今月からは、上級モデルを1つ1つ取り上げ、機種ごとの「サウンドチューニング能力」を分析せんと試みている。各機ごとでできることに違いはあるのか、それぞれの実力はいかほどなのかを、じっくりと検証していこうと思う。
まず取り上げているのは、『ダイヤトーンサウンドナビ・NR-MZ100』。当機にはダイヤトーンだけが実現している、「マルチウェイタイムアライメント」というスペシャル機能が搭載されている。今回は、これがどのような機能なのかを詳しく解説していく。
先週は、一般的な「タイムアライメント」機能について解説した。それに対してダイヤトーンの「マルチウェイタイムアライメント」はどのように異なっているのかと言うと…。
通常のハイエンドシステムにおいての「タイムアライメント」では、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)内で音楽信号を帯域分割(クロスオーバー)し、その後で別chに分けられたそれぞれを個別にコントロールしていく。しかしダイヤトーンの「マルチウェイタイムアライメント」では、別chに分けずとも、トゥイーター帯域の音とミッドウーファー帯域の音それぞれに、個別にタイムアライメントをかけることができる。
トゥイーター帯域の音と、ミッドウーファー帯域の音をDSP内で一旦分割し、個別に「タイムアライメント」をかけるのだが、それぞれの信号を同一chの中で伝送することが可能なのだ。そしてその信号はスピーカー手前にある「パッシブクロスオーバーネットワーク」でリアルに帯域分割され、そこで初めてトゥイーター用の信号とミッドウーファー用の信号とに分けられる。
かくして、トゥイーターから発せられる音と、ミッドウーファーから発せられる音は、異なったタイミングで発音され、リスナーの耳には同一タイミングで到達する。結果、リスナーは、それぞれのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状態となり、ステレオイメージを正しく感じ取ることができる、というわけなのだ。
これが、ダイヤトーンの「マルチウェイタイムアライメント」の仕組みだ。
さて次週は、「マルチウェイタイムアライメント」によってもたらされるメリットについて解説していこう思う。次週もお付き合いいただけたら幸いだ。
《text:太田祥三》