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“箱”の作り方で音が変わる? カーオーディオ『用語解説・2021』 Section 3・サブウーファー編 第5回

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「サブウーファーボックス」の製作例(製作ショップ:サブライム<群馬県>)。全 3 枚写真をすべて見る

カーオーディオ製品のリサーチをしていると、難解な専門用語にさまざま出くわす。当連載ではそういった専門用語の意味を解説している。現在は「サブウーファー」に関係したワードを取り上げている。今回は、「サブウーファーボックス」に関する用語にフォーカスする。

カーオーディオで使われることが多いボックスタイプは、主には2つ!

以前にも説明したとおり、「サブウーファー」を鳴らすためには「ボックス」が必要だ。「サブウーファーユニット」の裏側から発生する音を閉じ込めなければならないからだ。それが外に漏れると、表側から発せられる音との打ち消し合い(キャンセリング)が引き起こされる。それを防ぐのが、ボックスの主な役割だ。

で、裸の状態で売られている「ユニットサブウーファー」を使う場合には、「ボックス」は自前で用意しなくてはならない。とはいえ既製の「ボックス」も存在するので、予算を抑制したい場合にはそれを使うのもアリだ。しかし、ワンオフした方がより良いものを用意できる。積載の都合に合わせて形や大きさを決められるし、何よりサウンドの方向性をコントロールできる。つまり、どんな「ボックス」を用意するかで鳴り方を変えられるのだ。

さて、カーオーディオで使われることが多い「サブウーファーボックス」は、主には2タイプある。1つが「シールドボックス」でもう1つが「バスレフボックス」だ。

最初に「シールドボックス」について説明していこう。まず「シールド」という言葉には「盾(たて)」とか「遮蔽(しゃへい)」という意味があるが、「サブウーファーボックス」について使われる場合には「密閉」という意味を表す。つまり、中の空気と外側の空気とを完全に遮断できる構造になっているもののことが「シールドボックス」と呼ばれている。

ちなみにカーオーディオでは、「シールドボックス」が一番人気だ。その主な理由は2つある。1つは「製作しやすいから」で、もう1つは「比較的に小さく仕上げられるから」だ。

「ユニットサブウーファー」の一例(DLS・RCW12)。

「シールドボックス」は、タイトな低音を鳴らしやすい!

そして「シールドボックス」は、タイトな低音を鳴らしやすいという特長も持つ。タイトな低音とはつまり、引き締まった低音だ。言うならば、ドーンというような鳴り方ではなく、パンパンという感じで鳴る硬質な低音、というイメージだ。

とはいえ、鳴り方は設計の仕方でも変わってくる。容量を大きめに取るとタイト感は薄れ、そのかわりローエンドまでの伸びやかさは増していく。逆に小さめに作るとタイト感は増していくもののローエンドまでの伸びやかさは薄れていく。というわけなので、「シールドボックス」はこういう音、と決めつける必要はない。最終的な鳴り方は設計の仕方でコントロールできる。

ところで、小さく作りすぎるのはNGだ。「ユニットサブウーファー」にかかる負荷が大きくなりすぎるからだ。内部の空気がサスペンション的な効果を果たすのだが、ボックスを小さく作るとそのバネの力が強くなっていくので、振動板が破損しやすくなる。その点には注意が必要だ。

では続いて、「バスレフボックス」について説明していこう。まず「バスレフ」とは「バス・レフレックス」の略だ。この「バス」は低音を意味し、「レフレックス」は「光などが障害物にあたって反射すること」という意味がある。ちなみにカメラの「一眼レフ」の「レフ」も「レフレックス」の「レフ」だ。内部に鏡が仕込まれていて、それにて光を反射して画像を記録するというような仕組みを持っている。

で、「バスレフボックス」は日本語で言うと「位相反転型」となる。「位相」とはざっくり「音波のタイミング」だとイメージしてほしい。音は、水面を進む波紋のように上下運動を繰り返しながら空気中を進んで行く。つまり「バスレフボックス」は、この上下運動のタイミングを反転させてボックスの外に放出する仕組みを持っている。

「ユニットサブウーファー」の一例(モレル・ウルティモチタニウム)。

「バスレフボックス」は、量感が豊かで伸びやかな低音を出しやすい!

というわけなので、「バスレフボックス」は、「ダクト」とか「ポート」と呼ばれる穴を備えることとなる。この穴から内部の音を外に出す。

となると「キャンセリング」が起こるのでは、という心配が頭をもたげるかもしれないが、その心配はご無用だ。なぜなら「ポート」から放出される音は「位相が反転されている」ので、つまりは表側で鳴っている音と音波のタイミングが同一だ。なので、打ち消し合いは起こらず、むしろ低音の増強効果がもたらされる。この点が、「バスレフボックス」のサウンド的なメリットとなる。

しかも設計の仕方によって、増強される周波数をコントロールできる。そして「バスレフボックス」は、締まり感は出しづらいが量感は稼ぎやすい。また低域側の再生レンジも伸ばせる。増強した帯域よりも下側の音はストンと減衰するのだが、聴感上はレンジが伸びたような効果を上げられる。

ただし、ボックスサイズは大きくなる。「ユニットサブウーファー」のカタログを見ると「推奨容量」が記載されている場合が多いが、それを見ると「シールド」よりも「バスレフ」の方が「推奨容量」が大きくなっているはずだ。

また、製作の難易度も上がる。設計を失敗すると狙いどおりのサウンドを出せないこともあり、構造的にも少々複雑になるのでその分、手間もかかる。しかし上手くいくと豊かな低音を得られる。ゆえにファンも多い。

なお、「シールド」と「バスレフ」のどちらにするかは総合的に判断される。積載性、コスト、そしてサウンド傾向が勘案されながら、各人にとってベストなボックスが選ばれる。

今回は以上だ。次回も「サブウーファー」に関連したワードの解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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