ノーマルサスペンションのスプリングだけを交換するのがダウンサス。価格は数万円からで、車高は下がり乗り味も変わるという。そんなダウンサスの魅力とは?
サスペンションチューンの入り口に最適
ダウンサスというとサスペンション交換のようだが、一般的に純正ダンパーに組み合わせるスプリングのことを指す。サスペンションチューンというと代名詞は車高調だ。これはサスペンション自体をアフター品に交換。そもそも純正サスペンションとは構造が異なっている。車高を任意で変えられたり、スプリングも交換できるので硬くしたり柔らかくしたりできる。さらに減衰力の調整もできるものが多い。
対してダウンサスは純正サスペンションのスプリングだけを変えるものをいう。入門チューンのようだが、実はメリットも多い。まずはコスト。車高調がリーズナブルなものでも10万円から。有名メーカーのメジャーな商品だと15~20万円ほど。スポーツ性能も乗り心地も快適な高精度なものだと30万円以上が相場。それがダウンサスだとスプリングだけなので、3万円ほどからラインアップがある、ボリュームゾーンでも5~6万円ほど。
次の強みは純正サスペンションを使うということ。純正サスペンションはその耐久性とオールマイティな性能は自動車メーカーが膨大なコストを掛けて開発しているだけに安心。耐久性は圧倒的。車高調は数万キロごとにオーバーホールが前提で徐々に性能も落ちていくし、オイル漏れやガスが抜けるなど、性能と引き換えに劣化もする。しかし、純正サスペンションならば、5万キロ走ったらアタリが付いたとか、育ったなんて言われるほどにタフ。乗り心地もあらゆるフィールドでそこそこを狙って開発されているので、どこでも快適な範囲には来る。それをダウンサスでさらに狙ったフィールドに合わせ込んでやろうということなのだ。
ダウンサスはバネレートなど設計が異なる
ダウンサスはスプリングの鋼材や太さ、巻き方を変えることで車高を下げて、バネレートはやや高めてスポーティな走りができるようになっていることが多い。このバネの設計によって、車高が下がっても乗り心地がよくなっていたり、そのあたりがメーカーのノウハウの見せ所なのだ。ダウンサスというと、「とりあえず車高を下げたいだけ」というような見た目重視カスタムで選択されることが多かったが、近年はこだわった性能を持ったスプリングの設計で、見た目にも走りにも性能が高められる製品が増えている。
プロが走りにこだわったダウンサスを開発する例も
GR86で車両開発に携わった佐々木雅弘選手が、自身のブランド「GROW Design」でダウンサスを発売している。開発段階から純正ダンパーの良さを感じ、でもノーマルの車高だけもうちょっと落としたいと、スプリングメーカーのHALspringsと共同で開発したという。
実際サーキットでもテストを行って、筑波サーキットにてダウンサスのみを取り付けた車両で1分3秒7と、どこぞの車高調入りデモカーをぶち抜くようなタイムをマークしているという。それだけ純正サスペンションの性能が高まっているので、ダウンサスでも十分にサーキットまで楽しめるようになっている。スポーツ走行派には新展開ともいえる変化が起きている。
取り付けにはひと手間掛かるのがダウンサス
純正サスペンションをバラしてそこに組み込む必要があるのがダウンサス。車高調でアッパーマウントも付属するモデルなら、純正サスペンションと入れ替えるだけ。だが、ダウンサスの場合は純正サスペンションをバラして、そこにダウンサスを組み込み、再び純正アッパーマウントを付けて組み立てる必要が出てくる。
DIY派では車高調取り付けくらいは自分でやるという方もいるが、ダウンサスは純正スプリングとダウンサスを縮めた状態で組み込まなければいけないので、スプリングコンプレッサーが必要。意外とDIY派にはハードルが高いし、スプリングコンプレッサーの使い方をミスして縮めたバネが一気に伸びるとアッパーマウントごと飛んでいく大事件が起きるので気をつけてもらいたいところだ。
せっかくダウンサスを組み込むなら、車高が変わるのでアライメント調整はもちろん、各ブッシュ類なども適宜締め直してもらいたい。そうすることによって、より質感の高い乗り味にできる。そのあたりは足まわりに強いプロショップならそれぞれノウハウを持っている部分なので、ぜひ相談してみてもらいたい。
《text:加茂 新》