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とある機能を活用すると、超低音が目の前から聴こえてくる!? カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 3・サブウーファー編 第6回

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「パワードサブウーファー」の取り付け例(カロッツェリア・TS-WH500A)。全 3 枚写真をすべて見る

カーオーディオでは難解な専門用語が多々使われる。当連載では、その1つ1つを解説してきた。現在は「サブウーファー」にまつわる用語にスポットを当てている。今回は、「サブウーファー」のサウンドセッティングに関連する用語について説明していく。

「メインユニット」に「サブウーファー出力」が備わっていたら、ぜひ活用を!

さて、一部の「メインユニット」には、「サブウーファー出力」という機能が備わっている。そうであるとなんらか「サブウーファー」を導入した際に、その「サブウーファー」から繰り出される超低音をより詳細にコントロールできるようになる。今回は、このことに関連した用語について説明していく。

ではまず、「サブウーファー出力」とは何なのかを説明しよう。ひと言で言うとこれは、「サブウーファー」専用の「外部音声出力」だ。拡張性の高い「メインユニット」は、「外部音声出力」という端子を備えていて「外部パワーアンプ」を接続できるようになっているが、それとは別に「サブウーファー」のための接続端子を備えているモデルもあるのだ。

なお「メインユニット」は普通、「パワーアンプ」を内蔵している。そしてそれにて信号を増幅したのちにその信号をスピーカーへと送り込むのだが、「外部音声出力」からは、「内蔵パワーアンプ」で増幅する前の微弱な状態の信号が出力される。信号の増幅は、増設する「外部パワーアンプ」で行うことになるからだ。というわけで「サブウーファー出力」からアウトされる信号もまた、微弱な状態のままだ。

しかしながら、メディアから読み取った音楽信号をただそのままアウトするわけではない。信号を「サブウーファー」を鳴らすのに最適な状態に加工した上で出力できる。ここのところが最大の特長だ。つまり、「サブウーファー出力」が備わっていると、より良いコンディションで「サブウーファー」を鳴らせるようになるというわけなのだ。

「サブウーファー出力」を備えたメインユニットの一例(カロッツェリア・楽ナビ)。

「サブウーファー出力」が備わっていると、「サブウーファー」の再生範囲を任意に設定できる!

続いては、「サブウーファー出力」によってどのようなサウンド制御が可能となるのかを説明していく。カロッツェリアの『楽ナビ』を例に取り説明していこう。『楽ナビ』の「サブウーファー出力」で制御可能となる項目は以下のとおりだ。「カットオフ周波数」、「カットオフスロープ」、「位相」、「出力レベル」、この4つだ。

それぞれの言葉の意味を説明していこう。まず「カットオフ周波数」では、「サブウーファー」に再生させる帯域の上限を設定できる。例えばこの数値を「63Hz」に設定すれば、「サブウーファー」が鳴らす担当帯域が「63Hz」以下となる。

と思いきや、厳密にはそうではない。“カットオフ”とはいうものの、63Hzを境目としてすっぱりそれよりも上の帯域の音が切り取られるわけではないのだ。

実際は、以下のような状況となる。「カットオフ周波数」で設定したところを境目として、その境目から上の帯域の音は音域が上がるほどに緩やかに減衰していく。色で言うと、“グラデーション”がかかったような状態となる。つまり、音域が高くなるにつれて音が薄くなる。要するに、音程が高くなるに従って音量が弱まっていくというわけだ。

で、その“弱まり方”を設定するのが「カットオフスロープ」だ。ただし、カロッツェリアの『楽ナビ』では、「カットオフ周波数」は「マイナス18dB/oct」に固定されている。ちなみにその他の「メインユニット」では、この値を可変できる機種もある。

「パワードサブウーファー」の一例(DLS・ACW10)。

各項目の設定が上手くいくと、フロントスピーカーの音と「サブウーファー」の音が上手く繋がる!

ところで、この「マイナス18dB/oct」とはどのような状態なのかというと…。

「カットオフスロープ」については以前にも解説したが、特に難しい用語なので今一度説明しておこう。まず「dB/oct」は「ディービーオクト」と読み、「dB」は音量の単位で「oct」は「オクターブ」を意味している。というわけで「マイナス18dB/oct」とは、「音域が1オクターブが高くなるにつれて音量が18dB下がる」いう「減衰率」であることを示している。

そして「位相」とは、音波のタイミングだとイメージしてほしい。音は空気中を、水面を伝う波紋のように上下運動を繰り返しながら進んで行くのだが、この動きのタイミングのことが「位相」と呼ばれている。で、「位相」では「ノーマル」と「リバース」が選べるようになっていて、「ノーマル」ではこの上下運動が0度のところを起点として進んでいく状態に設定でき、「リバース」ではそれを反転させ180度のところが起点となるように設定できる。

そしてもう1つの「出力音圧レベル」はズバリ、「サブウーファー」の「音量」を設定するためのスイッチだ。

なお「サブウーファー出力」が備わっている場合は普通、フロントスピーカーの再生範囲も設定できるようになっている。なので、もしも「サブウーファー」の「カットオフ周波数」を「63Hz」に設定するなら、フロントスピーカーの「カットオフ周波数」も「63Hz」に設定すれば、ドアスピーカーには「63Hz」より上の音を、「サブウーファー」には「63Hz」より下の音を再生させるという、再生範囲の役割分担が成立するのだ。

結果、超低音がドアスピーカーと「サブウーファー」の両方から聴こえてくるという状態を解消でき、フロントスピーカーの音と「サブウーファー」のサウンドとが上手く繋がるやすくなる。

で、細かな設定の仕方は状況や好みに応じて変わってくるが、もろもろの設定が上手くいくと、なんと、「サブウーファー」から放たれる超低音も目の前から聴こえてくるようになる。仮に「サブウーファー」がトランクに置かれていたとしても、超低音を目前から聴こえてくるようにできるのだ。

ちなみにこのような聴こえ方のことは、「低音の前方定位」と呼ばれている。

今回は以上だ。次回もカーオーディオの専門用語解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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