レイズのホイール群の中でも特別な立ち位置を持つ「VMF」。鍛造ホイールでありながら、デザイン性を追求したモデルをリリースするブランドであることがオンリーワンで輝いている。キャストではなし得なかった高いデザイン性をもつ新作VMF「S-01」をチェックしてみた。
レイズの鍛造ホイールを代表するブランドというと「VOLK RACING」(ボルクレーシング)が馴染み深いが、ボルクレーシングではスポーツ性能を徹底追求したホイール設計を行っている。その一方でVMFはフォージドならではの軽量・高剛性という特性を生かしながら、重量増が続く現行車種でも性能を発揮できる強度を持ちつつ、デザイン性も高いのが大きな特徴となっている。
もちろんスポーツ性能もないがしろにはしていない。例えばキャストでは再現できない細さ・薄さもVMFであれば実現可能。そんな設計上の自由度を積極的に活用して、デザイン性を貪欲に追求するのがVMFの魅力なのだ。
デザインと性能を追求する“VMF”時代に流されないものづくりを行う
VMFはレイズのラインナップでも珍しい寡作のブランドなのだが、これまで「C-01」「L-01」をラインナップしてきていずれも息の長いモデルとなっている。開発に時間と手間を掛けて入念な設計をするのも同ブランドの特徴で、少数精鋭のモデルをロングライフで作り続けるのもVMFならではのブランド思想であり、その中でVMFが満を持してリリースしたのが、今回発表された第3弾モデルとなる「S-01」なのだ。
S-01のフォルムを見るとわかるのだが、狙ったのは全体を“面で見せるデザイン”で、これまで鍛造ホイールではあまり見られなかった形状に“あえて”チャレンジしたのも先鋭的なモデル群を持つVMFらしい試みといえるだろう。デザインの源泉になっているのは、ミニクーパーやゴルフなどの欧州コンパクトであり、また国産の大型ミニバンなどもターゲットで、面を使うことでホイールの存在感を放ちつつ足もとに高い質感を注入するのが狙いだった。
7本のY字スポークが印象的でスポークのトップは広く確保され、面を強くイメージさせているからこそこのデザインが強調されることとなり、さらにリムオーバーしてリムフランジと一体化することで大径感に加えてテーマであるディスク面の広さを引き出しているのも注目ポイントだ。
しかし何よりもよく見て欲しいのはスポークの“薄さ”で、斜め方向から見るとスポークの厚みが考えられないほどの薄い設計になっているのがわかるはず(キャストではまず不可能な形状)。これこそがVMFならではの設計の自由度で、広い面を使うコンセプトはしっかり守りつつも、薄さを強く印象付けることでホイールを重く見せない、ありきたりな重厚デザインのホイールにしない工夫がここに込められているのだ。
さらにスポークの裏面を見るとアンダーカットが施されているのが見えるのだが、これもディスク面をリムから分離させて軽快に見せている要因のひとつとなり、S-01の特徴であるスポークの薄さを強調する上でもこの処理は効果的に働いていることがわかるだろう。さらにアンダーカット部分には「FORGED / MADE IN JAPAN」「VMF」「RAYS ENG.」のマシニング加工を施すのも高級感を放つ手の込んだ処理で装着時の満足感を高めてくれるだろう。
ディスク面のフォルムの美しさもS-01の見どころのひとつで、センターパートから滑らかに立ち上がりスポークへと繋がるコンケーブラインが美しい。面の広いディスク面だからこそ、よりコンケーブするフォルムが際立っているのもS-01の魅力となる。
“VMF”は鍛造製法を行かし、VIA限定荷重値を上げることで現行車種へ対応
さらにフォージドならではの高強度設計もS-01の魅力となっていて、普及が進むEVやPHEVはバッテリーによる重量増に伴ってホイールの耐荷重基準の更新が行われて基準をクリアしているホイールが限られているが、VMFシリーズは全3アイテムでVIA限定荷重値720KG(VMF C-01/VMF L-01は840KG)に対応しているので安全面にも寄与している。
実際に荷重値を上げるためにはホイール自体の重量増は避けて通れないのだが、鍛造製法やデザイン性を活かすことで高性能を兼ね備えたハイスペックモデルへと仕上げているのもVMFの特徴と言えるだろう。そして強く言いたいのが今後もクルマ自体の重量は上がっていく傾向になるはずで、ホイールの耐荷重を軽く見てはいけないということ。車重に対してホイールの強度が不足していることで加速や減速、カーブや段差で入力があった場合にホイールが破損する可能性も出てくるのだ。
現時点で具体的な車種を上げればトヨタ アルファード/ヴェルファイアのPHEVやエグゼクティブラウンジ、レクサス LM、テスラを代表とするEVなどは特に注意が必要で、実は基準をクリアしているホイールはまだ少ない。そして先を見越しながら安全性と高性能を追求して高重量なクルマへの装着をいち早く可能にしたのがVMFでもある。
美しく光輝くホイール、足元を引き立たせる攻めたカラーリングを設定
そんなS-01に設定されているカラーリングは新色となるシャイニングスーパーブラック。近年、レイズではこの手の超光輝系のカラーリングを鍛造モデルに投入することがあり、デザインを重視するVMFらしい攻めたカラーチョイスといえるが、キラキラと輝き、見る角度によって表情を変えるカラーリングは深みもありデザイン性の高さも際立つので、ホイールの造形のみならずカラーでも他と被らない1本を手に入れるには絶好となっている。
VMFの初代モデルとなるC-01は欧州車メインのサイズラインナップであったが、2作目のL-01ではアルファード/ヴェルファイアなどもターゲットにするサイズの拡大を実施、S-01は18インチ~20インチのサイズを備えることでVMFは国産車から輸入車までを幅広くターゲットにするホイールへと成長した。
さらにスポークの薄さは、装着可能な車両マッチングにも大きな影響を与えていて、スポークの薄さは同時にホイール裏側のクリアランスの拡大ににもつながり、大型キャリパーへの対応が拡がった点も注目ポイントだ。
これによって輸入車のスポーツバージョン(例:ミニクーパー ジョンクーパーワークス)などで用いられるビッグサイズのキャリパーにも対応するので、適合車種がより広がったのもVMFならではの鍛造製法&S-01の造形によるもうひとつの成果となっている。
ホイールを換えることで印象が大きく変わる事は間違いないのだが、それは安全性が担保されていなければならない事であり、車両重量が増えている現代車では特に注意しなければならない。その基準をクリアしているVMFは足もとにオンリーワンの高品質&デザイン性豊かなモデルを投入したいと願っているユーザーにとって注目モデルとなるのは間違いなさそうだ。
重量級の車体にデザイン性をプラスするRAYS VMFの詳細情報はこちら《text:土田康弘》