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[DSPを使えば音が変わる!]第2回 カーオーディオにてこれが使われるようになった歴史を紐解く!

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『カロッツェリアX』のユニットを使ってシステムが組まれたオーディオカーの一例(製作ショップ:サウンドウェーブ<茨城県>)。全 6 枚写真をすべて見る

「DSP」は今や、本格カーオーディオシステムを組もうとするときの必需品となっている。本特集ではそうである理由から、選び方・使い方までを紹介していこうと試みている。今回は、これが使われるようになった歴史を振り返る。

◆「DSP」の登場以前からアナログタイプの「プロセッサー」が存在していたのだが…

「DSP」とは前回の記事の中でも説明したとおり「デジタル・シグナル・プロセッサー」の略称で、信号を制御するためのメカだ。車内では音響的な不利要因がいくつかあるが、これを使えばそれらへの対処が可能となる。ゆえに多くのカーオーディオ愛好家がこれを用いる。

ところで、アナログタイプの「プロセッサー」も存在している。そしてそれらは「DSP」が登場する以前から使われていた。なおアナログタイプの「プロセッサー」は、機能が単一である場合も多い。例えば乱れた周波数特性をフラットに戻すための「イコライザー」や音楽信号の帯域分割を行うための「クロスオーバー」等々が、必要に応じて使われていた。

そこに、デジタルタイプの「プロセッサー」が組み込まれたカーオーディオシステムが本格的な登場を果たす。時期は1993年、それを搭載したシステムとは、『カロッツェリアX』だ。

◆『カロッツェリアX』では、新たなサウンド制御機能が使用可能に!

なお『カロッツェリアX』は、以下のような特長を持っていた。ポイントは2つある。1つは、「信号の伝送をメインユニットからパワーアンプまで光デジタルにて行うこと」、そしてもう1つが「信号をデジタル制御すること」、これらだ。

これら2つのポイントが利点を発揮する理由を説明しよう。まずは前者について。車内にはノイズ源となるものがさまざまある。ゆえに音楽信号を伝送する過程においてその影響を受け音質が劣化しがちだ。しかし『カロッツェリアX』では、その影響をかなり排除できる。光デジタル伝送では、伝送過程でノイズの影響をほぼ受けないで済むからだ。

そしてそれまでも使われていたさまざまなサウンド制御機能をデジタル処理にて行えるようにすることで、より緻密なチューニングが可能となった。しかも、アナログの「プロセッサー」では実現できていなかった新たな機能も加えられた。その機能とは、「タイムアライメント」だ。

「タイムアライメント」とは、近くにあるスピーカーに対して発音タイミングを遅らせられる機能だ。車内ではリスニングポジションが左右のどちらかに片寄る。さらには、左右のツイーターとミッドウーファーがバラバラの場所に取り付けられる。なので、各スピーカーから発せられる音がリスナーの耳にズレて届く。しかし「タイムアライメント」を用いれば、各スピーカーから発せられる音が到達するタイミングを揃えられるのだ。

◆当初は浸透が進まなかったものの、数年で状況が一変!

このように『カロッツェリアX』は革新的なコンセプトを身にまとい大きなインパクトを放ちながら登場した。しかし、すぐには浸透しなかった。

その理由は主には2つあった。1つ目の理由は「光デジタル伝送ありきのシステムなので、汎用性が低かったから」だ。パワーアンプまで音楽信号を光デジタルにて伝送するので、既存の「外部パワーアンプ」が使えない。そしてもう1つは「デジタル制御が毛嫌いされたから」だ。

しかし1つ目の理由は、ほどなくして解消された。「DSP」からアナログの信号を出力できるようにする改良が施され、既存の「外部パワーアンプ」と組み合わせられるようになったのだ。

しかし「デジタル処理が毛嫌いされること」の払拭には少々時間を要した。そのコンセプトが新しすぎたからだろう。

でも、とある出来事をきっかけにして状況が変化する。1997年に『パイオニア カーサウンドコンテスト』が初開催され、『カロッツェリアX』を使ったシステムの音質性能の優秀さが競われた。そしてそれへと参加する「カーオーディオ・プロショップ」が年々増え、結果『カロッツェリアX』の実力が知れ渡ることとなったのだ。

そうしてその後には他社からも「DSP」が組み込まれたシステムや機器がリリースされ、2000年代に入ってからは、「DSP」は音を良くするための必需品としてカーオーディオ界で市民権を勝ち取った。

今回は以上だ。次回はその後の変遷について解説する。お楽しみに。

《text:太田祥三》

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