20万円前後の、“現実的な”ハイエンドパワーアンプ4機種にスポットを当て、それぞれの魅力と実力を検証する特別企画を展開している。今回はその2回目として、人気ヨーロピアンパワーアンプ2台についてのインプレッション・リポートを、じっくりとお伝えしていく。
◆音の質感の高さは流石。特別な機能も有する、楽しみ方の幅の広い、懐の深い1台。
早速、本題に入りたい。前回ご紹介した『JLオーディオ HD600/4』(税抜価格:19万2000円)、『ロックフォード・フォズゲート T1000-4ad』(税抜価格:21万円)に引き続き、3台目として聴いたのはこちらのモデルだ。
- ☆グラウンドゼロ GZPA REFERENCE 4XS(税抜価格:22万円)
- ●仕様:Class-A/B 4ch(4/3/2ch)パワーアンプ
- ●定格出力:120W×4(4Ω)、220W×4(2Ω)、440W×2(4Ωブリッジ) ●周波数特性:10Hz-30KHz ●入力感度:100mV-10V ●クロスオーバー:ハイパス40Hz-3KHz、ローパス40Hz-3KHz(バンドパス可) ●サイズ(幅×奥行×高さ):420×236×67.5mm ●質量:5.76kg ●実装ヒューズ容量:40A×2
- ◎バリアブルバイアスセッティング搭載(Class-A > Class-A/B)
パワーアンプもしかり。エントリー機はしっかりと上級機のサウンド傾向を受け継ぎ、ハイグレード機はハイグレード機で“スーパー”なポテンシャルを披露する。
そしてその分厚いラインナップ中でのトップエンドシリーズが、この『リファレンス・シリーズ』である。
なお当シリーズはさらに3グレードで構成されていて、シリーズ内でのレンジが相当に広いことも特長としている。最上位モデルは『GZPA Reference 2/4PURE』。その税抜価格はなんと、2chモデル、4chモデルともに圧巻の72万円。以前に試聴取材を行いその性能を確認ずみだが、価格も性能も最高レベルを有する逸品中の銘品だ。さて当機は、それと同一シリーズと言える資質を備えているのか否か…。
ところで『リファレンス・シリーズ』の各機には、他にはないスペシャルな機能も備えられている。それは『バリアブルバイアスセッティング機能』。要は、駆動方式を"AB級動作"から“A級動作”へと無段階で近づけられる、という機能である。これを操作することでアイドリング電流値が変化するので、システムの状況によって使い方を見極める必要があるが、鳴らし方を好みに応じて変更できるのはうれしい限りだ。楽しみ方の幅が広い、懐の深いパワーアンプに仕上げられている。
では、インプレッション・リポートへと進んでいこう。
なお今回は素の性能を確かめるべく、「バリアブルバイアスセッティング機能」はミニマムとし、AB級側にして試聴した。
結論から入ろう。当機の音は紛れもなく最上位グレードの音であると、しみじみと感じ取れた。質感がとにかく上質。コクがあって、濃厚。そして余韻の消え際の美しさもなんとも言えない。音楽の世界に引き込む力がすごぶる高い。
低音のどっしり感にも好感が持てた。ハリがあり、重みがあり、伸びもある。サウンドをがっちりと下支えしていて、さすがは「グラウンドゼロ」と思わせる充実した低音が楽しめた。
中域の厚みも良好で、高域の繊細さも十二分。バランスも至ってナチュラルでスムーズだ。
もちろん、最上位機種の性能が圧倒的であるので、それとの違いは相応にあってしかるべきだが、同価格帯の製品の中では、これならではの光を存分に放っている。音の質感を重視する向きには、ぜひとも聴いていただきたい1台だ。お薦め度は高い。
◆冷静、かつ正確な音色。それでいて1音1音の味わいも深い…。
次には、こちらを試聴した。まずはスペックをご覧いただこう。
- ☆RS オーディオ RS Revelation A40(税抜価格:25万円)
- ●仕様:Class-A/B 4ch(4/3/2ch)パワーアンプ
- ●定格出力:100Wx4(4Ω)、150Wx4(2Ω)、300Wx2(4Ωブリッジ) ●周波数特性:5Hz-50kHz ●SN比:105dB ●入力感度:200mV-4V ●クロスオーバー:ハイパス50Hz-250Hz(-12dB/oct)、ローパス50Hz-250Hz(-12dB/oct) ●サイズ(幅×奥行×高さ):210×390×60mm ●質量:4.52kg ●実装ヒューズ容量:30Ax2
- ◎バリアブルフェイズコントロール搭載(0-180°)
なお、当機が属する『レベレーション・シリーズ』は、「RS オーディオ」をより気軽に選べるグレードとして2015年に新登場したシリーズだ。パワーアンプには当機と2chモデルである『RS Revelation A20』(税抜価格:23万円)の2機種があり、ともにハイエンドユーザーに熱烈に支持されている。
機能面での注目点は、「バリアブルフェイズコントロール機能」。ハイエンドカーオーディオのサウンドチューニングでは、「位相」合わせがキモとなるのだが、それを“バリアブル”に調整できるというのはメリットとして大きい。実戦において強さを発揮する、使いやすいハイエンドパワーアンプとなっている。
また、カラーリングがビビッドである点も、人気の一因だ。システムに組み込んだときの満足度が、ルックス面でも担保されている。
さて、音はどうなのだろか。
テストトラックを流してまず感じたのは、「音色の正確さ」だ。これは「RS オーディオ」ならではの特長と言っていいだろう。当ブランドの製品は総じて、サウンドが冷静で、そしてとことん正確だ。原音再生に徹し、ありのままに音楽を表現することを得意とするブランドであるのだ。当機のサウンドも「RS オーディオ」の面目躍如。至ってクールに、Hi-Fiサウンドを紡ぎ出す。
サウンドステージの立体感の表現も申し分ない。解像度が高く、情報量が多いからこその再現性だろう。リアル度、臨場感、ともに一流だ。
そして、1音1音の味わいもしっかりと表現できている。クールであるが、味も濃い。ただしそれは調味料の味ではなく、素材の旨味だ。噛むほどに味わいが深くなる、そんな印象だ。
誇張を嫌うユーザーには特に、当機をおすすめしたいと思えた。音楽ソースに収められている情報を、もれなく正しく引き出したいと考えるならば、当機を候補に入れておかないと、後々後悔することになりかねない。実力は確かだ。
さて、インプレッション・リポートは以上ですべてだ。20万円前後の“ハイエンド4chアンプ”が豊作であることを、今回、改めて確認できた。上を見ればキリがないのがカーオーディオではあるけれど、このクラスのモデルを手にできれば、それが1つのゴールとなり得る。そのくらい、満足度の高い製品ぞろいだった。いつかはハイエンドパワーアンプを、と思っているならば、20万円前後の4chパワーアンプに、ぜひぜひご注目を。
《text:太田祥三》