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純正スピーカーの音が良くないのはなぜ?「カーオーディオにまつわる“なぜ?”を解明!」Part3「スピーカー」編 その1

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純正スピーカーの一例。全 9 枚写真をすべて見る

カーオーディオに興味を持ちいろいろと調べてみると、“素朴な疑問”が首をもたげる…。当連載は、そんな経験をしたことのあるドライバー諸氏に向けて展開している。今回からは、「スピーカー」に関連した初心者が感じがちな疑問の答を解説していく。

純正スピーカーには多くを望めない…。その理由とは…。

クルマには普通、スピーカーが標準装備されている。つまり、特に市販品を購入せずとも音楽を楽しめる。しかし、その純正スピーカーのサウンドに満足できないドライバーは少なくない。さて、純正スピーカーの音が良くないのはなぜなのか…。

結論から入ろう。答は単純明快だ。「品質があまり良くないから」だ。一部、高級スピーカーがオプション設定されている場合があるが、それら以外の標準装備されている純正スピーカーはチープである場合がほとんどだ。

そうである理由は、主には2つある。1つは「コストがかけられていないから」で、もう1つは「軽量化が推し進められているから」だ。

それぞれがどういうことなのかを説明していこう。まずは「コストがかけられていないこと」について。クルマは厳しい価格競争にさらされている。もちろん高級なクルマもたくさんあるが、高額なクルマでも高いコストパフォーマンスが求められる。

ゆえに、必要な部分にはコストが潤沢に注入されつつも削れるところではシビアなコストカットが図られる。つまり走行性能や安全性能に関する部分にはコストが十分に注がれながらも、それらに関係しない部分の多くでは無駄が削ぎ落とされている。で、スピーカーは走行性能や安全性能に関連しないので、コストカットの対象になりがちだ。

ところがスピーカーは、コストと性能が比例しやすい。なぜならスピーカーは、構造的には比較的にシンプルだ。約100年前に発明されたときから基本的な仕組みが大きく変化していない。このようにローテクな工業製品は得てして、かけるコストの差が品質に如実に現れる。素材や作りにこだわればこだわるほど、性能もそれに合わせて上がっていくのだ。逆に、コストが注がれないと性能もそれなりになりやすい。結果、純正スピーカーの性能も推して知るべし、というわけなのだ。

純正スピーカーの一例。

スピーカーは、高性能なモデルになればなるほど重くなる?

続いては、「軽量化が推し進められていること」について説明していこう。

昨今、クルマには高い燃費性能が求められている。で、それを成し得るには軽量化もキーポイントの1つとなる。車重が軽ければ軽いほど、燃費性能的にアドバンテージを発揮する。

とはいえ、走行性能や安全性能に関する部分においては他に優先すべきことが多々あるので軽量化は二の次になりがちだ。逆に、走行性能や安全性能に直結しない部分は、軽量化が必須となる。スピーカーもしかりだ。

しかしながらスピーカーは実は、高性能なモデルほど重い。フレームは強靱である方が振動板を動かそうとするエネルギーをロスしにくくなり、磁気回路も強力なほど音に効く。で、フレームも磁気回路も、強靱で強力なものにしようとすると必然的に重くなる。

ところが純正スピーカーは、その方程式の逆を行っている。フレームは華奢になりがちで、磁気回路も小さく仕上げられることが多い。結果、音質性能もそれなりになってしまうのだ。

対して市販スピーカーは、音質性能のためにコストを注げる。もちろん廉価なモデルではかけられるコストの天井は低いが、それでも純正スピーカーと比べたら多くのコストを注げる。

ちなみに、もっとも廉価な市販セパレート2ウェイスピーカーの価格は大体、1万円台の半ばくらいだ。このレベルでも純正スピーカーと比べてかなり高品位だ。そしてそれに対して倍の価格となる3万円のスピーカーはぐっと品質が上がり、さらにその倍の価格となる6万円のスピーカーともなると、純正スピーカーとは雲泥の差となる。

市販スピーカーの一例(フォーカル・PS 165 FXE)。

スピーカーを換えてもその実力が発揮されないこともある!?

このように純正スピーカーと市販スピーカーとの性能差は大きく、ゆえにスピーカー交換を行えば聴こえてくる音の質はガラリと変わる。

しかし、スピーカー交換をしても得られるメリットが少ないケースも有り得ている。それはどうしてなのかというと…。

というのも近頃は、もともと「サウンド制御が施されている」ケースが増えてきた。そうであると、音楽信号の“帯域分割”がシステム内で実行されることとなる。つまり純正スピーカーがセパレート2ウェイの場合に、ツイーターには高音の信号だけが送られて、ドアに装着されているミッドウーファーには中低音の信号だけが送られることとなる。

そのようなケースでスピーカーだけを換えても、その設定が交換するスピーカーの性質に合わないとそのスピーカーだからこその性能を発揮できない。

そのようなケースではむしろ、メインユニットを交換するか、またはソースユニットとプロセッサー(サウンドチューニングを行う機器)をセットで導入した方が良い結果が得られやすくなる。そうすればまっさらな状態からサウンドチューニングを行えるので、スピーカーが純正のままでもある程度の高音質化が図れるし、スピーカーを交換した場合にも交換するスピーカーにとってベストなサウンドチューニングを施せる。

逆に、サウンド制御が成されていない純正オーディオシステムの場合は、スピーカー交換は特に有効だ。純正スピーカーを市販品に換えることで、音の質がぐっと向上する。トライする価値は相当に大きい。

今回は以上だ。次回もスピーカーに関連した“素朴な疑問”の解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《text:太田祥三》

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