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高性能なメインユニットだからこそ可能となる“高音質システム”とは? 「外部パワーアンプ」、貴方ならどう使う? Part4 マルチアンプシステム

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市販「4chパワーアンプ」の一例(DLS・CCi44)。全 5 枚写真をすべて見る

「外部パワーアンプ」を用いると、愛車のカーオーディオシステムの実力を一層高められる。当特集では、その理由から具体的な活用術までを解説している。今回は、高性能な「メインユニット」を核として構成する「マルチアンプシステム」について説明する。

「マルチアンプシステム」と「バイアンプ接続」の同一点と相違点とは?

最初に、「マルチアンプシステム」とは何なのかを説明しておきたい。前回の記事の中で「バイアンプ接続」について解説したが、「マルチアンプシステム」はある意味それと同様なシステムスタイルだ。大きな違いは1点。「マルチアンプシステム」は「プロセッサー」を用いてシステムを構築するが、「バイアンプ接続」は「プロセッサー」は用いず「パッシブクロスオーバーネットワーク(以下、パッシブ)」を使ってシステムを構築する。

というわけなので、まずは簡単に「バイアンプ接続」についておさらいしておきたい。これは例えば使用しているスピーカーがセパレート2ウェイであったとき、それを「4chパワーアンプ」1台または「2chパワーアンプ」を2台用いて、それら「パワーアンプ」の1chずつで各スピーカーユニットの1つ1つを鳴らすというシステムだ。

音楽信号の流れは以下のようになる。「メインユニット」→「外部パワーアンプ」→「パッシブ」→「スピーカー」、以上だ。信号は「パッシブ」を経由するものの、「外部パワーアンプ」の各chと各スピーカーは対になっていて、信号の流れる道筋は「パッシブ」内においても独立している(ツイーター用の回路とミッドウーファー用の回路が分かれている)。

対して「メインユニット」を核とする「マルチアンプシステム」でも、「パワーアンプ」の4chすべてがフロントスピーカーのために使われることとなる。つまり、「パワーアンプ」の1chずつが各スピーカーユニットの1つ1つに割り当てられる。この点が「バイアンプ接続」との同一点だ。ただし、信号の流れ方は少々変わる。「メインユニット」→「外部パワーアンプ」→「スピーカー」、このようになる。

というわけで「マルチアンプシステム」では、信号の流れは「パッシブ」を経由しない。そのかわり、音楽信号の帯域分割は「外部パワーアンプ」の前段で行われる。つまり「メインユニット」内に信号の帯域分割を行うための「クロスオーバー機能」が搭載されている必要があり、それにてあらかじめ信号が計4つ(左右のツイーター、左右のミッドウーファー)に分けられる。つまり「パワーアンプ」に入力される段階で各chの音楽信号は、高音だけ、もしくは中低音だけという状態になっている。

高性能なプロセッサーを搭載した「メインユニット」の一例(カロッツェリア・サイバーナビ)。

「マルチアンプシステム」では、「バイアンプ接続」では得られない利点も享受可能に!

なお、「バイアンプ接続」も「マルチアンプシステム」も「パワーアンプ」を贅沢に使えることが最大のメリットだ。そして「マルチアンプシステム」ではさらに、「回路をシンプル化できること」と「緻密なサウンド制御を行えること」、この2つのメリットも享受可能となる。

それぞれがどのようなことなのかを説明していこう。まず、「回路をシンプル化できる」というのは、「パッシブ」が不要になることを意味している。であるので「パワーアンプ」とスピーカーがダイレクトに繋がり、「パワーアンプ」の駆動力をロスしにくくなる。

もちろん「パッシブ」を使うことにも利点はある。というのもスピーカーは普通、「パッシブ」も含めて設計(音作り)されているので、「パッシブ」を通す音こそがそのスピーカーのサウンドであるという側面も持つ。ゆえに「バイアンプ接続」では、設計者が意図したとおりのサウンドを楽しめる。

しかし、その「パッシブ」を使わないことで、スピーカーの駆動力が上がることもまた事実だ。つまり、「パッシブ」を使っているときとは異なるスピーカーの魅力を引き出せるというわけなのだ。

そしてもう1つの利点、「緻密なサウンド制御を行えること」とは、以下のようなことを指す。

「メインユニット」に内蔵された「クロスオーバー機能」を使って「メインユニット」内で信号の帯域分割をあらかじめ行えるようになると、各信号に対して個別にとあるサウンドチューニング機能を効かせられるようになる。とあるサウンドチューニング機能とは、「タイムアライメント」だ。

「タイムアライメント」の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。

「マルチアンプシステム」では、「タイムアライメント」を詳細に運用可能に!

「タイムアライメント」とは、各スピーカーの発音タイミングを変えられる機能だ。クルマの中ではリスニングポジションが左右のどちらかに片寄る。さらにはツイーターとミッドウーファーの取り付け位置もバラバラだ。結果、各スピーカーから放たれる音の到達時間にズレが出る。ゆえに、ステレオイメージが崩れがちとなる。

しかし、「タイムアライメント」を使えば近くにあるスピーカーに対して発音タイミングの遅延をかけられるので、すべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況を擬似的に作り出せる。

ちなみに、もしも「メインユニット」に「タイムアライメント」が搭載されていたとしても、その「メインユニット」が「クロスオーバー機能」を持っていなかったら、ツイーターとミッドウーファーに「タイムアライメント」を個別にはかけられない。「メインユニット」内ではツイーターの信号とミッドウーファーの信号は分割されないからだ。フロントの左右、リアの左右、これら4つに「タイムアライメント」をかけられるが、ツイーターとミッドウーファーは「1つのスピーカー」として扱われる。

しかしその場合には、「バイアンプ接続」を行えばツイーターとミッドウーファーの個別制御が可能となる。フロントスピーカーへの出力をミッドウーファーに、リアスピーカーへの出力をツイーターに使うことになるので、結果、フロントの4スピーカーに個別に「タイムアライメント」をかけられる。

というわけで、「メインユニット」に「クロスオーバー機能」が搭載されていなくても「バイアンプ接続」を実行すればこのようなシステム運用も可能となる。しかし「クロスオーバー機能」が搭載されている「メインユニット」であれば、「マルチアンプシステム」が組める。そうであった方が、利点は増える。

なお、ツイーター用の信号とミッドウーファー用の信号とに帯域分割できる「クロスオーバー機能」を搭載している「メインユニット」の主な具体的機種名は、以下のとおりだ。カロッツェリアの『サイバーナビ』、『サイバーナビXシリーズ』、『車種専用10V型サイバーナビ』、アルパインの『ビッグXシリーズ』、三菱電機の『ダイヤトーンサウンドナビ』、さらにはカロッツェリアの各メインユニットで「ネットワークモード」が使える各モデル。これらでは「メインユニット」を核とする「マルチアンプシステム」が組める。

今回は以上だ。次回も「外部パワーアンプ」の活用術を具体的に解説していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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