、「木工室」だ。

「木工室」とはその名のとおり、木工作業を行うための部屋だ。カーオーディオ製品の取り付けには実は、木工作業が必要になる場合が多いのだ。例えば、「ミッドウーファー」(ドアに装着するスピーカー)は、取り付けの際に「インナーバッフル」と呼ばれている土台となるパーツが必ず使われる。「カーオーディオ・プロショップ」はそれをワンオフすることが多い。

また、「ツイーター」の埋め込み取り付けをする場合にも木工作業が必須となる。例えばドアミラー裏に埋め込む場合なら、純正のドアミラー裏のパネルに穴を開け、そこにツイーターを固定するためのベースとなるリング状のパーツを木材で製作しはめ込み、そしてファイバーパテ等で整形し、最後は生地が貼られるか塗装されるかして完成となる。

これら一連の作業を「ピット」内で行うと、木くずやパテの削りカス等々で車両が汚れかねない。それもあって、作り物は専用のスペースで製作される、というわけなのだ。

「カーオーディオ・プロショップ」の店内の様子(カーズファクトリーシュティール・山形県)。

「カーオーディオ・プロショップ」は、木工作業用の専用機材も装備する!

ちなみに、自作派のドライバーの中にも木工加工を伴う作業まで自ら行う強者がいる。そしてそういったドライバーの多くは電動工具も充実させている。なお、DIY派のドライバーが用意する木工加工用の電動工具といえば、「ジグソー」が定番だ。これはいわゆる「糸ノコ」の電動バージョン的な工具だ。これがあれば木材を自由自在に切り出せる。ガイドを使えば真っ直ぐにも切れるし、フリーハンドで丸く切ったりもできる。

なお「ジグソー」はプロにも使われるが、プロはさらに大掛かりな工具も装備している場合が多い。プロ用の工具として定番なのは「テーブルソー」と「ピンルーター」だ。

「テーブルソー」とは、台(テーブル)に円盤状のノコギリの刃が埋め込まれていて、テーブルに据え付けたガイドに沿って木材を押し込めば木材を任意の大きさで真っ直ぐカットできるというものだ。

一方「ピンルーター」とは、ピン状の切断用のパーツがテーブルに装備されていて、そのピンを回転させて木材をカットする、という道具だ。なお「ピンルーター」は、木材を丸くくり抜いたり、さらには同じものを複数作るときに重宝する。同じものを作ろうとする場合にはまずは1つ作りそれを型として使い、「ピンルーター」で複製していく。

ちなみに設備の行き届いた「カーオーディオ・プロショップ」では、「集塵機」も設置している。「集塵機」とは読んで字の如くチリを集める設備だ。これがあれば木材をカットするそばから木くずを吸い込んで集められるので、「木工室」が汚れにくくなる(後からの掃除が楽になる)。このように「カーオーディオ・プロショップ」は、木工作業用の専門設備が充実している場合が多いのだ。

今回は以上だ。次回も「カーオーディオ・プロショップ」に関連した用語の解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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