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【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】スバルの戦略、吉と出るか凶と出るか…中村孝仁

自動車試乗記

スバル レヴォーグレイバック全 31 枚写真をすべて見る

スバル『レイバック』については昨年、そのプロトタイプに試乗した。『アウトバック』同様、ベースとなるクルマ(レイバックの場合は『レヴォーグ』だ)の車高を引き上げて、少しアウトドアを感じさせるクルマを目指している。

もっともレイバックには「都会派」という形容詞が付く。ならば都会で乗ってみようじゃないかということで、量産型のレイバックに初めて乗ってみた。スバル的にいうなら車高を上げたからと言ってアウトドアモデルになるわけではなく、スバルにとってこれはある種のSUVなわけである。

御存じの通りスバルは“いわゆる”SUVという車種を持っていない。敢えて都会派と形容してスバル流のSUVを作ったというのが開発陣の本音ではないだろうか。だから、これはスバルにとってSUVなのである。もっとも世間的に見ればどう考えても車高を上げたステーションワゴン。この言い分が果たしてユーザーに納得してもらえるか、あるいは「吉と出るか凶と出るか」という話である。

全く個人的な意見を述べさせてもらえば、別に敢えて都会派とかSUVとかいう文言を使わなくても、クルマとしては十分に良い出来を持っているのだから、素直にレヴォーグの車高を上げて、足のセッティングなどを変えて似て非なるものを作りました…ということでよいのではないかと思ってしまった。こうしておけば、あるユーザーは「アウトバックの弟分ね」と反応するだろうし、またある人は「アップカントリー仕様のレヴォーグね」と考えると思う。いたずらにやれ都会派だのSUVだの言うと、私みたいなひねくれ者にこのように言われてしまうわけだ。

◆同じ骨格、ボディ形状から別のクルマを作り出した最大の要素

という話はどうでも良くて、アップカントリーからアーバンエリアに場所を移したのが今回の試乗で、ここに来るとレヴォーグとの違いが鮮明になる。車高がレヴォーグより70mmも高いことは前回も報告した。ダンパーのストローク量では10mmしか変わっていないから、レヴォーグと比べて大した違いではないと思うかもしれないが、とんでもない。明らかに違うし、乗り味全体が実にマイルドである。

グリルウィングというのだそうだが、グリルに横串を指したクロームのアクセントが実に効果的で、同じ横串でも細くシャープなレヴォーグに比べてより立体的で異なるイメージを作り上げるのに成功していると思う。中に入ってしまうとまさにレヴォーグそのものなのだが、上質感という作り込みの部分ではスポーティーさを感じさせるレヴォーグとは雰囲気が違う。

強いてSUV風という要素を挙げるとしたら、レヴォーグと比べて高い着座位置とそれによる目線の高さだろうか。まあ、5cm以上高いのだからレヴォーグから乗り換えたらさぞ高いと感じること疑いなしだ。

同じ骨格と同じボディ形状から別の要素のクルマを作り出した最大の要素は、やはり乗り心地と動的質感の差だろうか。スポーティーな要素を殺したくはなかったという開発陣の話はある程度達成できていると思うが、そこを強調してしまうとレヴォーグになってしまうから、やはりスポーティーさは正直言ってある程度犠牲になっていると感じる。

具体的にはステアリングの初期入力のシャープさは失われている。その分少しだけロール量が増えている感じだが、かといってロール剛性が落ちているわけではないので、言葉を当て嵌めると「しなやか」が適当だろう。比較的アクセルを踏んだ状態からのコーナリングは、まさにゆったりしなやかである。そして路面からのあたりはどう切り取ってもソフト(レヴォーグと比べて)。長距離乗ってもこちらの方が疲れにくそうである。

◆460万円の「アウトバック」対430万円の「レイバック」

流石にアウトバックほどの抱擁感はない。エンジンはアウトバックと同じ1.8リットル直噴ターボボクサーであるから、軽い分だけ動きは軽快だ。ただ、年季の入ったアウトバックと最新鋭のレイバックということで、正直なところ価格差があまりなく、色々込々の値段比較でざっくり460万円のアウトバック対430万円のレイバックという構図である。

どちらを取るかはあなた次第だが、日本の道路的には良いところをついているレイバックのサイズ感がきっと受けると思う。私は個人的に抱擁感が高いアウトバックを好むが…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《text:中村 孝仁》

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