燃費アップ、静粛性アップ、エンジン寿命アップなどなど、さまざまな目的でオイル添加剤は多数販売されている。手軽なオイル添加剤で効果を楽しむのも良いが、オイルメーカーは決して推奨しないその理由とは!?
ズラリと様々な種類があるオイル添加剤
量販店に行くとオイル添加剤だけで数十種類は販売されている。それぞれ狙いが異なり、パワーアップを謳うもの、燃費向上を謳うもの、エンジン内部を綺麗にするものなど、用途によって異なるものがある。ではそれが効くのは!? 答えはわからない。としか言いようがない。
なぜなら、それぞれユーザーがどんなエンジンオイルを使っているかによって結果が変わるから。
燃費向上やパワーアップを狙う添加剤はどちらも摩擦を減らす成分がメイン。エンジン内部の摩擦を減らして出力アップさせようというものである。すでに十分に摩擦を減らす成分が入ったエンジンオイルを使っている場合、そこに良かれと思って摩擦を減らす添加剤を入れても、効果が増えるわけではない。入れれば入れるほど摩擦がゼロに近づいていくわけではないのだ。
同様に今使っているエンジンオイルにもエンジン内部の汚れを防ぐ清浄分散剤が多かれ少なかれ含まれている。エンジン内部を綺麗にするという添加剤を入れたところで、もっと綺麗になるかはわからない。
そもそも自動車メーカーの純正オイルや、API規格のSNやSN+、SP規格など最近の規格を取得しているオイルであれば、規格にしたがってそういった成分は必要十分な量が含まれている。
オイルは実は緻密な設計に基づいて開発されている。例えば、冷間時はこんな成分で潤滑して金属摩耗を防ぎ、50度になったら作用する成分も混ぜておいて、温度が上がってからはこっちの成分で潤滑する。それを落とさない相性の清浄分散剤をこれだけ入れておけば、エンジン内部にスラッジは溜まりにくい……。という具合で温度によっての作用も考慮して開発されている。
今のオイルに摩擦調整剤をプラスすれば、もっと摩擦が減ってフィーリングがよくなる!! というほど単純な話ではない。スーパーGTなどのメジャーレースで聞く有名メーカーのオイルであれば、どこのメーカーでも必要十分な成分は含まれている。某国産オイルメーカーの開発者は…
「若い頃、いろいろな成分を混ぜて、もっとこうしたら良くなるんじゃ!? とマイカーでテストしていました。その頃は会社の材料を勝手に混ぜて使っていたんですが、あるとき、走っていたらエンジンから異音がしてきた。結果、クランクメタルが摩耗してエンジンブローしてしまいました。エンジンオイルを抜いてみるとなんにも出てこない。エンジンオイルは消費してしまったのでも漏れたわけでもなく、エンジン内部でゼリー状になってしまいました。これは成分の相性の問題です。混ぜてはいけない成分を同時に入れてしまったのです」という。
こういったことが添加剤によって起きないとも限らない。添加剤メーカーでもエンジンオイルとのマッチングは確認しているはずだが、では世界中のあらゆるエンジンオイルで問題が起きないか確認しているかは疑問だ。
それでも入れたければ
オイルメーカーの添加剤という手はある
ではすべてがダメとも限らない。たとえばオイルメーカーが出している添加剤と、そのメーカーのオイルならもちろん問題はない。たとえばオメガオイルでは摩擦調整剤「1000」、エンジンオイル強化剤「909」をラインアップ。それぞれ自社製エンジンオイルに適量混ぜることで、摩擦を減らしたりエンジンオイルの性能を引き上げることが可能だ。
また、信頼できるチューナーがマッチングを確認しているならそれもアリ。とにかく、自分の使っているエンジンオイルに添加剤を入れたときに何が起こるかわからず、ワンミスでエンジンブローにもつながるシビアな領域がエンジンオイルなのである。
燃料添加剤はガソリンの種類が少ないのでアリ!!
ガソリンに添加する燃料添加剤もある。こちらはエンジンの清浄効果があるクリーン系のものと、オクタン価をアップさせる系のものがある。オクタン価アップ系はターボ車でサーキット走行など、高負荷時のノッキングを防ぐためのものでパワーアップの効果もあるが、エンジン保護の意味合いも大きい。
燃料添加剤はエンジンオイルに比べて、混ぜ合わせる先のガソリンの種類が少ないのでテストがしやすい。国内ではエネオス、コスモ、シェル、出光などのブランドがあり、それぞれハイオクとレギュラーしかない。それぞれのブランドでも実は同じ中身!? という話もあり、ほぼ同じ成分なのでメーカー側でのテストもしやすい。よって、エンジンオイルのように謎の成分同士がケンカして大変なトラブルになる可能性も低い。ダウンサイジングターボエンジンでは、とくにオクタン価向上剤による効果が得やすいので、ときおり変化を楽しむという意味で使ってみるものありだろう。
《text:加茂 新》