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「パワーアンプ」の特徴を推し量れるカタログスペックとは? カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 7・外部パワーアンプ編 第2回

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「外部パワーアンプ」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ・AVカンサイ<大阪府>)。全 10 枚写真をすべて見る

カーオーディオの専門用語の意味を1つ1つ解説している当連載。前回からは、「外部パワーアンプ」に関連したワードの説明を開始した。今回はカタログに載っている語彙の中から「級(クラス)」を取り上げ、その意味を読み解いていく。

「外部パワーアンプ」には、「動かせ方」のタイプ違いがある?

「外部パワーアンプ」のカタログを見るとさまざまスペックが載っている。で、その中には特徴を推し量るのに参考になるものがいくつかある。その1つが「級(クラス)」だ。なおカーオーディオ用の「パワーアンプ」では、以下の3つが存在している。「A級」、「AB級」、「D級」、このいずれかだ。

ところで「級」と聞くと、「グレード」を表していると思いがちだが、「外部パワーアンプ」においての「級」は、製品の優劣を表すものではない。これは「動作方式」を表すものだ。

「パワーアンプ」は、基本的な仕組みは案外シンプルだ。各社ならではのハイテク技術が多々注入されてはいるものの、音楽信号を増幅するという根本的な働きを行う部分は、どの製品も仕組みが大きく違わない。

とは言いつつも、細かくはタイプ違いがいくつかある。信号を増幅する回路の「動かせ方」が少々異なっている。なお、「D級」は他との違いが少々大きい。なのでこれについては後ほど詳しく説明する。

ちなみにカーオーディオ用として開発された「外部パワーアンプ」の「動作方式」は、先述したとおりの3タイプのうちのいずれかだが、実を言うと「パワーアンプ」の「動作方式」にはもう1タイプある。それは「B級」だ。

で、「A級」と「B級」は対極的な関係にある。技術的な仕組みを細かく説明するとますます分かりにくくなるので、特徴だけを紹介していこう。まず「A級」は、動作効率が良くない。つまり、信号の増幅を行う際に使う電力が熱へと変わってしまう比率が高いのだ。ゆえに大きな出力を取り出しにくい。

その反面、音色は良好だ。一般的にはより純粋で温かみのある音だと評されることが多い。

「外部パワーアンプ」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ・サウンドワークス<千葉県>)。

より製品数が多いのは「AB級」。「A級」は高級機に多い。

対して「B級」は、効率が良いことが特長だ。より少ない電力でより大きな出力を取り出せる。しかし、音色的には不利だ。歪みが出やすい。なので実用性が低く、カーオーディオ用の「外部パワーアンプ」では「B級」の「動作方式」が採用されているモデルは見ない。

で、「AB級」はこれらの良いとこ取りがされている。結果、ある程度効率が良く、大きな出力も取り出せる。そして音質的にもなかなかに優秀だ。歪みの少ない良好なサウンドを奏でられる。

ちなみに、「AB級」のモデルの方が「A級」のモデルよりも製品数が多い。扱いやすいという特長があるからだろう。対して「A級」のモデルは消費電力が大きくなる傾向が強く、なので複数台用いるときには特に車両のバッテリーが使用に対応できるか否か等を見極める必要も出てくる。また本体が熱を持ちやすいので、熱へのケアの必要性も高まる。このように「A級」の「外部パワーアンプ」は、より上級者向けという色彩が濃いめだ。

というわけで「A級」の「動作方式」は、リーズナブルなモデルでは採用されることが少なく、結果、高級機が多くなっている。

ところで、「A級」は音的にメリットがあるのだが、「AB級」と比べて絶対的に高音質というわけではない。「AB級」の超高級機も多々ある。なので、「級」で性能の良し悪しを決めつけるべきではない。参考程度に見るにとどめ、最終的にはカーオーディオ・プロショップの店頭の試聴機の音を聴いたり搭載されているオーディオカーのサウンドを聴いたりして、自分の好みのモデルを探し出そう。

外部パワーアンプの一例(モレル・MPS 1.550)。

「D級パワーアンプ」には、コスパの高いモデルが多い!

続いては、もう1つの動作方式である「D級」について説明していく。なお先に記したとおり、「D級」のみ基本的な仕組みが少々異なる。こちらでは、通常のアナログの信号を一旦パルス信号に置き換えてから増幅し、そして増幅が終わった後に再び通常のアナログ信号に戻される。この点が他の「駆動方式」との違いだ。

で、このような仕組みだからこそ以下のような利点が得られる。利点は主に2点ある。まず1点目は、「効率が良いこと」だ。つまり、信号の増幅の過程で電力が熱に変わってしまう割合が低いのだ。結果、大出力を取り出しやすい。

2つ目の利点は、「超小型化が効くこと」だ。なお熱が出にくいことも小型化を可能とする要因の1つとなっている。放熱のためのパーツである「ヒートシンク」を備えなくても良い場合が多くなるからだ。

ちなみにかつて「D級」アンプは、効率が良いかわりに音質性能的には不利だとされていた。しかし現在はそのようなイメージは払拭されている。もう10年以上も前から音質性能的にも優れたモデルがいろいろと登場している。

その一方で、超高級モデルは案外少ない。というのも、その他の「動作方式」が採用された「外部パワーアンプ」は、用いるパーツに贅を尽くせば尽くすほど性能をどんどん上げていける。結果、100万円を超えるような超高級機も作られる。

対して「D級」アンプは、コストと性能が比例しにくい。物量を投じても性能が上がる度合いに限りがあるのだ。なので超高級品が少なく、逆に低価格のモデルでもなかなかに音が良いモデルも多い。つまりコスパが高い傾向が強いのだ。

また「D級」アンプは、制動力が高い傾向も強い。そうであるとスピーカーの振動板をしっかりと止められる。従って「サブウーファー」を鳴らすアンプとして都合が良い。締まった低音を出しやすいのだ。なので「サブウーファー」用ではない「フルレンジ」の「D級パワーアンプ」も、「サブウーファー」を鳴らすのにも向いている場合が多い。フロントスピーカーもサブウーファーも鳴らせる使い勝手の高い「パワーアンプ」を探す際には、「D級」アンプに目を向けると候補が発見しやすくなる。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回も「外部パワーアンプ」に関連した用語の解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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