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【レクサス RX450hL 450km試乗】注目の3列シートSUV、マイチェン直前のロングドライブ

自動車試乗記

レクサスRX450hL。群馬・赤城山麓の奥利根ワイナリーにて。全 30 枚写真をすべて見る

トヨタ自動車がグローバル展開しているプレミアムセグメントブランド「レクサス」のラージクラスSUV『RX450hL』で、450kmほどショートツーリングをする機会があったのでツーリングレポートをお届けする。

RX450hLは2017年12月にRXシリーズに追加されたロングバージョン。通常のRXのボディ後部を延長して室内長を稼ぎ、3列シート化を実現させた。乗車定員は2-3-2の7名。パワートレインはRXショートのハイブリッドと同様、3.5リットルV6ミラーサイクル+2モータースプリット方式。2019年8月に改良モデルが国内発売予定だが、今回は従来モデルでの試乗となる。

ドライブしたのは東京を起点とした北関東周遊で、最遠到達地は豊臣秀吉による小田原北条征伐のきっかけになったことで有名な真田一族の出城、名胡桃城址。道路比率は市街路2、郊外路1、高速6、山岳路1。路面ドライ。行程の大半が5~6名乗車。エアコンAUTO。

では、レクサスRX450hの長所と短所を5項目ずつ挙げてみよう。

■長所
1. 2列シートRXの初期型と比べると劇的に改善された乗り心地。
2. いかにもレクサスというイメージの静粛性の高さ。
3. レクサス車の中では採光性が良く、室内が明るい。
4. 2.2トンの自重+多人数乗車も余裕でこなすV6ハイブリッドのパワー。
5. 3列目を折り畳むと荷室は広大で、レジャー用品などの積載能力は十分以上。

■短所
1. 最初から覚悟していたが3列目はさすがに狭かった(笑)
2. 運転支援システムのスペックが低い。
3. ミラーサイクル化されたV6を積むが燃費は期待値ほどには伸びない。
4. プレミアムSUVの激しい競争の中で相対的に陳腐化が著しい内外装。
5. 操縦性はさすがに鈍重。

3列目の狭さも“ゆる旅”なら楽しく


今回のドライブは最初から3列目シートまでを使い、多人数で移動することを前提としていた。本来、そういう用途にはミニバンが向いているのだが、最近は3列シートSUVにも注目が集まっているということで、このRX450hLをチョイスしてみた次第であった。

実際にドライブをしてみたところ、さすがに3列目の空間はタイト。ロングタイプと言ってもホイールベースは標準車と同じ2790mmのままボディ後部をエクステンドしただけなので、ロングホイールベースのライバルモデルに比べると3列目として置けるシートは補助席同然のものに限られてしまうのは致し方がないところだ。一方、2列目の居住性は2列シートモデルとまったく同じである。

3列目が狭いことはドライブ前にレクサス関係者から忠告されていた。が、片道500km、1000kmという旅ならいざ知らず、200kmにも満たない旅であれば、小柄な人に3列に乗ってもらえば大丈夫だろうという目算で、かまわずそれでドライブを強行した。その目算はあながち外れていなかった。狭いというネガはあまり気にならず、一方で2、3列目のパセンジャーはフロントシートバックに装備されたオプションの大型ディスプレイでテレビを見たりしながらわいわいと盛り上がるという、なかなか楽しい移動となった。

パーソナルモビリティとしての楽しみというよりは観光バス的な楽しみという感がなくもなかったが、クルマがボロいと観光バス的楽しみどころの騒ぎではない。RX450hの動きは一番の得意なシーンであったハイウェイクルーズをはじめ、全般的に大変柔らかく、かつ落ち着いたもので、走行中にディスプレイを注視しても気持ちが悪くなったりしない。

同じRXでも、3年ほど前に1500km試乗を行った標準モデルがクルマのロールやバウンシングを無理矢理止めるようなセッティングで快適性を損ねていたのとはどえらい違いである。レクサス車としてはウインドウの面積や配置がよろしく、採光性や眺望が悪くなかったのもそういう“ゆる旅”の楽しさに拍車をかけた。

ワインディングでの走りでライバルには劣るが


欠点として挙げられるのはワインディングロードでの敏捷性が昨今進化の著しいプレミアムセグメントSUVのライバルに比べると負け気味であること、日進月歩の先進安全システムのスペックが相対的にライバルに劣ること、同じく日進月歩の市場競争のなかで内外装のデザインやクオリティ感が早くも陳腐化していること、燃費が思ったほど伸びず通算10km/リットル台にとどまったことなど。

ただ、ワインディングでの走りについては別にライバルに勝っていなければダメというものではなく、鷹揚なハイウェイクルーズフィールという特性で十分に魅力を出せているように思えた。

