「MTしかない」ことが強みになる
トヨタ自動車が6月1日に公表したスポーティモデル『GRカローラ』の日本仕様。やる気仕様の「モリゾウエディション」が富士スピードウェイのタイムアタックで1分59秒433を記録するなど、開発陣の並々ならぬ意気込みが伝わってくる。
ホットハッチの多くがデュアルクラッチ変速機などのATをラインナップ、あるいはATのみというケースも少ない今のご時世に、GRカローラはモリゾウエディション、ストリートメインの「RZ」とも6速MT(マニュアルトランスミッション)のみという硬派仕様。
記者団から2ペダル自動変速モデルの予定はないのかという質問が出たのに対し、開発責任者の坂本尚之氏は「いずれは2ペダルをやる時が来るかもしれません。ただ、ホットハッチ最大市場のアメリカでは実はMTしかないということがブランドイメージを強くするという現象もあるので」と、当面はMT一本でいく構えであるという考えを示した。
想定ライバルはアメリカ市場のホットハッチ
そのGRカローラだが、開発プロセスにおいて想定ライバルは存在したのだろうか。この手のモデルのエンジニアはライバルなどいないと格好をつけることしばしばだが、坂本氏は率直にいくつかの車種を挙げた。
「アメリカのホットハッチ市場を盛り上げたいという意図から、まずはフォード『フォーカスST』と『フォーカスRS』。ルノー『メガーヌRS』も研究しました。あと、4WDの先輩としてやはりスバル『WRX』は外せませんでしたね」
フォーカスRSは2.3リットルターボで350psの馬鹿力仕様。メガーヌRSは1.8リットルで300ps、WRXは2.4リットル275ps。GRカローラは排気量は最小の1.6リットルだが出力は304psあり、排気量1リットルあたりの出力188psはライバル中最強。どういうドライブフィールを実現しているのか、好事家にとっては興味が尽きないことであろう。
《text:井元康一郎》