近年のクルマでは内外装パーツの固定に樹脂クリップが多用されている。DIYで壊さず外すため種類と脱着の基本を整理した。
◆樹脂クリップが増えた理由とDIYで注意したいポイント
かつてのクルマはボルトやビスなど、ネジを使ったパーツ固定が一般的だった。しかし近年の車両では、各種パーツの固定に樹脂クリップを使うケースが増えている。
外装であればインナーフェンダーの固定やバンパー下部、ワイパー周辺の樹脂パーツ固定などに用いられる。内装ではドア内張りやルーフライナーの固定、ダッシュまわりの各部パーツ固定など、かなり多くの部分に使われている。
ドラレコやオーディオの配線を通す際に内装を外したことがあるユーザーなら、その存在を知っているだろう。このようにすっかりポピュラーになっている樹脂クリップだが、パーツ分解では外し方がわからず厄介に感じたDIYユーザーも少なくないはずだ。
樹脂クリップが使われる理由には、軽量化やコスト面、組み立て作業の効率化、整備時の脱着しやすさなどがある。一方で、経年劣化で割れやすくなる、形状が多く見分けにくい、再使用できないものがあるといったデメリットもある。そのためDIYでは、壊さない外し方だけでなく壊れた場合の交換準備まで考えておくことが重要になる。
◆まずは樹脂クリップの構造を見極める
脱着が必要になった際に慌てないよう、樹脂クリップの基礎知識を知っておくと良いだろう。樹脂製のクリップにはさまざまな種類とサイズがあり、見極めがまず厄介だ。
もちろんクルマメーカーとしては使用する箇所に合わせ、強度や脱着の容易さも含めて設計しているのだろうが、初めて外すユーザーには脱着のメカニズムが外見からわかりにくく、外し方で迷ってしまうケースが多い。
しかし整備性を考えた樹脂クリップは、比較的容易に外せるよう設計されている。無理にこじってクリップを破壊したり、周囲のパーツを傷つけたりしないためにも、脱着方法を知っておくことでDIY作業をスマートに進めたい。
◆ロックピン引き抜きタイプは中央のピンを浮かせる
では、最初に多くの種類がある樹脂クリップの代表例から紹介しよう。かなり多く使われているのがロックピン引き抜きタイプの樹脂クリップだ。クリップの頭の中央部分が丸い皿状の別体パーツになっていて、その周囲に2~4カ所程度の溝が掘られているタイプがこれにあたる。
その名の通り、中央の皿部分がロックピンになっており、上に引き上げることでロックが解除される仕組みだ。ピンの頭にある溝に工具を差し込み、軽くこじることでロックを解除する。逆の手順で組み立てて固定できるので、再利用も可能なクリップだ。
ただし、ピンだけを浮かせるべきところでクリップ全体を無理に引き抜くと、ロック部分が変形したり周囲のパネルを傷つけたりすることがある。まず中央ピンの動きを確認し、ロックが外れてから本体を抜くのが基本だ。
◆プッシュリベットやネジ式クリップは解除方法が異なる
次に、プッシュリベットと呼ばれる樹脂クリップもある。こちらはクリップ頭の中央部を先の細い工具などで押し込むことで、カチッとロックが外れる構造だ。小さなパーツを固定している小型クリップなどに用いられるケースがある。
また、クリップの頭の部分がネジになっていて、工具で回すことでロックが解除される樹脂クリップもある。いずれもロック解除の方法さえ知っていれば脱着は非常に容易なので、形状に合わせたロック解除の方法を覚えておきたい。
見分ける際のポイントは次の通りだ。
・中央に浮かせるピンがある場合はロックピン引き抜きタイプ
・中央を押し込む構造ならプッシュリベット
・頭部に十字溝やネジ形状がある場合はネジ式クリップ
・軸にギザギザがありロック機構が見えない場合は差し込み固定タイプ
この比較軸を知っておくだけでも、作業前の迷いはかなり減らせる。
◆トリムクリップやブラッシュクリップは破損前提で準備する
ここまではロック機構を持つタイプの樹脂クリップだったが、トリムクリップやブラッシュクリップと呼ばれる樹脂クリップは、ロック機構を持たない。クリップの軸部分がギザギザやテーパー状になっていて、差し込んだ状態で固定されるパーツだ。
