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【VW ゴルフTDI 新型試乗】装備とスタイルで取るか、「足」で取るか…中村孝仁

自動車試乗記

VW ゴルフTDI Rライン全 22 枚写真をすべて見る

新しい8.5世代と称するVW『ゴルフ』。Rを除く一連のエンジン・バリエーションを試乗した。今回は最後となる「TDI」の試乗である。

◆グレードを選ぶ決め手はデザインかも

ボディ・バリエーションは、「ヴァリアント」と呼ばれるワゴンとハッチバックの2種。とはいえ、個々のモデルを仔細に眺めてみると、見事なほど微妙に作り分けられているのがわかる。例えばフロントフェイス。一連の試乗は「eTSI」、「GTI」、そして今回のTDIであるが、実はフロントフェイスは3台ともすべて異なる。これにRを加えると少なくとも4種の顔つきを持つのだ。

さらに今回のTDIは、グレードが「Rライン」だったことで顔が違う。つまり、上からR、GTI、Rライン(eTSIとTDI)、そしてそれ以外のグレードのTDI及びeTSIで顔つきが異なるというわけである。因みにGTIとRラインの顔つきはよく似てはいるものの、微妙に異なる。結構いかつい顔つきで、それなりにスポーティーさを表現している。リアについても同様で、バンパー下のデザインが異なるのだ。

この外観の違いは好みによるだろうが、結構効果的に異なっていて、TDIでもRラインとそれ以外のグレードでは、装いがだいぶ異なる。だから、TDIやeTSIをチョイスする場合は外観デザインが案外決め手になったりするかもしれない。

次にインテリアである。少なくともインパネ回りについては基本的に変わらないが、TDIの場合は、eTSIが8000rpmまで刻んだタコメーターを持つのに対し、さすがにディーゼルだから6000rpmにとどまる。まあ違いは精々こんなところだ。

しかし、シートは「スタイル」あるいは「アクティブ」と言うグレードに対し、Rラインはトップスポーツシートと言うGTIやRと同じ、サイドサポート性の高いシートが付く。これは結構効果的でワインディングなどを軽快に飛ばしたい時に、体をしっかりとサポートしてくれるし、それによって、通常時の快適性が損なわれることもない。

驚いたのはGTIやRと比べてラゲッジスペースの容量が異なり、微妙にRライン以下のモデルの方が、スペースが大きいことである。ほんの僅かな違いなので、大勢に影響はないだろうが、通常時でGTIと比べて7リットルほど容量が大きい。

◆悩みどころは「走り」の差

肝心の走りであるが、ここが微妙にチョイスの悩みどころのような気がする。

Rラインは225/40R18のタイヤを装備して、Rライン専用のスポーツサスペンションが組み込まれている。GTI用ほどの硬さはないものの、それでも首都高速の目地などでは確実にハーシュネスが大きく、かつ突き上げ感もそれなり。これはeTSIの116ps仕様アクティブと比較した時の話で、向こうの快適性とはだいぶ異なる。

流石にRラインはスポーツ性を優先した設定だから、これで当然なのだが、GTIのように初めからそういうものだという前提と、言い方は悪いがなんちゃってスポーツ的なローグレードにもスポーティーなモデルを…という設定で作られたRラインとは、やはり異なる気がする。

もちろんこれを望むユーザーが当然いるのだから、要はTDIなりeTSIを選ぶときは、装備とスタイルを優先するか、足周りと走りを優先するかで別れる。個人的にはTDIはトルクはあるけれど、瞬発力のあるモデルではないので、特に足回りに関しては取り立ててRラインの必要性はないと思った。ただ、唯一乗っていない150ps仕様のeTSIだと話は別なような気がするが。

◆ゴルフならせめて400万円台に抑えたいが…

それにしても最近のディーゼルは静かである。少なくとも室内にいる限りディーゼルを意識することはない。ゴルフには1975年に日本初登場となった初代から、ディーゼルの設定があった。

時代が違うとはいえ、当時のディーゼルは音だけでなく振動もひどく、今のようにアイドリングストップもなかったから、信号待ちなどではブルブル震えるステアリングに手を載せていると、痺れる感触すらあったものだ。だから、よくヨーロッパ人はディーゼルを日常の足に使うなぁ…と当時は呆れたものだが、1998年にコモンレールと言う革命的なモノが開発されて以降、個人的にすっかりディーゼルの虜になり、普段の足はここ最近常にディーゼルである。

「まだ言うか!」と言われそうだが、VWはディーゼルゲートと言う大事件をやらかし、結果電気に走ったわけだが、ディーゼルを捨てたわけではなく、ゴルフ8が登場した時にツインドージングシステムと言う、触媒コンバーターを二つ持つシステムを開発し、それを搭載している。何でもNOXの排出量を大幅に抑制し、同時にトルクを高めることができるものと言うことで、結果こういう良いシステムができたのだから、終わりよければすべてよしということにしよう。とにかく至ってスムーズで、至って静かである。

スポーツモードをチョイスすると怒涛の加速を示す。ディーゼルの良さはこの中間加速の良さに尽きる。とりわけ高速の追い越しなどは、ちょっとしたスポーツカー並みだ。

今回の試乗車は合計38万5000円分のオプションが載り、車両本体価格475万3000円にこれを加えると、513万8000円と500万の大台を超えてしまう。やはりゴルフなら、せめて400万円台に抑えたいものである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《text:中村 孝仁》

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