ル・マンVの「SHINOBI」テクノロジーを支える、ダンロップテクニカルセンター | Push on! Mycar-life

ル・マンVの「SHINOBI」テクノロジーを支える、ダンロップテクニカルセンター

自動車ニュース
無響室(ダンロップ タイヤテクニカルセンター)
無響室(ダンロップ タイヤテクニカルセンター)全 15 枚拡大写真

2月より正式に発売が開始されたダンロップ『ル・マンV(ファイブ)』にはサイレントコア(吸音スポンジ)と、特殊なサイドウォール構造による「SHINOBIテクノロジー」が投入されている。これにより、先代モデルのル・マン4と比較して乗り心地と静粛性がさらに向上したという。

たとえば、乗り心地をよくするため、段差や継ぎ目を越えるときの入力は10%低減されている。これは、タイヤのサイドウォールの柔軟性を上げつつ、荷重や接地でたわむ形状を最適化することでショックを効率よく吸収するためだ。トレッドパターンの横溝を平行にそろえず斜めのラインで弧を描くようにして、路面の凹凸を角度をつけて拾うようにもした。

静粛性について、ロードノイズは36.9%(2.0dBA)減少し、パターンノイズは32.4%(1.7dBA)低減されている。乗り心地のためのサイドウォールやトレッドパターンは、衝撃吸収やあたりを柔らかくするが、同時にノイズの発生も抑えてくれる。また、立て溝のエッジをよくみると、細かい凹凸があるのだが、これはトレッド面から発生する音を小さくする効果がある。

これに加えて静粛性に最も貢献しているのは、タイヤ内側の特殊吸音スポンジ(サイレントコア)だ。サイレントコアは2006年からル・マンに採用されている特許技術だが、その効果は折り紙付き。とくに高速で継ぎ目や段差を拾ったときの「コーン」という甲高い音(空洞共鳴音)はほとんどなくなる。

ル・マンVでは、路面の凹凸、継ぎ目や段差などの「あたり」を柔らかくするため、独自のサイドウォール形状、ブロックパターンを採用している。また、タイヤが回転しながら接地するときにつぶれると、「ゴー」というようなこもった低音ノイズとなる。これらの特性を調べるために様々な試験機を利用している。

ダンロップでは、これらル・マンVに投入された技術について、どのような開発やテストを行っているのか。その一翼を担うのが兵庫県にある住友ゴムのタイヤテクニカルセンター(TTC)だ。タイヤの素材研究、パターン、構造などを設計し、運動性能、環境性能、静粛性、快適性などをデータで裏付けるための計測、評価などを行っている。

今回は、そのTTCを見学する機会を得た。タイヤ開発に直接関わる施設のため、普段はあまり公開することはないというが、ル・マンVで追求したという乗り心地や静粛性をどのように評価しているのかをユーザーにも知ってもらおうと、その一部を特別に公開した。

最初に説明されたのは「6分力試験機」。路面に見立てた大きなドラムにタイヤを接地させ、車軸にかかる力を3次元的に計測する。ドラムには砂利道や舗装を模した湾曲した板が固定できるようになっている。この機械により、路面の凹凸の振動や衝撃をタイヤがどのように吸収できるかを調べることができる。

実際の開発では、幅20ミリ、厚さ10ミリの金属の棒をドラムに貼り付け、タイヤの反力を測定したそうだ。反力が小さいほど路面からの衝撃を吸収していることになり、ギャップや突起を乗り越えるときの「あたり」がやわらかくなり、乗り心地が向上する。

次に見学したのは無響室。といってもオーディオメーカーなどが持っているものとは大きさが違う。幅12m×長さ16mに高さが4.8mもあるという。乗用車なら楽に入るスペースだ。ここにも6分力試験機で使われてたような機械が設置してあり、タイヤを疑似路面のドラムに押し付けながら回転させる。このとき発生する音を測定する。

開発中のタイヤの場合、まだ型ができていないのでスリックタイヤのような丸坊主のタイヤをハンドグルービングして設計どおりの溝を作るそうだ。また、ドラムを回転させるモーターは無響室の外にあり、中では純粋にタイヤと路面から発する音だけとなる。

転がり抵抗を測定する部屋は、タイヤラベリングの基準となるデータを測定するため、室温や測定条件が厳重に管理されていた。空調は4基あり、常に25度に保たれている。また、タイヤ表面の温度も常に測定しながら計測する。転がり抵抗は、表面温度やゴムの状態によっても変わるため、測定は正転30分、逆転30分の慣らし運転を行ったあとに行われる。測定そのものは、回転するタイヤの軸にかかる反力を測定する。

最後は、三軸加振機と呼ばれるもの。実車の両輪の接地面に対して、XYZ方向の任意の振動を加えることができる機械だ。これにより路面の細かい凹凸やうねりによる振動を再現し、車内での振動の感じ方やセンサーによる測定を行う

振動は、2Hz(1秒間に2回の振動)から350Hzまでかけることができる。振動の幅としては2Hzでは7mほど接地面の振動板が動く。350Hzでは0.02mというごく小さい動きとなる。デモでは、三軸加振機にのせられた『プリウス』に乗車し、上下の振動のみでの動きを体験した。最初の振動は停止した車で感じる地震のような感覚だが、だんだんと空気圧やホイールバランスが取れていない車を高速走行しているシミー現象のような感覚となり、最後は「音」はするが振動はほとんど感じられない状態となる。

今回公開された設備は、TTCのごく一部だ。TTC全体としては、他にもゴムの素材やコンパウンド、添加剤などを研究開発する部署や設計部署、関連するさまざまな測定器、コンピュータ、設備があるという。

(協力:住友ゴム工業)

《中尾真二》

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