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【マツダ ロードスターRF 新型試乗】6年経ってなお色褪せないRFは、シニア世代にお勧め…中村孝仁

自動車試乗記

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『990S』の登場ですっかりそちらに目が行きがちなマツダ『ロードスター』だが、ハードトップルーフを備える「RF」には捨て難い魅力がある。

その捨て難い魅力とは言うまでもなくハードトップによるクローズドボディ化ができること、である。ロードスターという名を持ちながらハードトップなんて、軟弱…という読者もいるだろう。かつてフィアット『850スパイダー』を所有していた私は、同時にハードトップを持っていて、確か重さにして30kgあったそのトップを独りで取り外し取り付けをしていたが、今なら絶対にそれは無理。当時だって一回取り付けたハードトップを取り外すのはなかなか億劫だった。

でも、RFの場合はその取り外しの必要がない。まあ、取り外して完全にオープンになった850スパイダーと違って、RFの場合はルーフを開けてもロールバー以上にでかいBピラー(というべきか迷うが)が残ってしまうので、実質的にはタルガトップともいえる。もっともそれで十分にオープンエアは堪能できるし、むしろシニア世代にはこの程度の開き方の方が、快適さを保てるのではないかと思うこともあった。

6年経ってなお色褪せない『ロードスターRF』

昨年の12月にロードスター全体が見直され、RFにもキネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)なるデバイスが付いた。これ、コーナリング中にリア内輪に軽くブレーキをあて、ロールを抑制しながら安定的なコーナリングを実現するシステム。このKPCは実際に色々なドライビングで試してみたが、確かにコーナーリングの安定には寄与しているという実感を得た。まあ、見た目には全く分からないし、それの有る無しも相当に乗り込んで双方を乗り比べてみないとわからないレベルだが、ことクルマを磨くという点において、マツダの執念は凄いと常に感じる部分である。

RFの市場デビューは2016年だから、すでに誕生から6年が経過している。全く色褪せない。それどころか輝きを増している印象すらある。さすがにBBSのアルミホイールとブレンボの4ピストンキャリパーというオプションを含んだ価格は430万7600円とかなり高額になるが、それでも日本には世界的に見て非常に優秀なコンパクトスポーツカーが存在する証のようなクルマである。

スポーツカーとしての愉しさはBRZよりも上

実はスポーツカーについて少し考えさせられるところがあった。それはパーパスビルドのクルマに第2、第3の要求を突き付けてよいものかという点である。その答えは以前に書いたスバル『BRZ』で導き出したが、あの車の場合はリアにオケージョナルシートが存在して、子供が乗せられる(大人でも小柄ならOK)という点や、ゴルフバッグを2つ載せられるという第2、第3の要求に応えつつ、楽しいドライビングを堪能できるマルチな欲求を満たしてくれるものであった。

翻ってマツダロードスターは、もちろん2シーターだからそんな欲求に応えてくれる要素はないし、室内に物を置くスペースは皆無。グローブボックスすらなく、ETC車載器も、出発前にドライバーズシートを倒してカードを挿入しておかないと後でエライ目に合うという、徹底したパーパスビルド志向なのだが、一度走り出してその走りを楽しんでしまうとやはり抗し難い魅力があって、スポーツカーとして比べた時の愉しさという点ではBRZよりも確実に上であった。それにロードスターの場合は無類にコンパクトに仕上がっていて、全幅は1700mmを超えてしまうから3ナンバーになってしまうが、全長は今も4mを切っている。

唯一無二のプラットフォームで、ほかに転用が利かないから開発コスト的にもなかなか次期モデルが作りにくい状態ではないかと思ってしまう。世界的にプラットフォームを共有する流れの中で、単一車種用のプラットフォームをいつまで持ち続けることができるか。それに電動化だってメーカー的には対応しなればならない現状で、果たしてロードスターがいつまで作り続けられるか、「NE」型の投入はあるのか。非常に気になるところである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

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