トリムクリップは代表的な例として、ドアの内張りをインナーパネルに固定する際に用いられている。一方のブラッシュクリップは、ルーフライナーを天井に固定するクリップとして用いられるのが代表的だ。
いずれもロック機構付きの樹脂クリップとは異なり、力を加えて引き抜くことで取り外すパーツとなる。そのため取り外す際にクリップが破損することもあるが、樹脂クリップの破損はあらかじめ覚悟した上で、交換パーツを用意してから作業を始めると良いだろう。もともと再使用不可の樹脂クリップも多い。
特に古い車両や寒い時期の作業では、樹脂が硬くなって割れやすい。作業前に室内やパーツ周辺を少し暖める、力を一点に集中させず周囲を少しずつ浮かせる、外したクリップは再使用可否を確認する、といった対策が有効だ。
◆専用工具を使うと内装外しの失敗を減らせる
樹脂クリップの種類がわかったら、取り外し方法がある程度推測できるようになる。そこで用意したいのが、クリップ外し用の工具だ。専用工具としてはクリップクランプやクリップクランププライヤーなどが用意されている。
クリップクランププライヤーは、プライヤー状の工具先端部でクリップのトップ部を挟み込み、ロックを外して引き抜く作業が行える工具だ。一方のクリップクランプは、工具の先端がクワ状になっている内張り外しとも呼ばれる工具。二股に分かれたクワ状の先端部を樹脂クリップのトップ面に引っかけ、こじって引き抜く。
いずれの工具も、クリップの構造や取り付け場所に合わせて用意すると作業性が上がる。めったに使わない工具なので用意するハードルは高いものの、マイナスドライバーやプライヤー、ラジオペンチなどで代用すると、なかなかうまく作業できない。思い切って専用工具を用意するのが、DIY成功の秘訣だろう。
ただし専用工具を使っても、力任せにこじればパネルに傷が入る。養生テープで周辺を保護し、工具を差し込む角度を確認しながら少しずつ力をかけることが大切だ。
◆交換用クリップを用意しておけば破損しても慌てない
さらに樹脂クリップの取り外し作業を伴う内外装パーツの脱着を行う場合は、樹脂クリップの破損をある程度見込んでおこう。必ずしも再利用できるわけではない。
しかし、そんな場合でも安心だ。カー用品店の売り場に行くと、各種の樹脂クリップがズラリと用意されているケースも多くなっている。適合する種類のパーツをあらかじめ用意しておけば、万が一の破損でも慌てずに済む。
トヨタ用、日産用などメーカーごとの補修パーツに加え、樹脂クリップの構造やサイズによって多種多様な製品が用意されている。選ぶ際は、メーカー名だけでなく穴径、首下長、頭部形状、固定するパネルの厚みなども確認したい。外したクリップを現物として持参すれば、近い形状の補修用クリップを選びやすい。
また、安価な汎用品は便利だが、固定力やサイズが純正品と完全に同じとは限らない。外装の下まわりや風圧を受ける部分、走行中に外れると危険な箇所では、純正部品や適合確認済みの補修部品を選ぶと安心だ。
◆樹脂クリップの基本を知ればDIY作業はもっと快適になる
クルマのDIYによるパーツ脱着をスムーズにするには、樹脂クリップのスマートな脱着が欠かせない。無理に壊してしまう前に、まずは樹脂クリップの構造や種類を推測してから作業を始めよう。
構造がわかっていれば、驚くほど脱着は容易になり、作業も快適になる。内装外しやドラレコ取り付け、オーディオ配線、バンパーまわりのメンテナンスなど、DIYでクルマに触れる機会が多いユーザーにとって、樹脂クリップの知識は不可欠な基礎知識となる。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に、出版社の編集者へ転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務した。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請け負う。現在もカーオーディオをはじめとしたライティングを中心に活動中。
《text:土田康弘》