ブリヂストンの新カテゴリーブランド「FINESSA」はドライ路面で好印象だった。ではウェット性能はどうなのか。試乗会で確かめた。
以前、FINESSAはアレンザLX200とともにドライ路面で試した。その印象はかなり良かったが「ウェット路面ではどうなのか」という疑問が残っていた。昨今は各タイヤメーカーがウェット性能に注力しており、タイヤ選びでも重要なカギになる。
◆ブリヂストン新ブランド「FINESSA」の狙い
そんな声が多かったことから、先ごろFINESSAのウェット性能を体験する試乗会が行われた。場所は栃木にあるブリヂストンのプルービンググラウンド。四輪車はもちろんバイクやトラックなどの商用車のテストも行う重要拠点だ。
テストフィールドはウェット路面のハンドリングコースとスキッドパッド、ドライ路面の総合路が用意された。テストコースの利点をうまく生かした内容となる。
その前にFINESSAについて簡単に説明しておきたい。これはブリヂストンが新たに設定したカテゴリーのブランドだ。対象は軽自動車とコンパクトカー、さらにセダンとミニバンまでとかなり広い。特に日本の乗用車マーケットの半分近くを占める軽自動車への期待は大きいだろう。タイヤ館やコックピットなどブリヂストンの販売ネットワークを生かせる点も強みになる。サイズ展開もそうした車種をイメージさせる14インチから19インチで、195/50R19は言わずもがなプリウス用である。
◆摩耗後でも差が出たウェット旋回性能
では実際に走らせた印象だが、まずはスキッドパッドでそのパフォーマンスを体験した。試乗車はプリウス。タイヤは2万km相当の走行後を想定した摩耗状態のFINESSA HB01と新品のECOPIA NH200である。
まずはFINESSAから。しっかり濡れたベルジアン路面で定常旋回する。ベルジアン路面とはヨーロッパでよく見られる石畳状の路面のことだ。
ここでの違いは定常旋回できる速度に現れた。FINESSAの限界速度は時速30km。これを1km/hでも上回るとアンダーステアが出てどんどん膨らむ。28~29km/hではしっかりしているが、1km/h単位でクルマの姿勢が変わる。
対してECOPIAは23~24km/hあたりからラインが膨らみ始める。このあたりから舵の修正が必要になり、26km/hあたりでコントロールが効かなくなる。その違いは明らかだ。しかもFINESSAはグリップを失いながらも姿勢変化がゆっくりなので、そこからアクセルワークで元のラインに戻せる。この安心感はかなり有意義だ。
◆濡れた路面で安心感を生む排水性と接地感
次のウェットハンドリングコースでは新品のFINESSA HB01とECOPIA NH200Cを乗り比べた。試乗車はシエンタである。
ここではスタート時にアクセルを全開にした際の挙動と、コーナリング時の安定性を試したが両者の違いは明白だった。路面の捉え方、そこからトラクションが伝わる速さは明らかにFINESSAに軍配が上がる。ドライ路面と変わらないほどのグリップ感だ。
さらにコーナーでのライン取りもFINESSAはそれほど気を使わなくてすむ。初めは進入速度を大きく落としたが、それも必要ないことがわかった。操舵角が極端に大きくない限り慎重になる場面はない。
ではどうやってFINESSAはウェット性能を高めているのか。その仕組みの一つに排水性の良さがある。接地端のラグ溝を主溝側よりも太くすることで排水性を高めている。
排水性が良くないと速度が上がった際にクルマが浮き、タイヤと路面の間に水の膜ができる。いわゆるハイドロプレーニング現象だ。FINESSAはタイヤの溝を深くして排水性を高めることで、この現象を抑えている。これによりデータ上FINESSA HB01はECOPIA NH200より制動距離をおよそ15%短縮している。
◆ドライ路面では安定感と応答性を確認
最後はドライ路面での走り。ここではFINESSA HB01とECOPIA NH200Cで走った。クルマはN-BOX。40km/hでのスラロームとレーンチェンジ、突起物の乗り越えを体験した。
ただ、ドライではウェットほどの違いは感じなかった。ともに時速40kmくらいまでならグリップ力は高く、クルマは安定していた。ステアリングに対する応答性はFINESSAの方が少し良いという印象だ。
ただホンダ『N-BOX』のような重心の高いクルマはちゃんと走るものの、コーナーでのタイヤの接地性によって上屋の動きが変わる。少し揺さぶられる感覚だ。きっとトヨタ『プリウス』や『カローラ』では感じにくい挙動だろう。
そこにはタイヤブロックのサイプ形状を変えた効果が表れている。コーナーでタイヤに負荷がかかるとサイプが噛み合い、タイヤの剛性が上がって接地性を高める仕組みだ。
◆FINESSAは日常の安全性を底上げするタイヤ
以上が今回のタイヤテストの感想である。守備範囲の広い商品だけに、あらゆるシーンでの使われ方に対応しようとしているのがわかる。特にウェット性能はパフォーマンスの底上げに成功している。
パワーの大きくないクルマはアクセル操作が雑になりがちなので、タイヤの性能は重要だ。その意味でFINESSAは日常の安全性を高めるタイヤであることを理解した。
《text:九島辰也》