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車内は音が乱れがち!? それを整えられる機能とは…。 カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 5・コントロール関連編 第6回

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「イコライザー」の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。全 8 枚写真をすべて見る

カーオーディオでは専門用語が使われる頻度が高い。結果、ビギナーに馴染みにくさを感じさせがちだ。当連載では、その解消を目指している。今回は、サウンドチューニング機能のうちの1つである「イコライザー」という用語について多角的に解説していく。

「イコライザー」は、周波数特性のデコボコを均一にする機能!?

さて、「イコライザー」とは「音色に味付けを加える機能」だとイメージしている方も少なくないはずだ。それは間違いではないのだが、実を言うと「イコライザー」はもう1つ重要な役割も果たす。それは、「周波数特性を整える」という役割だ。

なお「イコライズ」という語句はそもそも、そのような意味の動詞だ。「等しくする」とか「平等(均等)にする」という意味を持つ。かくして「イコライザー」は、「もともとの音源と同じ音にする」機能であり、「周波数特性のデコボコを均一にする」機能でもあるのだ。

ちなみに音に味付けを加えようとする場合には、「イコライザー」の各バンドのツマミを上げ下げして特徴を際立てようとする(変化を加えようとする)方向で設定されるが、周波数特性の乱れを整えようとする場合には、その逆のアプローチで各バンドのツマミが操られる。つまり、目立ちすぎているところを抑え、逆に減衰している部分を引き上げる、という操作が行われる。ツマミは上げ下げされるけれど、聴感上では「フラット」な特性になるように設定されるというわけだ。

ところでホームオーディオでは、「イコライザー」はカーオーディオほどは用いられていない。なぜならリスニングルームの空間がある程度広く、かつスピーカーから放たれる直接音を多く聴けるので、部屋の中で起きる周波数特性の乱れをそれほど気にしなくても良いからだ。しかしカーオーディオでは空間が狭く、しかもすべてのスピーカーと正対できていないので、直接音以外の音(部屋の中で反射した音)もたくさん耳に入ってくる。

この反射音が実は、なかなかにやっかいなのだ。反射した音は、特性が乱れがちとなるからだ。反射の仕方により、特定の周波数の音だけが増幅したり減衰したりしてしまうのだ。しかし「イコライザー」を駆使すれば、そういった音的な凹凸を平らにすることができるのだ。

「イコライザー」の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。

「イコライザー」には、タイプ違いが2つある!

ところで「イコライザー」は、2タイプある。1つが「グラフィックイコライザー」で、もう1つが「パラメトリックイコライザー」だ。ちなみに、「メインユニット」に搭載されている「イコライザー」の多くは「グラフィックイコライザー」だ。一方、単体で売られているチューニングユニットの「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)」に搭載されている「イコライザー」は「パラメトリックイコライザー」である場合が多い。

ではそれぞれの特徴を解説していこう。仕組み的にシンプルなのは、「グラフィックイコライザー」の方だ。なお“グラフィック”という名詞には、「写真や絵を用いて視覚に訴えるさま」とか「写真や図版を主体にした印刷物」という意味があるが、「グラフィックイコライザー」の“グラフィック”もまさに、「視覚に訴える」という意味だ。「グラフィックイコライザー」は、どのように設定されているかが一目瞭然だ。視覚的に分かりやすい「イコライザー」、というわけだ。

対して「パラメトリックイコライザー」の“パラメトリック”とは、「媒介変数」とか「限定要素」といった意味の名詞である“パラメーター”の形容詞であり、「パラメトリックイコライザー」とは、設定項目の内容(数値)をある程度変えられるもののことを指す。つまり各バンドにて調整する周波数帯と、影響が及ぶ範囲を都度任意に変更できる。結果、「パラメトリックイコライザー」の方がより詳細なチューニングを行える。

「イコライザー」の設定画面の一例(ロックフォード フォズゲート・DSR1)。

「左右独立」タイプや「ch独立」タイプとは…?

あと「イコライザー」は、ものによって調整できるバンドの数が異なっている。とはいえ、パターンはある程度は限られている。バンド数が少ない場合は多くの機種で「3バンド」もしくは「5バンド」で、さらには一部「7バンド」タイプもある。で、バンド数が多くなると「13バンド」にまで増え、それよりもさらに上級機となると一気に「31バンド」にまで増加する。そしてその場合には、「左右独立31バンド」となることが多い。

なおこの「左右独立」とは、「ステレオ」の「右ch」と「左ch」の音をそれぞれ独立して調整できる、ということを意味している。

「左右独立」になっている理由は以下のとおりだ。車室内は右側と左側とで少々形状が異なっている。運転席側にはステアリングがあったりメーターフードがあったりするのだ。ゆえに音の反射の仕方も左右で変わるので、周波数特性の乱れ方も多少なりとも変化する。なので「左右独立」タイプとして、それらを個別に整えられるようにしてあるのだ。

そして最新の「単体プロセッサー」や「パワーアンプ内蔵DSP」に搭載されている「パラメトリックイコライザーでは、さらに細かく調整できる。「ch独立31バンド」タイプとなっている機種が実に多いのだ。もしもそうであると、フロントスピーカーが「3ウェイ」であった場合には、「ツイーターch」「スコーカーch」「ミッドウーファーch」のぞれぞれで「31バンド」にわたって調整できる。なので「左右独立」というカウントの仕方をすると、「左右独立93バンド」ということになる。

で、「左右独立31バンド」であっても一般のカーオーディオ愛好家には使いこなすのが難しいが、「ch独立93バンド」ともなると相当の強者でないと扱えない。なのでその設定は、プロに任せるべきだろう。プロなら、それを使いこなせる。

今回は以上だ。次回もカーオーディオにおける専門用語の解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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