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「外部パワーアンプ」の使いこなし術を徹底解説! 第7回 パワーアンプ不要のシステムがある?

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クラリオン・フルデジタルサウンド全 1 枚写真をすべて見る

「スピーカー交換」を実施した後に、その良さをさらに引き出すための有効なプランとして、「外部パワーアンプ」の導入をおすすめする短期集中連載をお贈りしている。第7回目となる今回は少々趣向を変えて、「パワーアンプ」を必要としないシステムがあることを紹介していく。

■CDが登場したことで、デジタル信号をアナログ変換するパーツが必要となった…。

「パワーアンプ」を必要としないシステムとはズバリ、「クラリオン」の『フルデジタルサウンド』である。

なお当システムは、コントロールユニットからスピーカーまでの“トータルシステム”である。通常の「アナログパワーアンプ」や「アナログスピーカー」をシステムに組み入れることは可能なのだが、基本的には当システムでフルシステムを組んだところに付け加える、という形となる。つまり、「スピーカー交換」の“次の一手”としては機能せず、本来ならば当特集の内容とはリンクしないのだが…。しかしながら現代カーオーディオにおいては「パワーアンプ」を使わないシステムもあるということを、この機会に改めて紹介しておこうと思う。

まずは、成り立ちから説明していこう。できるだけ簡単に、ポイントを絞って解説していく。

ところで、CDが登場したとき、オーディオシステムの仕組みが、それ以前と比べて変化した。変化点の1つとして挙げるべきは、システムの中に必ず“DAC”(digital to analog converter)が必要となったこと、だろう。“DAC”とは、CDに記録されているデジタル信号をアナログ信号に変換するパーツである。そしてこのパーツの性能いかんで、システムのサウンドクオリティにも差が出ることと相成った。絶対に必要な、しかも能力が問われるキーパーツが、システムの中に新たに存在するようになったのだ。

さて、この“DAC”がなぜに絶対に必要なのかというと、それは「スピーカーがデジタル信号には対応していないから」である。デジタル信号をスピーカーに送っても、スピーカーはそれを音楽として再生できない。ただノイズを発するだけなのだ。

■電気信号に変換された音を元通りに“戻す”ためには…。

通常のスピーカーは、録音マイクとは逆の仕組みで電気信号を音に換えている。音を拾ってそれを電気信号に換えるのがマイクの仕事だが、スピーカーは、その工程の逆手順を踏んで、電気信号を元通りの音に“戻す”のだ。

少々荒っぽい説明にはなってしまうが、例えるならば…。

食品を冷凍保存することをイメージしてほしい。冷凍庫で凍らせて、食べようとするときには電子レンジで解凍する。しかしながら、凍った食品が細かくカットされてしまったら、解凍したときには元どおりの姿には戻せない。

これをオーディオに置き換えると、凍らせる役目を負うのがマイクで、解凍する役目を負うのがスピーカーだ。スピーカーも電子レンジと同様に、元に戻そうとしたものが、スピーカーに送り込まれた時点で前とは違うものに変化していたら、元通りに復元することは不可能だ。デジタル信号に置き換えられた信号がアナログ信号に戻されていない状態でスピーカーに送り込まれてしまったら、その変わり様は食品が切り刻まれた以上に大きい。到底、元の姿には戻しようもない。スピーカーにはアナログ信号を送ってやらなければいけないのだ。であるので、“DAC”が必要となるのだ。

しかしながら「クラリオン」の『フルデジタルサウンド』のスピーカーは、送り込まれる信号がデジタルのままでも、元通りの音に復元することが可能だ。送り込まれる信号が録音されたときと異なる状態になっていても(デジタル信号であっても)、原音どおりの音楽を再生できる。

これが可能になったのは、「クラリオン」が特別な“車載専用LSI”を開発したからだ。このパーツの働きによって、デジタル信号のままでも、音を元通りに“戻す”ことができるようになったのだ。

■「パワーアンプ」が必要ないことで、これならではのメリットが生まれた。

こうして『フルデジタルサウンド』では“DAC”が不要になり、さらには「パワーアンプ」も不要になった。“DAC”や「パワーアンプ」の代わりに“車載専用LSI”が必要なのだが、これさえあれば、システムの中に「デジタル信号をアナログ変換するパーツ」と「信号を増幅する装置」がなくても大丈夫になった、というわけなのだ。

その結果、これならではの利点を得られることとなった。「パワーアンプ」が不要になったことに着目すると、利点は主に2点ある。1つ目は、「省電力であること」。2点目は「省スペースであること」。「パワーアンプ」を必要としないので、電力消費を少なくでき、インストールスペースも最小限に抑えられる(同時に重量増も抑制できる)。

ちなみに、「パワーアンプ」が必要ないこととは関係がないのだが、『フルデジタルサウンド』には他のメリットも備えられている。それは、「ソースユニットの対応力が高いこと」。つまり、入力端子が多彩なのである。通常の“RCA入力端子”はもちろん、純正メインユニットのスピーカー出力を入力できる“ハイレベルインプット”も装備され、さらには“デジタル入力”は計3系統も備えられている(デジタルコアキシャル入力、デジタルオプティカル入力、USB入力)。

ここまで解説したので、価格についても触れておこう。もっともミニマムな仕様とした場合、フルデジタルサウンドプロセッサー(サウンドプロセッサー/ツィーター/コマンダー)である『Z3』(税抜価格:12万5000円)とフルデジタルスピーカー『Z7』(税抜価格:8万7000円)とを用意することとなるのだが、その製品総額は計21万2000円だ。

それなりの価格ではあるが、通常の「DSP」と「パワーアンプ」と「フロントスピーカー」とを組み合わせたシステムと比べると、コストパフォーマンスはなかなかに高いと評価されている。さらにいうと、“上を見ればキリがない”のがカーオーディオであるが、『フルデジタルサウンド』ではシステムの上限をイメージしやすい。この部分も好感されている。

カーオーディオでは、「外部パワーアンプ」を導入してシステムを本格させていくことで醍醐味が味わえる。しかしながら今は、「パワーアンプ」を必要としない、『フルデジタルサウンド』という選択肢もある。これにはこれの良さがある。これからカーオーディオを始めてみたいと思ったときには、『フルデジタルサウンド』のこともぜひ、思い出してほしい。選ぶべきシステム候補の1つに加えてみても面白い。

さて次回は、「パワーアンプ」開発においても独特なポリシーを持っている国産ブランド、「ビーウィズ」について考察していく。お読み逃しなきように。

《text:太田祥三》

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