チューニングカーのエンジンルームで存在感を放つむき出し型エアクリーナー。通称「キノコ型エアクリーナー」と呼ばれる人気の吸気チューニングパーツだが、取り付け方によっては逆にパワーダウンを招くこともある。その理由と効果を引き出すための対策を解説する。
◆むき出し型エアクリーナーのメリットとは? 吸気抵抗の低減でレスポンス向上を狙う
チューニングカーの吸気系パーツとして一世を風靡したむき出し型エアクリーナー。キノコ型エアクリーナーとも呼ばれるこのパーツは純正の密閉型エアクリーナーボックスを取り外し、大口径のフィルターをインテークパイプに接続する構造が特徴だ。フィルター周囲の広い面積から空気を取り込むことで吸気抵抗を減らし、エンジンに必要な空気を効率よく送り込むことを狙っている。
純正のエアクリーナーボックスは吸気音の低減や異物の侵入防止、吸気温度の管理などを考慮して設計されている。一方、むき出し型エアクリーナーは吸気経路の制約を減らし、フィルター全周から空気を取り込めるのが魅力だ。吸気系全体の設計が適切であれば吸気抵抗の低減が期待できる。
またインテークパイプとの接続部分にファンネル構造を採用するモデルも多い。空気が流入する際の抵抗を抑えてスムーズな吸気を促すことで、アクセルレスポンスや高回転域の伸び、ピークパワーの向上を狙う仕組みだ。ただし効果はエンジンの特性や吸気経路、ECUの制御によって異なり、エアクリーナーを交換するだけで必ずパワーアップするわけではない。
吸気音の変化も大きな魅力だ。純正の樹脂製エアクリーナーボックスには吸気音を抑える役割があるが、むき出し型に交換するとスロットル操作に連動した「シュコーッ」という吸気音が聞こえやすくなる。ターボ車では過給機まわりの作動音が強調される場合もあり、アクセル操作に合わせてレーシーなサウンドを楽しめる。マフラー交換とは異なる方向からスポーティーなフィーリングを演出できるのも人気の理由だ。
◆吸気温度の上昇がパワーダウンの原因に! むき出し型エアクリーナーの弱点
吸気抵抗の低減を狙えるむき出し型エアクリーナーだが、取り付け方によっては逆にエンジン性能を低下させる可能性がある。その最大の要因がエンジンルーム内の熱気を吸い込んでしまうことだ。
エンジンルームにはエンジン本体やエキゾーストマニホールド、ラジエーターなど多くの熱源が存在する。純正エアクリーナーボックスは外気を取り込むためのダクトを備え、熱気の影響を受けにくい構造になっていることが多い。しかしむき出し型エアクリーナーをエンジンルーム内にそのまま設置すると、高温になった周囲の空気を吸い込んでしまう場合がある。
吸気温度が上昇すると空気密度が低下し、同じ体積でもエンジンに取り込める酸素の量が少なくなる。さらに車種や運転条件によってはECUがエンジン保護のために点火時期を遅らせる遅角制御などを行い、結果として出力が低下することもある。
特に注意したいのは外気温が高い夏場や渋滞時、サーキット走行などエンジンルーム内に熱がこもりやすい状況だ。吸気抵抗が減っていても高温の空気を取り込んでしまえば本来期待していた性能を発揮できない。走行条件によっては純正エアクリーナーボックスを使用した方が安定したパフォーマンスを得られる可能性もある。
では吸気温度が上昇すると空気密度はどれほど変化するのだろうか。気体の状態方程式から考えると、同じ圧力と体積で乾燥空気を比較した場合、20℃の空気に対して80℃の空気は密度が約17%低くなる。つまり同じ体積に含まれる酸素分子の数も約17%少なくなる計算だ。
もちろん実際のエンジン出力がそのまま17%低下するわけではない。吸気圧力やエンジン制御などさまざまな条件が関係するものの、吸気温度がエンジン性能に大きく影響することは理解できるだろう。
◆遮熱板とフレッシュエア導入が重要! 吸気温度を抑えて性能を引き出す
むき出し型エアクリーナーのメリットである低い吸気抵抗を生かしながら、熱気の吸い込みを抑えるために重要なのが遮熱対策とフレッシュエアの導入だ。
まず取り組みたいのがエンジンやエキゾーストマニホールド、ラジエーターなどから発生する熱の影響を抑えること。アルミ製やカーボン製などの遮熱プレートを設置したり、エアクリーナーの周囲をボックス形状のカバーで囲ったりする方法が代表的だ。熱源からの放射熱やラジエーターを通過した温風が直接フィルターに当たるのを防ぐことで、吸気温度の上昇を抑えやすくなる。
さらに重要なのがエンジンルーム外からのフレッシュエア導入だ。フロントグリル周辺などから外気を取り込めるようにダクトやホースを設置し、エアクリーナー付近まで比較的温度の低い空気を導く。遮熱板と外気導入ダクトを組み合わせることで吸気抵抗の低減と吸気温度対策を両立しやすくなる。
ただしダクトの形状や長さにも注意したい。無理な曲げや極端に細い配管はかえって吸気抵抗を増やす原因になる。また開口部の位置によっては雨水や異物を吸い込むリスクもあるため、走行時の空気の流れや排水性まで考慮した設計が求められる。
最近ではこうした問題に対応するため、専用エアクリーナーボックスとセットになった吸気系パーツもラインアップされている。カーボン製などのボックス内に高効率なエアフィルターを収め、エンジンルーム内の熱気を遮断しながら外気を取り込む構造だ。むき出し型の吸気効率と純正密閉型の温度管理という双方のメリットを狙った製品として注目したい。
すでにむき出し型エアクリーナーを装着しているものの遮熱対策が不十分な場合はプロショップに相談するのも有効だ。車両に合わせた遮熱板のワンオフ製作や外気導入ダクトの追加など、エンジンルームの構造に適した対策を施すことができる。
さらにOBDなどを利用して走行中の吸気温度を確認できれば、対策前後の効果を比較することも可能だ。単にパーツを交換するだけでなく吸気温度や走行条件を確認しながら細かなチューニングを積み重ねることが、安定したパワーとレスポンスを引き出す近道となる。
◆むき出し型エアクリーナーは車検に通る? 交換時に確認したい注意点
エアクリーナー交換は比較的取り組みやすい吸気チューニングのひとつだ。マフラーとは異なり、エアクリーナー単体の交換に対して専用の事前認証を取得する仕組みは基本的になく、適切に装着されていれば車検に対応できる。
ただしどのような製品でも無条件に車検に通るわけではない。エアクリーナーや配管が確実に固定されていることはもちろん、必要なセンサーやブローバイガス還元装置などの機能を損なわないことも重要だ。吸気系の変更によってエンジンチェックランプが点灯したり、排出ガスが基準を満たさなくなったりすれば車検に影響する可能性がある。
またエアフロセンサーを備えた車両では吸気経路の変更によって空気流量の検出特性が変化する場合もある。アイドリング不調や燃調のずれを防ぐためにも車種専用設計の製品を選び、必要に応じて専門店で適合確認やセッティングを行いたい。
手軽に交換できるイメージが強いむき出し型エアクリーナーだが、本来の性能を発揮させるには吸気抵抗だけでなく吸気温度や空気の流れ、エンジン制御まで考慮することが重要だ。遮熱とフレッシュエア導入を適切に組み合わせれば、エンジンの持つポテンシャルを引き出す有効な吸気チューニングとなるだろう。


