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【プジョー リフター 新型試乗】一風変わった「骨太MPV」が欲しいなら…吉川賢一

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プジョー リフター GT全 24 枚写真をすべて見る

2021年3月1日、Groupe PSA Japanは、プジョーブランドで展開している『リフター(RIFTER)』に、上級グレードのGTを追加すると発表した。リフターは、本国フランスで商用車としても使われている骨太なMPVだ。GTグレードの追加によって、リフターは、ベースグレードの「ALLURE(アリュール)」との2グレード構成となった。

リフターは、スタイリングはMPVやミニバンとよばれるジャンルに入るが、高い地上高やグリップコントロールといった走破性を高める装備を備えているモデルだ。そのリフターに今回、幸運にも試乗させていただくことができた。その様子をお伝えしていこう。

リフターの魅力をより引き立てる無骨なエクステリア


リフターGTは、2列シート5人乗りの5ドアMPVだ。欧州市場向けには3列シート7人乗りのモデルもあるが、日本仕向けのリフターはファミリーユースに特化し、2列シート5人乗りのみとなっている。ちなみに、シトロエンの『ベルランゴ』と兄弟車だ。

パワートレインは、最大出力130ps/最大トルク300Nmを発生する1.5リットル直4ディーゼルターボエンジンを搭載。8速オートマチック(EAT8と呼ぶ)を組み合わせ、WLTCモード燃費は18.2km/リットル(市街地15.7、郊外17.8、高速19.8)を達成する。発進時のエンジントルクが太く、速度が上がるほどに燃費が良くなるディーゼルエンジンは、この手の長距離移動向けのMPVにはベストマッチだ。

ボディサイズは、4405×1850×1880(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2785mmと、欧州Cセグメントのカテゴリにギリギリ収まるサイズ感。見た目や用途が似ている、三菱の『デリカD:5』(4800×1795×1875)よりもずっと小さいのだが、目の前にしてみても、デリカD:5と変わらない大きさに見える。これは、リフターの背の高さと、オーバースペックにも思える大径タイヤからきているようだ。


エクステリアは、カジュアル寄りなベルランゴに比べて、リフターは武骨さを前面に押し出した印象だ。60扁平の17インチタイヤやルーフレール、ボディの下部やフェンダーを覆うハードプラスチックなどによって、全体的にリフトアップしたクロカンにも似て、なかなかカッコ良い。休日に、ロードバイクを積み込んで、出先で自転車ツーリング、という使い方がよく似合いそうだ。

インテリアも、日本車のそれとは一風変わった雰囲気だ。プジョーが「i-Cockpit」と呼ぶ小径ステアリングホイールとメーターディスプレイのレイアウトは、想像よりも見やすくてよい。また運転席からの高い視界は、いかにも商用車ベースだなあと感じられるが、その分、前方左右の視認性はバツグンだ。

ただし、楕円の超小径ステアリングホイールは、ハンドルを回していった際どこを次に握って良いのかやや迷う。これも慣れ次第だが、ハンドルの操作量が少なくて済むのは、市街地走行では結構役立った。

荷室勝負でリフターに敵うMPVは皆無


まず何よりすごいと思ったのが、電動シェード付の巨大なガラスルーフだ。ここから注ぐ明かりは眩しいほどに車内に入ってくる。センター部は白の半透明タイプで、軽めの荷物を乗せることはできそうだ。もっとも、それ以外にも様々なところに収納ボックスがあるので、わざわざここに収納する必要もなさそうだが。

横方向にサイズの広い前列シートは、上から見下ろすようなドライビングポジションとなる。座り心地はちょっと硬めの印象で、背中にフィットする印象は少ないが、締め付けられるような苦しさは感じない。また、後列シートは3人座りのセパレート式となっており、ばらばらに折りたたむことができる。3脚とも座面が足元へ沈み込むダイブダウン方式なので、例えば中央席のみを倒して使うこともできる。

1850mmの車幅を有効活用した荷室はとにかく広大で、使い勝手がよい。リフターを購入されたお客様の中には、荷室にバイクをズドンと乗せて、トランスポーターとして使う方も多いという。旅行の荷物や遊び道具を満載し、アウトドアやキャンプへと出かける、そうした使い方こそが、リフターが本領発揮するシーンに間違いなく、荷室勝負でリフターに敵うMPVは皆無だろう。

1.5リッターの走りはお見事の一言


欧州車系のディーゼルターボエンジンは、排気量2.0リットルクラスが王道だが、リフターに搭載されているのは、たったの1.5リットルのディーゼルエンジン。このエンジンに、どれほどの実力があるのかは、よく見ておきたいポイントだ。

まず、アイドル時のエンジンノイズは、聞こえはするが気にならい音量だ。ゆっくりと走り出しても、コロコロとした音質で嫌な感じはない。また、最大トルク300Nmによって、車重1650kgもあるリフターを軽々と発進させてくれる。一旦走り出してしまえば、定常走行や加速騒音、そしてロードノイズも小さい。アクセルペダルを思いっきり踏み込んでも、やや太めのサウンドが響く程度で、8速ATがポンポンとシフトアップする。全体的に質感の高いエンジンだ。


MPVにハンドリング性能を求めるのはナンセンスではあるが、高い高速直進性だけは備えていてほしいもの。その点リフターは、期待を上回る高速直進性を持っていた。市街地などの通常走行時にはやや重めに感じたハンドル操舵力は(小径ステアリングホイールが影響していると思われる)、高速走行中にはむしろ直進性を高めてくれる。17インチタイヤもグリップ力が高く、まっすぐ走ることにそれほど気を遣わずに済む。60扁平のタイヤのおかげもあり、突起や段差の衝撃をいなしてくれる乗り心地の良さも好印象だ。

ワインディングも走ってみたが、「キビキビした動き」はなく、「安心感のある動き」に抑えられている。ときたま小雨が降るシーンもあったが、制限速度程度であれば、地面に張り付くような安定感があり、怖さは感じなかった。

骨太MPVに乗って、今すぐアウトドアへ出かけよう


と、ここまで絶賛してきたリフターGTだが、細かい点をみていけば、気になる点がないわけではない。日本車だと当たり前の電動スライドドアがなかったり、前席のドリンクホルダーに四角い500mlペットボトルが入らなかったりと、惜しいポイントは所々ある。だが、この無骨なデザインと、欧州快速MPVとしての実力は間違いなく、日本でも大いにその魅力を享受できる。

リフターGTの車両本体価格は税込361万円。試乗車にはメタリックペイント(6万500円)、専用ナビゲーション(25万4100円)、フロアマット(1万2760円)、ビーウィズスピーカー(前後用足すと22万円)などが装備されており、総額416万円、というモデルとなっていた。

トランスポーターとして、日本車でライバルとなりうるのは、近しいサイズの日産『NV200』(税込223万円~)、低床のホンダ『ステップワゴン』(271万円~)、クロカンの三菱デリカD:5(391万円~)、商用車ベースのトヨタ『ハイエース』(254万円~)あたりだろうか。リフターGTはやや割高ではあるが、欧州の骨太MPVに憧れている方や、一風変わったMPVが欲しい方には、おススメの一台だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

吉川賢一|自動車ジャーナリスト
元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けています。

《text:吉川賢一》

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