カーオーディオにおいての楽しむべき1要素である「サウンドチューニング」についての、さまざまなノウハウをお伝えしている。今週も、“DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)”を使った「クロスオーバー調整」のやり方について解説していく。
今週は一旦、状況を整理しておこうと思う。とにかく「クロスオーバー調整」は難しいのだが、なぜに難しいのか。その理由を明確にしておこうと思うのだ。難しさの理由が理解できれば、その後の調整も上手くいく。
さて。「クロスオーバー調整」を難しくさせている原因は何なのか。それは「スロープ」にある。トゥイーターとミッドウーファーの担当範囲を決めるにあたって、「2kHzから上がトゥイーターの担当で、そこから下はミッドウーファーの担当ね」という指示の出し方ですむのなら、話は至ってシンプルなのだが、実際はそうではない。
トゥイーターのカットオフ周波数を2kHzと設定したとしても、実のところトゥイーターからは、それよりも低い音も聴こえてくるのだ。その理由は、信号をカットオフするにあたっては常に、「スロープ」を伴わなければこれを行うことができないから、である。
では、「スロープ」とは何なのか。
仮に「スロープ」が「マイナス12dB/oct」という値だったとしよう。これは、「音階が1オクターブが下がったときに、音量が12dB減少する減衰率である」ということを意味している。1オクターブ下の音とは、半分の周波数の音である。カットオフ周波数が2kHzだったとしたら、その半分は1kHz。そこまで下がる中で12dBの減衰率でもって、トゥイーターは2kHzよりも低い音も出し続けているのだ。
ミッドウーファーでも同じようなことが起こっている。ミッドウーファーのカットオフ周波数が2kHzで、同じく「スロープ」がマイナス12dB/octだったとしよう。2kHzの1オクターブ上の音とは、4kHzの音である。つまりミッドウーファーは、音域が4kHzに到達するときに音量がマイナス12dBとなる減衰率でもって、2kHzよりも高い音も出し続けているのだ。
つまり、2kHzの前後の音は、トゥイーターからもミッドウーファーからも出ているのである。このことが、調整を難しくしてしまう原因となるのである。
クロスオーバー付近の音が2箇所から出てくると、そのあたりの音だけが不自然に盛り上がった状態となってしまう。さらには、音が2重になる、という別の弊害も発生する。
よって、「クロスオーバー調整」においてのキモは、「重なる音を、いかに自然に聴かせるか」。ここに集約されてくる。
今週はここまでだ。次週はさらに核心に迫っていく、次週もお読み逃しなく。
《text:太田祥三》