「クルマの中で好きな音楽を良い音で聴きたい!」、そう考えて“スピーカー交換”を実践したという方々に向けて、次なる一手、“外部パワーアンプ”の導入をおすすめする短期集中連載をお贈りしている。今回は、“ベーシックシステムの楽しみ方”を考察する。
なお当特集は毎回、全国の有名カーオーディオ・プロショップの協力を仰ぎ、記事を作成している。今回は、福井県福井市に店舗を構える実力店、“ラ・ルース”の米田さんに登場願った。参考になる話をたくさん訊くことができた。じっくりとお読みいただきたい。
■“4chモデル”を選んでおけば、後々のシステムアップをスムーズに実行可能!
最初に、“ベーシックシステム”とはどのようなものなのかを説明しておこう。“ベーシックシステム”とはつまり、フロント2ウェイスピーカーを“外部パワーアンプ”の2chで鳴らすというシステムだ。プロセッサーを使ったりサブウーファーを導入したりはせずに、ミニマムにシステムが完成される。なのでツイーターとミッドウーファー間の“クロスオーバー(信号の帯域分割)”は、スピーカーに付属している“パッシブクロスオーバーネットワーク”で行われる。ゆえに“外部パワーアンプ”の使用ch数は“2つ”ですむ、というわけだ。
では、米田さんに訊いた話を紹介していこう。最初に、“ベーシックシステム”を組もうとする際の“パワーアンプ”の選び方から教えてもらった。まず問題となるのは、「2chモデルにするか4chモデルにするか」だが…。
「当店では、4chモデルをおすすめしています。“外部パワーアンプ”の導入を考えられる方は“良い音”への感度が高いので、サブウーファーの追加やプロセッサーの導入にもご興味をお持ちです。最初に4chアンプをチョイスしておけば、それらを実行しようとしたときに出費を抑えられますから。
もちろん2chモデルにも利点はあります。予算を2ch分に集中できるので高性能なモデルを手にしやすくなりますし。しかし、システムアップをしようと思ったときには融通が効きません。もう1台増やすとなれば費用もかさみますし取り付けスペースも必要になります。合理性を考えれば、4chアンプの方が有利です」
価格帯的なおすすめについても訊いてみた。
「4万円から5万円くらいのモデルが良いと思います。最廉価なモデルより1グレード上という位置付けとなるこれらのモデルは、手頃さと得られる満足度のバランスが良いと思うんです。
しかしながら音にこだわるのであれば、予算の許す範囲の中でできるだけハイグレードなモデルを選んでおくと良いでしょうね。価格が上がるにつれて性能も上がっていきますから。5万円のモデルと10万円のモデルとを比べたら価格は2倍です。その分の性能差は当然ながら出てきます」
■好きな音楽を鳴らすのに向いたモデルを探す、という選択方法もアリ。
続いては、機種の絞り込み方について教えてもらった。
「お好きな音楽を鳴らすのに向いたモデルを探す、という考え方もあると思います。例えば女性ボーカルがお好きなら、中高域をキレイに再生できるモデルが向いていますし、EDM系がお好きなら、ハギレ良く鳴らせるモデルが向いていると思います。
プロショップに行ってデモ機の音を確かめたり、お店のアドバイスを参考にして、好みの音楽に向いたモデルを絞り込んでいくと良いと思います。なお、試聴できる機種の数には限りがありますので、頼りになるのはプロの助言の方ですね。ショップのスタッフならばいろいろなモデルの音を聴いて知っていますから。
ちなみに当店では、試聴機を数か月ごとで入れ替えています。1度に聴ける台数は限られますが、定期的にご来店いただけるとある程度いろいろなモデルの音を確認できると思います。お気軽にお越しいただきたいですね」
次いでは、インストールに関する質問をぶつけてみた。まずは、取り付け場所について訊いてみた。
「ベストな取り付け場所はやはり、シート下だと思います。取り付け費用も比較的に少なくてすみますし。ケーブルも短くできるのでその点でもリーズナブルです。あと、車室内なので乗車中は最適な温度に保たれますから、その点でも安心度が高いですよね。なので製品選びをする際には、シート下に取り付けられるかどうかもチェックしておくと良いと思います。
カッコ良く取り付けたいとお考えなら、トランクが良いですね。インストール費用は増えますが、見た目も大事にされる場合には、トランクがおすすめです」
■“バイアンプ接続”を実行すれば、“外部パワーアンプ”の良さを2度味わえる?
ところで、フロント2ウェイスピーカーを4chパワーアンプで鳴らす場合には、こんな楽しみ方もできるという。
「“バイアンプ接続”という方法も、ご興味があればぜひお試しいただきたいですね。使用しているスピーカーがそれに対応していることが条件となりますが、それが可能ならばやってみる価値は大きいです。
“バイアンプ接続”というのは、パワーアンプの4chを使って2ウェイスピーカーを鳴らすという接続方法です。それに対応している“パッシブクロスオーバーネットワーク”には、ツイーター用の入力端子とミッドウーファー用の入力端子がそれぞれ専用に備えられていますので、1つのスピーカーユニットにパワーアンプの1chずつをあてがえるようになるんです。
こうすることで、通常の接続方法より2倍のパワーが掛けられるようになります。さらにはパワーアンプからスピーカーまでの伝送回路を1つ1つ独立させられますので、もろもろをシンプル化できます。結果、高音質が得られる、というわけなんです。
“バイアンプ接続”に対応したスピーカーを使っていたら、“外部パワーアンプ”を導入したときにはまず普通に鳴らし、そして後から“バイアンプ接続”に繋ぎ換えてみると、音が変わる感動を2度味わえます。おすすめです」
最後にまとめていただいた。
「4、5万円台のモデルであっても、一般的なAV一体型ナビの内蔵パワーアンプと比べたら相当に高性能です。スピーカーを市販品に換えたのであれば、その良さをさらに引き出すためにも、“パワーアンプ”の導入にも挑戦していただきたいですね。音楽を聴く楽しさがさらに深まることは間違いありません」
“ラ・ルース”の米田さんに訊いた話は以上だ。まずは“パワーアンプ”を1台導入し、“ベーシックシステム”から始めてみるのも面白そうだ。スピーカーを市販品に交換しているのであれば、“次の一手”にぜひぜひトライを♪
《text:太田祥三》