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【トヨタ bZ4X & スバル ソルテラ 新型試乗】運動性のソルテラと、快適性のbZ4X…中村孝仁

自動車試乗記

スバル ソルテラ(左)とトヨタ bZ4X(右)。後ろに見えるのは名古屋城全 32 枚写真をすべて見る

名古屋から金沢への260kmを『bZ4X』と『ソルテラ』で走る

トヨタ『bZ4X』とスバル『ソルテラ』の合同試乗会が壮大なスケールで行われた。東京を起点にコースはループを描く合計5コース。

私が担当したのは名古屋から金沢に至るおおよそ260kmほどのコースで、途中郡上八幡で乗り換えて2つのモデルを試すというものだが、いずれのコースにもミッションがあって、前半の郡上八幡までは残走行距離を200km以上残すこと。後半の金沢までは残走行距離を50km以上残すこととなっていた。つまりどちらのコースでも一度はどこかで充電する必要がある。まあ、後半については無理をすれば無充電でも行けそうだったが、とりあえずコース上に記されていた充電スポットで1度は充電して行程を済ませるに十分は時間が割り当てられていた。

電気自動車(EV)のイロハについて多くの人はまだよくわかっていないことだと思う(実は私も)。今回はそうした体験も含めて、電気自動車のイロハについて少し勉強して欲しいというメーカー側の意図も透けて見えた。即ち一口に充電と言ってもスポットによっては電気の流れる量が異なり、それはスポットごとに異なっている。同じ30分充電するにしても、流れる量の大きなスポットに行けばそれだけ多く充電できるというわけ。

今回名古屋から金沢のルート上には20kwから50kw程度の充電スポットが点在していた。どこを選ぶかはドライバー次第だし、スポットによってはかなりルートから外れるところもあって、目指すところは皆同じ。すなわち、ルートからあまり外れず、且つ充電容量の大きなところである。そしてほとんどのケースで一度に充電できる車の台数は1台。つまり先客がいれば待たされることになるというわけだ。電気自動車のややこしいところというか、まだまだインフラが不足しているといわれる背景にはそんなところがある。案の定目指したスポットには先客がいて、計画の練り直しを迫られた。

飛行機並みに綿密な旅行計画を立てる必要がある

さて、車両は抽選で選ぶ。私の場合最初にbZ4XのFWD(前輪駆動)モデルに乗り、途中郡上八幡からはソルテラのAWD(全輪駆動)が割り当てられた。因みにソルテラは冬の雪道で試乗経験があるが、bZ4Xに乗るのは今回が初めてである。

基本的に車の構成は骨格からして同じなのだからそう大きくは変わっていないのだが、味付けは微妙に異なっていてどちらかと言えば運動性能志向がソルテラ。快適走行志向がbZ4Xと言って差し支えないと思う。また、どちらもFWDとAWDの設定があるが、トヨタが単一グレードなのに対し、スバルはAWDに2種のグレードが用意されることやトヨタが18インチを標準タイヤとしているのに対し、スバルは上位グレードは20インチを標準としているなど僅かずつ違いがある。まあ最大の違いはトヨタがKINTOでのリースのみでの取り扱いになるのに対し、スバルは個人販売をすることだろう。

というわけでFWDのbZ4Xでのスタートだ。名古屋中心部から東海北陸自動車道に向かう。充電状況はおおよそ8割程度。メーカー側も意図的に満充電にはしなかったそうだ。となると、どこで充電をすべきかという選択も必要になるわけだが、とりあえずルートを調べてみると、郡上八幡には途中から高速を降りる設定になっていて、その行程中にはスポットはない。ということは高速上のSAで入れてしまうのが一番手っ取り早いのだが、如何せん早すぎる。

行き先を決めてなおかつそのルート上に充電スポットの存在まで調べなければならないのが、電気自動車の宿命。内燃機関車なら気ままに出かけて無くなったら近くのガソリンスタンドで…となるが電気はそうはいかない。飛行機並みに綿密な旅行計画を立てる必要がある。今回は道の駅ラステンほらどというところで充電をした。容量は20kw。小さい。充電中2台ほど一般の電気自動車ユーザーが充電に来たが、先客(私)を見て諦めて行った。

残走行距離は出発時に300km程度だったから前半の行程は200km云々を無視すれば楽勝で届く。下道に降りると気持ちの良いワインディングロードが続く。そこそこのアップダウンもあるのだが、何故かコーナー手前になると減速をする。アップダウンのあるところでは下りに入るとやはり減速をする。あとで聞くと坂道の勾配やスピードを感知して回生力を強めているそうで、コーナーの場合はやはりスピードとコーナーそのものをカメラが認知して回生力を高めるのだそうである。そんなわけだからアクセルオフにするとあとはクルマの方が塩梅よくやってくれる。まあ、これだとドライバーの仕事量がますます減って、言葉は不適切かもしれないがドライバーがますます馬鹿になる。これも時代の流れなのだろうか。

18インチの快適さは絶妙

それはそうと18インチの快適さは絶妙である。後から乗ったソルテラには20インチが装備されていたがこちらは少しやり過ぎ。まあ、コーナーでの踏ん張りは格段に良いのかもしれないが、そもそも電気自動車でそんなに飛ばそうとは思わない。踏めばとてつもない加速力を持っていることは重々わかっているが、その加速には内燃車特有の高揚感(主として音や味わえる加速度など)はない。バカっ速いけど、まさに線香花火的切なさを覚える。

郡上八幡から先はソルテラだ。快適さでは18インチのbZ4Zに適わないが、回生力を可変できるパドルが付くなど、運転を楽しむための装備が施される。そういえばこのクルマにはハーマンカードンのオーディオが装備され、前半のトヨタにはJBLのオーディオが装備されていた。静粛性が高いだけにオーディオに凝るのも電気自動車の楽しみかもしれない。

バッテリーの廃棄問題等々、まだ課題は積み残されている電気自動車。サブスクにして車両を回収してしまうトヨタのやり方の方が、トラブルが少なくて済みそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

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