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「クロスオーバー」機能を活用すれば、詳細な音調整が可能に! カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 5・コントロール関連編 第4回

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「クロスオーバー」機能の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。全 6 枚写真をすべて見る

カーオーディオに関心を持ち調べてみると、難解な専門用語が頻出する。そういった分かりにくい言葉の意味を1つ1つ説明している当連載。現在は、音調整に関係する用語にスポットを当てている。今回は、「クロスオーバー」という機能にまつわるワードを解説していく。

「クロスオーバー」とは、「マルチウェイスピーカー」を鳴らすときの必須機能!

前回は、「プロセッサー」について説明した。カーオーディオにおいての「プロセッサー」とは、サウンドチューニングを行うためのユニットだ。それに引き続いて今回からは、これに搭載されている機能に関した用語を説明していく。まずは、「クロスオーバー」をフィーチャーする。

さて、「クロスオーバー」とは「マルチウェイスピーカー」を使うときに必要となる機能だ。「マルチウェイスピーカー」とは、口径の異なるドライバーユニットを複数用いてそれぞれに得意な帯域の再生を担当させるというスピーカーシステムだ。

で、「マルチウェイスピーカー」を鳴らす際には、音楽信号の帯域分割を行う装置が必要となる。ちなみに市販カースピーカーの多くには、「パッシブクロスオーバーネットワーク」と呼ばれるパーツが付属していてそれにて帯域分割を行えるのだが、より本格的なシステムの構築を目指し「プロセッサー」が導入される場合には、音楽信号の帯域分割は「プロセッサー」にて行われる。その機能が「クロスオーバー」だ。

なお、「プロセッサー」内で帯域分割を行えば、分割し終わったそれぞれの信号に他のサウンドチューニング機能を個別に適応させられる。結果、より詳細なサウンドコントロールを行えるのだ。

また音楽信号の帯域分割を「プロセッサー」内にて行うと、スピーカーの取り付け状況等に応じたより厳密な「クロスオーバー」設定が可能になる。なぜなら「プロセッサー」に搭載されている「クロスオーバー」機能は、おしなべて高性能だからだ。

「クロスオーバー」機能の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。

「クロスオーバー」という言葉には、「重なり合う」とか「交じり合う」という意味がある。カーオーディオの「クロスオーバー」には…。

ところで、「クロスオーバー」という言葉にはそもそも、(立体)交差路とか歩道橋という意味がある。または、ジャズにロックやラテン音楽の要素が加わった音楽ジャンルも「クロスオーバー」と呼ばれている。つまりこれらにはすべて、「重なり合う」とか「交じり合う」というニュアンスが含まれている。

カーオーディオにおいての「クロスオーバー」にも、そのようなニュアンスが多分に含まれている。そうである理由は以下のとおりだ。

まず、「パッシブクロスオーバーネットワーク」も「プロセッサー」に搭載されている「クロスオーバー」機能も基本的には、音楽信号を真っ二つに分割するものではない。帯域分割される境目のことは「クロスポイント」と呼ばれているのだが、例えば「ツイーター」と「ミッドウーファー」間の帯域分割を行うときにもしも「クロスポイント」を5kHzに設定したとしたら、「ツイーター」からは5kHzより下側の音(音程の低い音)も少なからず聴こえてくる。5kHzより下側の音は、音程が下がるにつれて音量が下がっていくという方式でカットされることとなるからだ。

「ミッドウーファー」に対しても、このようなやり方で信号のカットが行われるので、5kHzよりも上の音も音域が高くなるにつれて音量が小さくなってはいくものの、ミッドウーファーからも聴こえてくる。

このように「クロスポイント」付近の音は、「ツイーター」と「ミッドウーファー」の両方から聴こえてくる。つまり「クロスポイント」付近の音は、重なり合うこととなる。なので「クロスオーバー」と呼ばれている、というわけなのだ。

「クロスオーバー」機能の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。

減衰率のことは「スロープ」と呼ばれ、単位は「dB/oct」!

なお、「クロスポイント」から下の音(または上の音)が減衰していくその割合(減衰率)のことは、「スロープ」と呼ばれている。単位は「dB/oct(ディービーオクト)」だ。例えば「マイナス12dB/oct」であれば、音程が1オクターブ下がる(または上がる)ごとに音量が12dBずつ下がっていく、という減衰率であることを表す。なお、数字の部分は必ず6の倍数となる。このことについては、そういう決まりだと思ってほしい。

ところで「クロスポイント」は、「カットオフ周波数」と呼ばれることもある。ただしニュアンスは異なる。「クロスポイント」はその名のとおり、「ツイーター」と「ミッドウーファー」の音が重なるポイントという意味を持つ。対して「カットオフ周波数」の方は、例えば「ツイーターの担当帯域はどこまでか」を言い表すための言葉だ。つまり「カットオフ周波数」という言葉には、「重なり合うポイント」というニュアンスはなく、単に「カットライン」という意味で使われる。

ちなみに「プロセッサー」に搭載されている「クロスオーバー」機能にて信号の帯域分割が行われる場合には、「ツイーター」の「カットオフ周波数」と「ミッドウーファー」の「カットオフ周波数」は、それぞれ別の値になることも少なくない。そうであると「クロスポイント」という言葉は適さなくなる。

また、「カットオフ周波数」よりも下側の帯域の音を減衰させる機能に対する個別の呼び方もある。それは「ハイパスフィルター」だ。当用語は、「高音だけを通す“ろ過装置”」という意味を持つ。逆に「低音だけを通す“ろ過装置”」のことは「ローパスフィルター」と呼ばれている。つまり「クロスオーバー」機能は、「ハイパスフィルター」と「ローパスフィルター」の2つで構成されるている。そしてさらに、高域側の信号に「ローパスフィルター」がかけられ低域側の信号に「ハイパスフィルター」がかけられた状態のことは、「バンドパス」と呼ばれている。

今回は以上だ。次回もサウンドチューニング機能に関連した用語について解説していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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