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音の成り立ちを知るとチューニングが上手くなる!? カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 5・コントロール関連編 第2回

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カー用市販スピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・テンポシリーズ)。全 9 枚写真をすべて見る

カーオーディオで使われる専門用語の意味を1つ1つ説明し、初心者が感じがちな“分かりづらさ”を払拭しようと試みている当連載。前回からはサウンドコントロールにまつわる用語の解説を開始した。今回は、音の成り立ちに関するワードにフォーカスする。

可聴帯域の下限の音は1秒間に20回、上限の音は1秒間に2万回、上下動を繰り返す!

今回はまず、「周波数」について説明していく。サウンドチューニングに関する話になると、「周波数」という言葉も頻出する。

さてこの「周波数」という言葉の意味は次のとおりだ。電気や電波や音響の分野において波動や振動が単位時間あたりに繰り返される回数のことを指している。単位は「Hz(ヘルツ)」だ。

で、カーオーディオで使われるときには、音の波動の繰り返しの回数を表す。というのも音は、空気中を上下動を繰り返しながら進んでいく。例えば、波が立っていないプールの水面に石を投げ入れると波紋が広がるが、音もその波紋のような動きを空気中で繰り返す。そしてこの動き方は、音程によって変化する。音程が高い音ほど動きが細かくなり、音程が低い音ほど動きが大きくなる。とは言っても、空気中を進む速度は音程が異なっても同一だ。しかし上下動するひと波の大きさが音程によって異なり、結果、1秒間に上下動する回数が変化する。その1秒間に上下動する回数が「周波数」として表される、というわけだ。

ちなみに音速は概ね毎秒340メートルだ。なおなぜに“概ね”を付けたのかというと、音速は気圧と温度によって変わるからだ。温度が高くなるほど微妙に音速は上がっていく。

では、1波長がどのくらいの長さなのかを例を挙げて説明していこう。人間の可聴帯域の下限である「20Hz」の音は、1秒間に20回の上下動を繰り返す。0度のところから盛り上がり一旦下がって今度は沈み込み、そうして0度のところに帰ってくるその動きを、1秒間に20回繰り返しながら340メートル前進する。なので340➗️20で、1波長は約17メートルもあるという計算になる。

対して人間の可聴帯域の上限である20kHz(kは「キロ」のことなので、20kHzはすなわち20000Hz)の音は、1秒間に2万回も上下動を繰り返しながら空気中を進んで行く。なので1波長がどのくらいなのかを計算すると、こちらは約1.7センチという短さとなっている。

カー用市販スピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・テンポシリーズ)。

音は、「基音」と「倍音」によって成り立っている!?

ところで音は、「基音」と「倍音」とで成り立っている。この2つの言葉も、サウンドチューニングについて語られるときに頻出する重要ワードだ。

さて、それぞれはどのような意味なのかと言うと、「基音」とは音程を決める成分であり、「倍音」とは音色を決める成分だ。例えばギターのチューニングで使われる「A(ラ)」の音は周波数で言うと「440Hz」なのだが、この「A」の音をギターでつま弾くと、「440Hz」の「基音」が鳴りその音に「倍音」がまとわりつくことで音色が決定される。

なお「倍音」は、「基音」に対して整数倍の「周波数」となっている。つまり「440Hz」の2倍の「880Hz」の音や3倍の「1.32kHz」の音、そして4倍、5倍、6倍…という幾重もの「倍音」が「基音」とともに鳴り響き、その楽器ならではの、そしてその演奏者ならではの音色となってリスナーの耳に届くこととなる。

ちなみに音は、音程が1オクターブ上がると「周波数」は倍になる。というわけで1つ目の「倍音」は、「基音」に対して1オクターブ上の音程となっている。

さらに参考として説明すると、人間の可聴範囲は20Hzから20kHzまでの範囲なのだが、この範囲は音程で言うと概ね10オクターブ分に相当している。というわけで1オクターブごとの「周波数」を書き出してみると…。20Hz、40Hz、80Hz、160Hz、320Hz、640Hz、1.28kHz、2.56kHz、5.12kHz、10.24kHz、20.48kHz。このように「周波数」は、音程が上がるに従って数字がかけ算で大きくなっていく。

カー用市販スピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・テンポシリーズ)。

「サブウーファー」が奏でる音には「倍音」成分はほとんど含まれていない…。

この際なので、主な楽器と人間の声の「基音」がどのくらいの「周波数」なのかも紹介しておこう。まず4弦エレキベースが「41.2Hzくらいから400Hzくらい」で、エレキギターが「82.4Hzくらいから1.3kHzくらい」だ。打楽器では、ドラムスのバスドラムが「60Hzくらいから100Hzくらい」、シンバルが「4kHzくらいから12kHzくらい」だ。そして男性ボーカルが「100Hzくらいから800Hzくらい」、女性ボーカルが「200Hzくらいから1kHzくらい」と言われている(ボーカルは個人差も大きいのであくまでも目安)。

で、カーオーディオでは超低音の再生を「サブウーファー」に担当させることが多いのだが、「サブウーファー」の担当帯域は大体60Hzくらいまでとされることが多く、範囲を広めに取る場合でも80Hzあたりくらいまでだ。ということは、「サブウーファー」の担当帯域にはエレキギターの音はほとんど含まれておらず、エレキベースの音もせいぜい1オクターブ分くらいにとどまる。つまり、サブウーファーが奏でる音の中には、音階を伴う楽器の「倍音」成分はほとんど含まれていないのだ。なので、「サブウーファー」を選定する際には音色が取り沙汰されることは少なく、それよりも量感とか切れ味とかがチェックされることが多くなる。

逆に、高音を担当する「ツイーター」の再生範囲は「5kHz」以上である場合が多く、担当範囲が広い機種でも「2kHz」くらいが下限となる。つまり「ツイーター」が担当する帯域の中には、メロディや和音を表現する楽器の「基音」はほとんど含まれておらず、高音を発する打楽器の音の他にはギターの弦の上を滑る指の音といった付随する高音や、そして後は「倍音」成分ばかり、ということになる。つまり「ツイーター」は、音色の再現性に与える影響の大きいスピーカー、なのである。

今回は以上だ。次回もサウンドコントロールに関連した専門用語を解説していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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