クルマの中で良い音を楽しむための1つの“鍵”となる「サウンドチューニング」。そのノウハウを1つ1つ詳細に解説している当コーナー。先月から今月にかけては、「クロスオーバー」の操作方法をご紹介している。今週からはいよいよ、上級者向けの内容に足を踏み入れる。
先週の記事の最後で予告させていただいたとおり、今週からは「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)」を用いて行う、フロント2ウェイスピーカーの「クロスオーバー調整法」を解説していこうと思う。
最初に、「クロスオーバー調整」の目的について触れておきたい。
主たる目的は、「スピーカーの性能を引き出すこと」だと考えよう。ゴールは「良い音にすること」であるわけだが、良い音を得るためには、使用するスピーカーにベストなパフォーマンスをしてもらう必要がある。「クロスオーバー調整」は、そのための調整項目であると心得よう。
では、調整方法を解説していく。始めにすべきは、トゥイーターとミッドウーファーの“実力を見極める”こと、である。ではどのようにそれを行うかと言うと…。
まずはカタログや取扱説明書を見て、トゥイーター、ミッドウーファー、それぞれの「周波数特性」(または「使用可能周波数帯域」)を確認すべし。
その数字は、「クロスオーバー調整」を行う上での1つの目安となり得る。トゥイーターとミッドウーファーともに、その範囲内が“美味しいところ”のハズである。それを一応確認した上で、自分の耳で、各ユニットの“実力を見極める”作業に入ろう。始めにトゥイーターから。手順は以下のとおりだ。
[手順1]左右どちらかのトゥイーターだけから音が鳴るように、他のスピーカーにミュートをかける。
[手順2]ミュートをかけていないトゥイーターのクロスオーバー調整の“スロープ”(減衰率)をとりあえず、もっとも急峻なものに設定。
[手順3]スロープを固定したまま、「カットオフ周波数」の値を、上目から徐々に下げていく。そして、嫌な音が聴こえてくるポイント(境目)を探っていこう。
ただし。トゥイーターについては、最初に確認した「使用可能周波数帯域」の下限よりも少々上で、この確認作業を終了させよう。なぜならばトゥイーターには、低い音が入力されると簡単に壊れてしまう、という特性がある。どのくらいの信号が入ると壊れるのかは、壊れてみないとわからない。なので、セーフティを重んじて、“「使用可能周波数帯域」よりも低い音がトゥイーターに入る前に”、この作業を止めるべきなのだ。
そして、そこまで下げても嫌な音が聴こえてこなかったらそれでOKだ。逆に、そこまで下げ切るよりも前に嫌な音が聴こえてきたら、その値をメモしておこう。そうして、“カットオフ周波数”は、その値よりも上にすべき、ということを頭に入れておこう。
今回の解説はここまでとさせていただく。この続きは次週に。
《text:太田祥三》