良機が居並ぶ激戦の“ミドル・ハイ・クラス”にあるパワーアンプの比較試聴を行った。その、インプレッションリポートを、4回にわたりお届けしようとしている当特集。今週はその3回目だ。エントリーした6機種中の最後の2台の実力を、詳細にお伝えする。
最初に、取り上げた6機種の顔ぶれをおさらいしておこう。
1『MTXオーディオ・XTHUNDER 125.4』(税抜価格:8万4000円)、
2『JLオーディオ・XD400/4v2』(税抜価格:10万円)、
3『MMATSプロオーディオ・MPA4150』(税抜価格:10万円)、
4『レインボウ・Germanium Four』(税抜価格:12万円、
5『グラウンドゼロ・GZNA 4330XII』(税抜価格:12万円)、
6『ロックフォード フォズゲート・T600-4』(税抜価格:12万円)、
以上の6機種だ。
なお、今回の試聴記は、3名のテスターによる対談形式で展開している。特集の最終週には、テスター3名による“ベストバイ”も発表する予定だ。テスターは以下の3名だ。イース・コーポレーションの、Super High-end 推進事業部 兼 Monster Car Audio 国内事業部の関口周二さんと、当サイトの藤澤純一編集長、そしてライターの私、太田祥三が務めた。
試聴会場は、6機種すべての正規輸入代理店であるイース・コーポレーションの試聴室。試聴システムについては、連載1回目の記事をご参照いただきたい。
◆「グラウンドゼロ」の本領発揮! 解像度が高く、輪郭がシャープで、キレ味も鋭い。
まずはこちらのモデルについてのリポートから。
- ☆『グラウンドゼロ・GZNA 4330XII』(税抜価格:12万円)
- ●仕様:4ch(4/3/2ch)パワーアンプ ●定格出力:200W×4(4Ω)350W×4(2Ω)550W×4(1Ω)700W×2(4Ωブリッジ)1100W×2(2Ωブリッジ) ●周波数特性:5Hz~38kHz(±1dB) ●サイズ(幅×奥行×高さ):560×293×67mm
パワーアンプも、年々層が厚くなっている。現在のラインナップは計6ラインまで拡張した。スーパーハイエンドモデルも含む『リファレンス・シリーズ』をフラッグシップに、SPL専用のモノchアンプ計4種からなる『GZPA-HCX・シリーズ』が続き、その下に3rdグレードとなる、当機が属する『GZNA・シリーズ』がある。
当シリーズの特長は、ハイカレント・ハイパワー設計が施されていること。1Ω接続時には、定格出力550W×4という数字を叩き出すとのことなのだが、音のほうは果たしてどうなのか…。
藤澤(以下、藤)「とても良いです。グラウンドゼロの本領が発揮されていますね。キリッとした輪郭、十分な音数、立体表現力と解像度の高さ、それぞれが好印象でした。余韻が消えゆくグラデーションも美しいですね。パリッとしたスーツを着るカッコいい社会人。そんな感じです(笑)」
関口(以下、関)「外観のイメージや、ハイカレントモデルであることから、パワーでごりごり押すタイプと思われがちですが、至って自然なHi-Fiサウンドが楽しめましたね。レンジも広いし、鮮度感も高い。ついついボリュームを上げたくなる、そんなサウンドだったと思います」
太田(以下、太)「1音1音にハリがあり、そして芯もあります。低域のパワー感も心地良かったです。さすがはグラウンドゼロと思わせる鳴りっぷりでした。そして高域は繊細で、中域の厚みも十分。その上でキレ味も鋭い。相当な実力機ですね」
関「敢えて弱点を挙げるならば、筐体が大きいことでしょうね(笑)。カスタムインストールをするときにはむしろ武器になるでしょうけれど、ヒドゥンしたいとなると、ちょっと手を焼くかもしれません…」
藤「しかし、そのことを割り引いても、欲しいと思わせる魅力を持っています。好きな音です。気に入りました」
期待を裏切ることなく、「グラウンドゼロ」らしいサウンドが堪能できた。3名から、サウンド面での不満の声は一切上がらず、むしろ賞賛ばかりが口をついた。当機のコストパフォーマンスの高さを疑う余地はない。上級機の良さをしっかりと受け継いでいる。いよいよ、“ベストバイ”の本命登場か…。
◆音に芯があり線も太い。レンジの広いHi-Fiサウンドを、安定感たっぷりに奏でる!
最後に登場するのは、ロングセラーモデルであるこちらだ。
- ☆『ロックフォード フォズゲート・T600-4』(税抜価格:12万円)
- ●仕様:4ch(4/3/2ch)パワーアンプ ●定格出力:100W×4(4Ω)150W×4(2Ω)300W×2(4Ωブリッジ) ●周波数特性:20Hz~20KHz(±0.5dB) ●S/N比:86dB ●サイズ(幅×奥行×高さ):207×379×54mm
初登場が2007年でありながら、未だに売れ続けているという事実に驚きを禁じ得ない。なお、当機が属している『パワーシリーズ』は、現在は9機種で構成されているのだが、その中で07年当初から入れ替わらずに残っているモデルは4機種。当機もそのうちの1台だ。07年からガワも中身も変わっていないのにも関わらず、変わらぬ存在感を放ち続けているのである。
デザインも秀逸だ。古さを感じさせるどころか、むしろ洗練された印象を与えてくれる。独特の高級感もある。
さて、音の良さは確認ずみではあるのだが、ここまで多くのモデルと聴き比べられる機会も少ない。比較してのインプレッションはどうだったのかと言うと…。
太「安定していますね。ドライな印象とウォームな印象とのバランスも絶妙で、広く好まれる音色だと感じました。高域の緻密さ、中域のハリと充実感、低域のどっしり感、これらのバランスもまた絶妙です。売れていることがすんなりと腑に落ちます。名機ですね」
藤「丁寧な表現力でトーンバランスもフラットです。さらには、音に肉厚感も感じます。にも関わらず重過ぎないのは、解像度の高さゆえでしょうね。低域の深い所でも解像度を保っています。さすがです」
関「線が太く、濃密な音を奏でてくれます。レンジも広くて、低域から高域までバランスの取れたHi-Fiサウンドだと思います。小さい音で聴いてもメリハリがしっかり出ていましたし、良さが色褪せていませんね」
太「見た目的にも個性があり、派手なインストールでも、シックなインストールでも映えますよね」
関「何よりコンパクトサイズがうれしいですね。”DTM(ダイナミックサーマルマネジメント)”テクノロジー採用のお蔭もあって、このクオリティにしてこのサイズで収まっていることも評価に値すると思います。総合力の高い製品です」
人気モデル『T600-4』の実力を再確認できた。最新の他ブランド機と比べても、決して負けていない。そろそろ新世代モデルの登場を期待したい気持ちはあるが、いつまでも残っていてほしい、という気にもさせてくれた。音楽を正確に、かつ、魅力的に再現してくれる実力機だ。
これにてエントリー機すべてのインプレッション・リポートをお伝えし終えた。来週はいよいよ、“ベストバイ”を発表したいと思う。それぞれが価格に見合う性能を有していたことは間違いなく、各機が高評価を集めていたのだが、その中にあってテスター各人が、これ、と思った機種はどれなのか…。乞うご期待!
《text:太田祥三》