カーオーディオシステムを進化させていこうとする趣味の世界の扉を叩いても、“分かりづらさ”が壁となりがちだ。当連載はその払拭を目指して展開している。現在は「DSP」に関連した難解な事項の意味や成り立ちを1つ1つ説明している。
◆「イコライザー」は「サウンドの味付けを変える機能」、ではない!?
ここまで説明してきたとおり、DSPとはサウンドチューニングを行うためのメカだ。なおこれには「クロスオーバー」「イコライザー」「タイムアライメント」、以上の3つの機能が搭載されている。で、前々回の記事より、各機能の役割や成り立ちの説明を開始した。今回は、イコライザーについて解説する。
ところでイコライザーとはサウンドの味付けを変える機能だと思われがちだが、その理解は間違いではないものの実は、高機能なDSPに搭載されているイコライザーはむしろ、別の用途で使われることの方が多い。別の用途とは、「サウンドを元どおりに戻すこと」だ。
ちなみに「イコライズ」という言葉には、「等しくする」とか「同じにする」という意味がある。なのでDSPに搭載されているイコライザーはまさしく、「音を等しくする」とか「音を同じにする」機能だ。さて、これはどういうことなのかというと……。
◆車室内では音色が変わってしまいがち…。しかしイコライザーを使えば修正可能!
実は車室内では、ソースに収められている本来の音と聴こえてくる音色とが変わってしまいがちだ。なぜなら、車室内は狭いがゆえに音が幾重にも反射する。そして平行面の間で行ったり来たりすることがあり、その平行面の間の距離と1波長の長さとが倍数の関係となる音は、増幅したり減衰したりする。また、反射する音にはぶつかった物の素材特有の響きが乗る。こうして、音色が本来の音から変化する。
しかしイコライザーを駆使すると、その変わってしまった音を元どおりの音色に戻せる。そして凸凹になってしまった周波数特性を等しくできる(フラットにできる)というわけだ。
ただし、スタンダードなメインユニットに搭載されているイコライザーは3バンドとか5バンドという簡易的な仕様となっていて、そうであると「音色を元に戻す」という使い方はし難い。
◆高度なDSPのイコライザーは、「ch独立31バンドパラメトリック」タイプ!
なので簡易的なイコライザーでは、「音色の味付けを変える」という使われ方がされることが多くなる。しかし高度なDSPに搭載されているイコライザーはきめ細やかな設定を行えるので、「音源どおりの音に戻す」という使い方も行える。
ちなみに高度なDSPに搭載されているイコライザーは、「ch独立31バンド」という仕様となっている場合がほとんどだ。「ch独立」というのは、例えばフロントスピーカーがセパレート2ウェイの場合、各スピーカーユニットに送られる信号をそれぞれ「31バンド」という細かさで扱える。つまりこの場合スピーカーユニットは計4つあるわけなので、実質「124バンド」ということになる。
しかも「グラフィックイコライザー」ではなく「パラメトリックイコライザー」である場合が多く、そうであると各バンドごとで調整する周波数と操作して影響が及ぶ範囲をも設定できる。
今回は以上だ。次回はタイムアライメントについて説明していく。お楽しみに。
《text:太田祥三》