欧州自動車メーカーの新車装着タイヤとして、明らかに装着が多くなってきた印象がある「クムホタイヤ」。その性能は自動車メーカーの厳しい要件に認められるだけでなく、欧州自動車雑誌「Auto Bild」のテストにおいても、エクスタHS51というタイヤで総合1位の評価を得ているので疑う余地はない。加えて、日本のグッドデザイン賞を受賞するなど、性能面だけでなくデザイン性についても好評のようだ。
日本市場に向けて、サイズラインナップを拡大した『エクスタHS52』
クムホタイヤが、先代エクスタHS51の後継モデルとなる「エクスタHS52」に対し、日本車に合わせたサイズラインアップの拡大を図った。今回はHonda『フリードクロスター』に、純正サイズの185/65R15を装着して試すことに。
フリードクロスターはフリードをベースにアウトドアテイストを加えたモデルであり、専用デザインのバンパーやルーフレールを装備したり、広い車内と多彩なシートアレンジを持ち、低床設計で乗降性にも優れているので日常使いからレジャーまで幅広く活躍する。パワートレインの軽快さもあってキビキビと走る印象だが、ミニバン特有の腰高感を少し感じるので、この部分がどう変わってくるのかを楽しみだ。
ちなみにこのエクスタHS52は13インチから18インチまでの全30サイズをラインアップ。軽自動車やコンパクトカーからミニバン、そしてセダンやSUVにもマッチングさせることが可能だ。
フリードクロスターに装着したエクスタHS52をチェックしてみると、まず惹かれたのがサイドウォールのデザインだった。メリハリをつけた凹凸のロゴを配したほか、チェッカー模様に対しても凹凸や溝をうまくつけることで、明暗がくっきりと出るように見えるのだ。同じ黒でも違った見え方があり、そこで上質さを生み出しているところが面白い。
“走りも快適性も犠牲にしない”というコンセプトで作られたというトレッドパターンを見てみると、アウト側のブロックの1つ1つを大きくすることでドライ性能を、一方でイン側のブロックは細かくすることで、ウエット時の排水性を重視していることが受け取れる。センターにはかなりしっかりとしたリブが与えられている一方で、185サイズ以下には3本の太いストレートグルーブ(195サイズ以上は4本)が刻まれている。
センターリブに与えられた溝は、ブレーキング時には違いの溝が噛み合うことで剛性を保つ3Dインターロッキングサイプを備える。また、アウト側の3Dショルダーブロックにはエッジ部の面取りをすることで、振動抑制や摩耗性能にも気をつかっている。
街乗りから高速まで、速度域を問わずにしっかりとした接地感が好印象
早速エクスタHS52を街乗りしてみる。タウンスピードで感じることは、乗り心地が程よくマイルドに仕立ててあることだった。突起を乗り越えたとしても、嫌な突き上げを感じることなく、かといってその後いつまでも揺らぐようなところがないバランスの良さがあり、低速でのハンドリングも素直に反応してくれてドライバーの意のままに操ることが出来る。ノイズも程よくカットされているし、路面からタイヤ伝いに来る微振動もマイルドな感覚で、嫌な感触がほとんど伝わってこないのが好印象だ。
高速道路に乗ってペースを上げてみても、フラつくようなことはなく、しっかり感が得られるところがとても良い。途中、高速道路の橋の部分で横風を受けるようなシーンにも遭遇したが、そこでも直進性がきちんと得られていたところが好感触だ。これならロングドライブでも疲労はかなり軽減されるだろう。
80km以上の速度域でもハンドリングは素直でしっかりと路面を掴んでいる印象。当然レーンチェンジでもフラつくことなくスルッとクルマが動いてくれるので自然な運転が可能だ。
ステージを選ばずにハイレベルな走りを実現! 驚きのコスパも魅力的だ
最後はワインディングシーンでちょっと負荷をかけてみた。かなりアップダウンや荒れた路面でタイトターンが続くような状況だったのだが、ステアリングの切り始めがシャープすぎないところがコンパクトミニバンにはちょうど良い塩梅。けれどもグッと多くステアリングを切るようなシーンであっても、最後まで剛性感高く支えてくれる感覚もあるから安心だ。狙ったところにいきやすい扱いやすさと、最後の最後までこらえてくれる懐の深さが魅力といったところかもしれない。
少しオーバースピードでコーナーに進入したとしても、しっかりと路面を捉えて踏ん張ってくれるので一般的な走行での限界域は必要以上に確保されているので咄嗟の時にも安心感が高いと思う。走行後の摩耗状況を見てみたが、1箇所に負荷がかかるようなところはなかった。従来品に対して接地圧分布を見直したところが効いているのだろう。タイヤ全体を満遍なく使うということは、タイヤライフにも寄与するので安定的に長く性能を発揮することができるだろう。
こうして1日接してみて感じることは、良い意味で走行性や静粛性など決して突出した性能があるようなタイプのタイヤではなさそうだということだ。これはあらゆるシーンでバランス良く高得点を稼ぐようなタイプといってよく、誰もが普通に感じられる不満の出ない優等生的なタイヤだということだ。これなら数ある自動車メーカーに、新車装着タイヤとして採用される機会が増えつつあるのも頷ける。
そして最後に市場価格を見て驚いた。この価格で乗り心地、走り、そして摩耗までを考えたエクスタHS52は、多くのジャンルのクルマやドライバーにマッチして安心感と満足感を届けてくれそうだ。
性能とコスパが超優等生なタイヤ!クムホ『エクスタHS52』の詳細はこちら橋本洋平│モータージャーナリスト
学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。2019 GAZOO Racing 86/BRZ Race クラブマンシリーズ エキスパートクラスでシリーズチャンピオンを獲得。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。
《text:橋本洋平》