もともとRXはセダンの『アヴァロン』がベースで、シャシーのポテンシャルはそれほど高くはない。それを無理して高性能に仕立てようとするとRX標準モデルの初期型のような動きになるのだ。ロングバージョンが旋回性能を過剰に上げることを捨てて自然なセッティングに徹したのは好感が持てた。

先進安全システムは今夏にマイナーチェンジを受けるさいにアクティブハイビームを追加装備するなどのバージョンアップが行われる予定なので、そのときにはある程度キャッチアップすることだろう。(編集部注:8月のマイナーチェンジでは、先進安全装備のバージョンアップのほか、ボディ剛性向上、足回りはハブベアリングやスタビライザーバー剛性向上などでアンダーステアを低減する改良が施される)

言うは易し、りんごの花摘み


ちなみに今回のドライブのメインタスクは、群馬・川場村でりんごの花摘みをすることであった。1日目に冒頭で述べた名胡桃城址を見物。利根川を挟んだ対岸は小田原北条氏の勢力圏で、同じように城が点在していた。当時は利根川の水量はダムでコントロールされた今日よりずっと多く、渡河可能なポイントは限られていたという。名胡桃城からは数少ない浅瀬を一望することができた。「その名胡桃城を北条氏がなぜ攻めたのか、また攻略が可能だったのかは、いまだ定説ができていません。まさに歴史作家の想像がモノを言うところですね」と、ボランティアの解説者がしみじみと語ってくれた。

川場村の旅荘に泊まり、バーベキューなどを楽しんだ後、2日目にいよいよりんごの花摘み。鹿児島出身の筆者はみかんの花摘みの経験はあるが、りんごの花摘みは初めてであった。枝の花々は最盛期が過ぎており、がくの部分が直径1センチにもみたないミニりんごになりはじめていた。それをどんどん摘んでいくのだが、みかんの場合は枝を育てるために剪定を積極的にやるのに対して、りんごの場合は枝は切らず、花摘みだけを行うとのこと。

小さく膨らんだものの中から一番立派になりそうなものを残し、後を摘み取る…のだが、言うは易し、行うは難し。ボウリングの球くらいの空間に1個花を残すだけという農家のアドバイスを受けて花摘みを行ってみると、迷うのなんの。どっちが立派な実になるのか、その瞬間の自分の選択で将来がすべて決してしまうのだ。どっちが立派になるのかという選択だけで悩んでしまう。

しかも、ボウリングの球相当の空間に1個だけ花を残すというのがこれまた心理的に相当ハードルが高い。30の花のうち1個を残すようなものだ。ええーーこんなに摘んだら実がなくなっちゃうではないか!!というのは素人丸出しの懸念だが、人間、こうすればいいんだよと教えられたところで、自分で本当に確信が持てていなければダイナミックに事に当たるのは難しい。そのことを嫌というほど実感させられた1日だった。

アメリカ車的な鷹揚さも個性に


まとめ。レクサスRX450hLは普段は3列シートを折り畳み、2列シート+広大な荷室というリゾートエクスプレス的な用途をメインとする顧客にとっては十分に魅力的なモデルと言えそうだった。何より2列シートモデルに対して乗り心地の点で大きなアドバンテージがあるのが大きい。乗り味はダンピングの効いた欧州プレミアムの滑らかさとは違うアメリカ車的鷹揚さに満ちたものだが、そういうクルマが少なくなった今日ではむしろ個性的な味とも言える。

一方でフル7シーターが欲しいというカスタマーにとっては、3列目が狭すぎて購入対象になりそうもない。もっとも、狭いと言っても子供しか乗れないというほど狭いわけではない。3列目には小柄な人が乗るというフォーメーションを取れるならば、今回のように連続乗車がせいぜい2時間以内というショートドライブでは多人数乗車モデルとしてまあまあ使い物になる。そういうエマージェンシーが欲しいカスタマーには貴重な選択肢の一つとなるだろう。(編集部注:8月のマイナーチェンジでは3列目シートが改良され、足元の空間を広げたポジションが選べるようになる。)

日本市場におけるライバルはラージサイズの3列SUV全般。RXはプレミアムセグメントだが、最近はラージクラスはSUV、セダンともプレミアムとノンプレミアムの区分けがはっきりしなくなってきており、出来の良いモデルであればノンプレミアムもライバルとして視野に入る。

上はメルセデスベンツの新作『GLE』、BMW『X5』、ボルボ『XC90』、アウディ『Q7』、ランドローバー『レンジローバースポーツ』など。ノンプレミアムではマツダ『CX-8』、ランドローバー『ディスカバリースポーツ』あたりか。

《text:井元康一郎》

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