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【トヨタ プリウス 新型試乗】2Lと1.8L、2つのハイブリッドの走りの違いは…九島辰也

自動車試乗記

トヨタ プリウス 新型(プロトタイプ)全 28 枚写真をすべて見る

11月16日にワールドプレミアされた新型トヨタ『プリウス』を走らせる機会を得た。まだプロトタイプ、しかも通常のプロトよりも商品化から遠い状態ということだが、嬉しいチャンスである。クルマの仕上がりのプロセスを体感できるのは、この仕事の醍醐味でもあるだろう。

もちろんプロトタイプとはいえ、走りの部分はかなり煮詰まっている。未完成なのはインターフェイスや商品化に向けての仕様といったところ。よって動力性能を試すのは問題なし。走る、曲がる、止まる、の特性を見極める試乗となる。それを踏まえ場所は富士スピードウェイのショートサーキットとなった。関係者以外立ち入り禁止状態だ。

◆これまでのユーザーが離れても受け皿がある強み

さて、目の前にした新型プリウスの第一印象は、思いのほかカッコイイ。流れるようなフォルムはまるで2ドアのスポーツカーのようだ。リアドアのドアノブをリアピラーで隠しているのでそんな風にも見えなくない。それを助長するのが、サイドウィンドウの小ささとリアフェンダーの膨らみ。見れば見るほどかなり思い切ったデザインをしている。

その理由はワールドプレミアでも語られた「コモディティ」ではなく「愛車」をつくった結果だろう。豊田章男社長の「プリウスはコモディティでいいのでは」という投げかけに、開発陣は「愛車」をつくりたいと抵抗したようである。デザイン領域統括部長サイモン・ハンフリーズ氏はそう語っていた。

そしてこれには包括的な考え方が根底にあることを忘れてはならない。つまり、プリウスをモダンに仕上げることでこれまでのユーザーが離れてしまっても、その受け皿となるCセグメント車両が待ち構えているということだ。具体的に言えば『カローラ』、『カローラスポーツ』、『カローラクロス』あたり。保守的なプリウスユーザーの乗り換えはこちらが受け持つという考えとなる。

この辺はまさに最近のトヨタらしい考え方だ。SUV各モデルを“SUV群”と捉え、マーケットのあらゆるニーズに答えようとしている。「カローラクロスよりもう少し大きいのが欲しいなぁ」という声に、「RAV4はいかがでしょう」という感じ。まさにフルラインナップを持つ自動車メーカーの強みである。

◆1.8リットルと2リットル、2つのハイブリッドの走りの違い

ということで生まれたプリウスはエッジが効いたデザインとなったが、パワーソースもユニーク。街中重視のそれほど走りにこだわらない方には1.8リットルエンジンのハイブリッドを、スタイリング同様スポーティに走りたい人には2リットルエンジンのハイブリッドを用意する。さらに駆動方式もそれぞれFWDとE-Fourの四駆を取り揃えた。スタイリングは思い切ったが、この辺はこれまで同様緻密な対応が施されている。

そうそう、2リットルエンジンを採用したプラグインハイブリッド車も遅れて登場することを付け加えておこう。よりパワフルなのは言わずもがなだ。

では、実際に走らせた印象だが、グレードを問わずクルマの動きはとても自然で好印象だった。ステアリングの応答性はよく、スッと切って気持ちよく向きを変える。フロントがもたつくこともなければ、リアの追従が遅れることもない。特にリアの粘りは感動モノで、かなり踏ん張りが効く。今回はショートサーキットということもあり、そこが目立った。トレーリングアーム式のダブルウィッシュボーンは横からの入力に強く、しっかりと受け止めている。

各グレードの味付けだが、まず1.8リットルエンジンのハイブリッド車は乗り心地の良さが際立った。サーキットという特異な場所だがそれはわかる。ステアリングの切り始めやブレーキの初期挙動もそうだし、ゼブラをまたいだ時のショックもそう。スッと入力を柔らかげてくれる。

それに対し2リットルエンジンのハイブリッド車はもう少し路面の情報を拾う。細かい入力はそのままドライバーに伝える感じだ。もちろん、コーナーの粘りは明らかに異なる。試乗後その辺の話をすると両者はダンパーの減衰圧を変えているそうだ。しかも、パワステのセッティングも変わるからドライバーが得るフィーリングは当然別なものとなる。なるほど、細かい芸当が行われていた。

FWDとE-Fourに関しては場所が場所だけに後者がいい働きをしてくれた。リアの駆動はとてもナチュラルで、トラクションが変な邪魔をせずドライバーの意を汲んでくれる。出来の悪いヨンクにありがちな重い物を積んだような、何かを引きずっているような感覚は皆無だ。このセッティングは相当いいのではないだろうか。

◆実用レベルではどうか

といったのが新型プリウスとのファーストコンタクトだが、次回は一般道や高速道路で試したい。信号でのスタート、街中の左折、高速道路の段差のこなしや高速コーナーを体感してみたい。この調子であればきっとレベルは高いだろう。なんてハードル上げちゃうと評価は厳しくなるかも。いずれにせよ、スポーティなプリウス登場が間近に迫っているのは明らかである。

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

《text:九島辰也》

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