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【スズキ eビターラ 新型試乗】サイズ以上の乗り心地、やっぱり良く出来たBEVだった…中村孝仁

自動車試乗記

スズキ eビターラ Z 4WD全 36 枚写真をすべて見る

昨年、袖ケ浦のサーキットでプロトタイプのモデルに乗った、スズキのEV『eビターラ』。その出来に良さについては、その時に報告済みだが、今回は晴れて登録が完了した量産モデルに試乗した。

プロトタイプから量産モデルへの移行で、どこか変わった点があるかと尋ねたところ、基本的な部分での変更はなく、いわゆるアジャスト程度の手直しがされただけだそうだ。残念ながらそれがどの部分だったかはわからない。ただ、プロトタイプを撮影した時に、リアテールゲートにつく「All Grip」のエンブレムはなかったように思う。

◆長距離主体で乗るなら61kwh仕様のFWD

今回お借りしたのは、最上級の61kwhのバッテリーを搭載する4WDモデル。車両価格は492万8000円で、試乗車の場合、いくつかのディーラーオプションと2トーンの外装色がオプション扱いとなって、総額は507万1440円であった。

多くのメディアがCEVの補助金について言及していて、その額は実に127万円に及ぶから、このクルマを購入して補助金を引けば、実質380万円ほどで最上級モデルが購入できることになる。

しかし、このCEV補助金127万円の適用は、2026年3月31日までに登録が完了した車両に限定されるので、果たして納車までどのくらいに時間がかかるか不明だが、今すぐ購入したところで、満額受給は難しいかもしれない。そして補助金を受けた場合、4年間はクルマを保有する義務があって、それ以前に車両を売却した場合、補助金の全額、もしくは一部を返納しなくてはならないので、少なくとも補助金に関して言えば、ぬか喜びは避けたいものである。

試乗会当時はわからなかった航続距離に関しては、車重が重い4WD車の場合(189Kg)、WLTCモードで472kmとされているものの、我が家で一晩かけて100%充電を行っても、可能走行距離は最大でも342kmと表示され、最近のBEV車両としては、やや物足りない航続距離となっている(編集部注:可能走行距離表示は、直前の走行環境により異なる)。

このため、容量の少ない49kwh仕様の場合、メーカー公表値で433kmとされているので、実際は300kmに届くか否かというレベルと思われる。長距離主体で乗りたいユーザーには、520kmの航続距離を持つ61kwh仕様のFWDがおすすめとなる。

◆サイズ以上の大型車に乗っているかのような乗り心地

路面が平滑なサーキットではわからなかった乗り心地については、どっしり感があって落ち着いた動きに終始し、サイズ以上の大型車に乗っているかのような印象を受けた。サスペンションの動きも好ましく、不用意な突き上げや微振動などもなく、BEVらしい静粛性と相まって、高級車に乗っている印象すら受ける。このあたりの躾感は、やはりトヨタとシャシーを共同開発した成果といってよいのではないだろうか。

サーキットではさっぱりわからなかったモードの切り替えも、エコ、ノーマル、スポーツとあるうち、エコとノーマルは通常試乗時でもさほど大きな違いを感じさせない。エコにすると、発進時にまあ、少しだけやんわりとスタートするものの、パーシャル領域で加速をした場合は、ノーマルと大きな違いはない。

これがスポーツになると、発進からパーシャル領域でもしっかり違いを感じることになる。その分電費の方も多分悪くなる。もともと、スポーツ走行を楽しむようなクルマでもないし、個人的にはスポーツは不要に思えてしまった。

◆ガソリン車から乗り換えても違和感を感じさせない

動的な質感について少し話をしたい。すでに乗り心地についてと、加速感について話はした。ここでの動的質感とは、車両全体の動きについてである。

日産『リーフ』が初めて世に出てから15年、初期の電気自動車は、何とか既存のICE搭載車との差別化を明確にすべく、凄まじい加速感を売り物にしたり、キビキビ感を訴求したクルマが多かったように思えた。しかし今、BEVのメーカーが目指す方向性は、どうもICEと同じ動的質感を持つように仕向けたクルマが多くなったように感じる。

eビターラの場合も、静かで音もなく進む以外は、その加速感やキビキビ感はICEのモデルと何ら変わりなく、信号待ちから普通にアクセルを踏んで行くようなケースでは、驚くような加速感もないし、かつてのBEVが持っていたなんとなく急せかされるような動きも皆無で、ガソリン車から乗り換えても、何ら違和感を感じさせない。

世の中がいずれ内燃機関からBEVに移行する過渡期と(本当にそうなるかは未知数だが)とらえた場合、内燃機関にとって代わる移動手段として、できるだけスムーズな移行を可能にするために、あえてBEVの個性を減じているようにも感じられる。

ただそうはいっても、例えばイージードライブペダルなる、いわゆるワンペダル機能などはEV系独特なものである。この機能もサーキットではまったく試すことができなかったが、一般路において効力を最大にすると、ほぼワンペダルでの走行が可能であることが分かった。

もっとも、完全停止までは機能しておらず、スズキの場合もクリープ機能を残しているから、止まる寸前にはブレーキペダルを自ら踏んでやる必要がある。効力は3段階に調整可能で、ディスプレイ上で行うことができる。だが、イメージ的にはドライブモード同様、オンかオフがあればそれで事足りると思えた。

電動四駆モデルではあったものの、その仕様にのみ装備されるトレイルモードやヒルディセント機能などを試す機会はなかった。

◆いつもは賛否の分かれる家庭内でも「これ、いいわね」

最後にデザインについて少し話をしたい。デザインは個人の嗜好や好みによって評価が分かれるのであまり話をしないのだが、個人的にeビターラのスタイリングはとても好ましく思えた。固まり感が強いことや各フェンダーの張り感が力強さを想起させるし、内装の質感も十分に納得のいくものだ。いつもは賛否の分かれる家庭内でもeビターラについては女房から「これ、いいわね」の誉め言葉が…。

少し航続距離に不満はあるけれど、完成度はかなり高いと思える。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《text:中村 孝仁》

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