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“スペック”からは音の良し悪しは推し量れない!?「外部パワーアンプ」、貴方ならどう使う? Part7

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市販「外部パワーアンプ」の一例(アークオーディオ・ARC1000.6)。全 3 枚写真をすべて見る

愛車のサウンドシステムを本格化させたいと思ったとき、「外部パワーアンプ」が頼りになる。当特集では、その理由から活用術までを説明してきた。今回から数回にわたっては、「外部パワーアンプ」の選び方を解説していく。

スペックには、確認すべきことと参考程度に見るべきことの両方がある!?

今回は、スペックの読み解き方を紹介していく。カタログを見ると各機の仕様が掲載されている。これにて何が分かるのかを、1つ1つ説明していく。

なお、スペックを見ても各機の音色傾向や性能をすべて推し量ることは不可能だ。好みのモデルを見つけるためには、実際に音を鳴らして聴いてみないと分からない。スペックにて確認しておくべきことがある一方で、参考程度に見るにとどめるべきものも多いということを、まずは頭に入れておいてほしい。

では、特に重要なスペックについてそれらの意味を説明していく。まずは「定格出力」と「最大出力」から。これらは、その「外部パワーアンプ」から取り出せるパワーがどれくらいなのかを表すものだ。ただし、“定格”と“最大”では定義が異なっている。前者は、設定された歪み率の中で連続的に取り出せるパワーを表し、後者は瞬間的に供給できる最大パワーを表している。なのでこの2つを混同しないことが重要だ。もしもパワーの大きさを比べようとするのなら、このどちらか1つに絞って比較しよう。

ちなみに「定格出力」しか掲載されていないモデルもあるので、こちらを見比べた方が良いだろう。実際「定格出力」とはつまりは実用上のパワーなので、こちらが注目されることの方が多い。

ところで「定格出力」を見ると、数字が何パターンか掲載さていることがある。その数字の羅列の意味は、理解しておきたい。

例えば、「50W×4(4Ω)/75W×4(2Ω)/150W×2(4Ω)」と表示されていたとしよう。なおここで表記されている「Ω(オーム)」は、スピーカーの「インピーダンス(抵抗値)」を指している。「外部パワーアンプ」の出力は、スピーカーの抵抗値によって変化する場合が多く、このモデルの場合、「4Ω」のスピーカーを鳴らす場合と「2Ω」のスピーカーを鳴らす場合のそれぞれの「定格出力」が個別に示されている、というわけだ。

市販「外部パワーアンプ」の一例(ビーウィズ・P-100)

「定格出力」からは、そのモデルの使い勝手が分かる!?

で、ここで重要なのは、このモデルが「4Ω」のスピーカーも「2Ω」のスピーカーも鳴らせるモデルであるということだ。逆に「4Ω」の数値しか記載されていない場合には、そのモデルは「4Ω」のスピーカーしか鳴らせないモデルだということが分かる。

ちなみに言うと、カー用のスピーカーは多くが「4Ω」タイプだ。なので「4Ω」のスピーカーしか鳴らせないモデルであっても困ることはほとんどない。しかし少数派ながら「2Ω」のモデルもある。サブウーファーの中には「1Ω」タイプもある。というわけなので、もしも愛用のスピーカーの「インピーダンス」が「4Ω」ではなかったら、それを鳴らせるモデルを選ぶ必要がある。「4Ω」の数値しか載っていなかったら、そのモデルは候補になり得ない。

またこの例では、「150W×2(4Ω)」という部分も重要だ。ここからは、このモデルが「ブリッジ接続」にも対応していることを読み取れる。「50W×4(4Ω)」という表記の「×4」という部分からこのモデルが「4chタイプ」であることが分かるのだが、「×2」というように「ch数」が半分の「定格出力」も記載されていたらそれは、「ブリッジ接続」時の数値だ。

これまで何度か説明したとおり、「ブリッジ接続」が可能だとサブウーファーを鳴らしやすくなる。また、例えばフロントスピーカーを「マルチアンプ接続」する際にミッドウーファーを「プリッジ接続」してハイパワーをかけるというような使い方もできる。使い勝手の良い「外部パワーアンプ」が欲しいと思う場合には、「定格出力」のところをチェックして「ブリッジ接続」の可否を確認しよう。

なお「定格出力」の数字自体はそれほど気にする必要はない。数値が大きいほど余裕を持って音楽を再生できるモデルであると推察できるが、しかしこの数値の大きさは音質性能の良し悪しと正比例するものではない。この数値が小さくても、高音質なモデルは多々ある。

市販「外部パワーアンプ」の一例(カロッツェリア・GM-D8400)。

「S/N比」「周波数特性」「ダンピングファクター」とは?

続いては、「S/N比」について説明していく。まずこのスペックは、「外部パワーアンプ」で増幅される信号(S=シグナル)と雑音(N=ノイズ)の割合を示すものだ。ノイズの方が分母にくるので、数値が大きいほど価値がある。

とはいえ、この数値の単純比較で性能の良し悪しを判断するのは早計だ。なぜなら、メーカーごとで測定の仕方に微妙な違いもあり、そしてこの数値がすべてでもないからだ。なので、「S/N比」は参考程度に見るにとどめよう。

次いでは、「周波数特性」について説明しよう。これはその「外部パワーアンプ」の再生可能な周波数のレンジを示す数値だ。どれだけ広い帯域にわたりフラットな特性をキープできるかが示されている。

なので、これにて示される範囲が広ければ広いほどその「外部パワーアンプ」がワイドレンジあると推測できるが、やはりこの数値に関しても、これだけで各機の優劣を判断するのは禁物だ。ちなみにいうと、人間の可聴帯域は20Hzから20kHzなのだが、「外部パワーアンプ」の「周波数特性」はその範囲を軽々超えている場合が多い。つまり、ほとんどのモデルが問題ないスペックを確保しているということになる。

次には「ダンピングファクター」について説明していく。これは、スピーカーを制動する(止める)能力を示すスペックだ。

ちなみに、サブウーファーを鳴らすための「外部パワーアンプ」を選ぶ際には、この数値が高いモデルの方が有利だ。そうであると振動板の動きをしっかりと止められるので、ハギレの良い低音を奏でやすくなる。

とはいえゆったりとした低音が好みなら、「ダンピングファクター」にはそれほどこだわる必要はないだろう。この数値が高すぎない場合それは、柔らかなサウンドを鳴らしやすいモデルであることが多い。というわけなので、「ダンピングファクター」についても、参考程度に見るにとどめたい。

今回は以上だ。次回も、「外部パワーアンプ」の選び方についての解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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