システムのサウンドクオリティは「どんなスピーカーを使うか」で変わってくるが、そのスピーカーを「どう鳴らすか」によっても得られる結果が変化する。当特集ではそこのところを深掘りしている。今回は、上級者に実践されることの多い「3ウェイ化」について考える。
◆「2ウェイ」は「フルレンジ」スピーカーと比べて有利。しかし…。
カーオーディオでは、「2ウェイスピーカー」が使われることが多い。なお「2ウェイ」とは、高音再生用のスピーカーであるツイーターと中低音再生用のスピーカーであるミッドウーファーとでもっとも高い音からもっとも低い音までを鳴らし切ろうとするものだ。
ちなみにいうと、全帯域を1つのスピーカーユニットだけで鳴らし切れたらそれがベストだ。音の出どころが右chと左chのそれぞれで1箇所ずつとなるので、高音から低音までがスムーズに繋がる。しかし実際はそうもいかない。なぜならスピーカーは、振動板の口径が小さくなるほど高音再生が得意になり大きくなるほど低音再生が得意になる。
なので1つのスピーカーユニットだけで全帯域を鳴らそうとすると、大き目なスピーカーでは高音再生が上手くいかず、小さ目なスピーカーでは低音再生が上手くいかない。なので「2ウェイスピーカー」が活躍している。2種類のスピーカーユニットを用意してそれぞれに得意な仕事に専念させることで、全帯域の音をより効率的に鳴らせるようになるからだ。
しかしそこにもう1つスピーカーユニットを足して「3ウェイ化」すると、さらに状況が良化する。
◆「スコーカー」を足すことで中音再生の質が上がり、低音再生の質も上がる!
「3ウェイ化」が有利である理由は主には3つある。まず1つ目は、「中音を専用スピーカーで鳴らせるから」だ。中音はツイーターよりも大きめのスピーカーで鳴らした方が良く、逆にミッドウーファーよりも小さめのスピーカーで鳴らした方が良い。
有利である理由の2つ目は、「ミッドウーファーの負担を減らせるから」だ。2ウェイにして役割分担をさせるとはいえ、実はミッドウーファーの負担は軽くない。案外幅広い帯域を担当せざるを得ないのだ。結果、「2ウェイ」のミッドウーファーは「分割共振」という良くない症状を発症しがちだ。
ちなみに「分割共振」は、ミッドウーファーが割と高めの音を再生するときに発生する。高い音を再生する際には振動板は早い動きをしなくてはならなくなるのだが、そのときにその速さについて行けずに、振動板の中央付近と外周付近とが平行に前後せず波打ったように動いてしまうことがある。これが「分割共振」だ。
なおこれはいわば、「2ウェイ」のミッドウーファーにとっての宿命だ。ほとんどのミッドウーファーが多少なりとも「分割共振」を生じてしまうのだ。しかし、スコーカーを導入すれは「分割共振」の原因となる高めの音を再生しなくてすむ。ゆえにミッドウーファ-の音が良くなる。質の良い低音を鳴らせるようになるのだ。
◆音楽の主要パートが目の前から聴こえてくると、音場がよりリアルに!
そして有利であるもう1つの理由は、「中音を高い位置で再生できるから」だ。スコーカーからはボーカルや主旋律を弾く楽器等々、音楽の主要なパートの音が聴こえてくるのだが、それが足元のミッドウーファーからではなく目前のスコーカーから聴こえてくると、サウンドステージがリアルに目の前で展開しやすくなる。
また高い位置に取り付ける場合、スコーカーと正対できるようになることも多い。となるとスピーカーから放たれる情報量をより多く受け取りやすくなる。
かくして「3ウェイ化」を図ると、より良いコンディションで音楽を再生できるようになる。
のはずなのだが、逆にコントロールは難しくなる。「2ウェイスピーカー」を鳴らす場合、ツイーターの再生音とミッドウーファーの再生音とを上手く繋げる(一体化させる)必要性が生じるが、実はこれが案外難しい。で、「3ウェイ」ではスピーカーユニットの数が1つ増える分、繋げる難しさが倍増する。最悪、失敗することもある。むしろ音が悪くなることも有り得てしまうのだ。
しかしそのハードルを上手く超えられると、利点だけが活きてくる。
さて次回は、「3ウェイ」の難しさについてもう少し踏み込んで解説しながら、これを上手に行うためのコツをより詳しく説明していく。乞うご期待。
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《text:太田祥三》