カーオーディオの醍醐味の1つである、“サウンドチューニング”についてのあれこれを解説している当連載。今月のテーマは「タイムアライメント」。今週はまず、この機能の「目的」から解説していく。
結論から入ろう。「タイムアライメント」とは、「理想的なリスニングポジションにいるかのような状況を、擬似的に作り出す」ための機能だ。
なぜこのような機能が必要なのかを解説していこう。そのためにまずは、“ステレオ”の原理についてご説明しておきたい。
“ステレオ”とは、音楽信号を左右のchにわけて録音し、それを左右2本のスピーカーで再生するシステムである。そうすることでリスナーは、音楽をリアルに、立体的に感じ取ることができる。
ただ、“ステレオ”の効果を最大限感じ取るためには、もう1つ重要な決まりごとがある。それは、「左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取る」というもの。これもまた、ステレオの原則の1つなのである。
しかし、クルマの中ではそうはいかない。右ハンドルのクルマなら、右のスピーカーが近くにあり、左のスピーカーが遠くにある。センターハンドルのクルマでない限り、左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取ることは不可能だ。
この状況に対処するためには、左右の音量バランスを整えることも1つの解決策として有効だ。しかし、そこには限界がある。なぜかというと、音が到達するタイミングのズレを修正できないからだ。左右のスピーカーの距離差が到達タイミングのズレを生む。そのズレが、ステレオイメージを崩してしまうのだ。
それに対処することを目指して開発されたのが、「タイムアライメント」という機能だ。近くのスピーカーが発する音に“遅延(ディレイ)”をかけて、リスナーがあたかも左右のスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況を作り出す、という次第なのだ。
機能の目的と仕組みは以上だ。次週はもう1歩踏み込んで、ハイエンド・カーオーディオにおける「タイムアライメント」について解説していく。次週もお読みいただけたら幸いだ。
《text:太田祥三》