徹底的に音にこだわろうとする「ハイエンド・カーオーディオ」という楽しみ方の、その魅力に迫っている。今回は「ケーブル」にスポットを当ててみる。「ケーブル」にも、スピーカーやアンプにかけるのと同等な予算が投じられることもある。その効果とは…。
信号の伝送過程でも、情報のロスが起こり得る!?
これまでの記事の中で説明してきたとおり、「ハイエンド・カーオーディオ」の世界では超高級ユニットが使われることが多い。そして実は、ケーブルにも超高級品が存在していて、「ハイエンド・カーオーディオ」の愛好家の多くはケーブルにも多くの予算を割いている。ケーブルは、スピーカーやパワーアンプとは異なりメカではない。しかし、これに何を使うかでも最終的なサウンドクオリティが変化するからだ。
ケーブルの質が音に影響を与える理由は以下のとおりだ。前にも説明したとおりカーオーディオシステムの音質を上げるには、「もともとの音情報のロスをいかに少なくできるか」、ここのところにかかってくる。高級なパワーアンプやスピーカーを使っても、もともとの音源に含まれていない情報を足すことはできない。高性能なユニットを使うのは、もともとの情報をそのまま再現するためだ。
で、情報のロスは信号の伝送過程においても起こり得る。例えば純正ケーブルを用いても信号の伝送は行えるものの、実は情報を100%そのまま送り届けられているわけではないのだ。
さらに信号の伝送過程においては、外来ノイズの影響も受けがちだ。クルマのボディには電気が流れていてその影響を受けることもあり、また車内にはノイズ源と成り得るものがさまざまある。それらへの対策も必要となる。
その点高級ケーブルでは、伝送においての情報のロスが限りなく少なくなるように導体の質が高められていて、さらには外来ノイズの影響を受けにくくするような配慮もされている。結果、より高音質に音楽を再生できるのだ。
上級スピーカーやパワーアンプが買えるほどのスピーカーケーブルも多々ある!
続いては、高級ケーブルにはどのようなものがあるのかを紹介していく。まずはスピーカーケーブルから。
ちなみに市販品の中のもっともリーズナブルなカー用スピーカーケーブルは、1mあたり200円程度だ。なおこのクラスのモデルでも、純正ケーブルとの性能差は明らかにある。
で、高級ケーブルはどのくらいの価格になるのかというと…。例えば国産ハイエンドケーブルブランドのM&Mデザインのラインナップを見てみると、まずエントリーモデルとして『SN-MS1200』があり、当品の価格は1mあたり680円(税抜)となっている。これでも最廉価な市販ケーブルに対して3倍以上の価格であるので、それと比べて高い音質性能を発揮する。
そして同社は、最上位モデルとして『SN-MS9500 The ONE』を擁している。で、こちらの価格はなんと1mあたり1万円(税抜)だ。市販スピーカーケーブルの最廉価モデルとの価格差は、ざっと50倍もある。
ところで以前の記事で、高音質を追求する際には「マルチアンプシステム」と呼ばれるシステムレイアウト(スピーカーユニットの1つ1つにパワーアンプの1chずつが割り当てられる様式)が採用されることが多くなると説明したが、当システムが採用される際にはスピーカーがフロント2ウェイだった場合、スピーカーケーブルは4本必要になる。
で、仮に1本あたり3m欲しいとなると計12m分を購入することとなり、『SN-MS9500 The ONE』を使用するケースでは合計12万円の費用がかかる。つまりスピーカーケーブルだけで、そこそこのスピーカーが買えるほどの予算が必要となるわけだ。ただし、そのコストを投じただけの結果は得られる。そうでなければこのようなケーブルは存在していないし、使われることもない。
ラインケーブルはさらに高級化する!?
次いでは、ラインケーブルについてみていこう。ちなみにラインケーブルは、さらに高額化する傾向が強い。
その理由は以下のとおりだ。ラインケーブルはメインユニットとパワーアンプ間、もしくはプロセッサーとパワーアンプ間を繋ぐケーブルなので、その間を流れる音楽信号はパワーアンプで増幅される前の微弱な状態だ。つまりデリケートなので、ケーブルの質を高める必要度も高くなり、結果、高額化する傾向が強くなるのだ。
さらにはラインケーブルは、他のケーブルと比べると構造が複雑だ。1本のケーブルの中でプラスとマイナスの両方の信号が流れるようになっていて、さらにはLchとRchのケーブルが2本1組になっている。また、ケーブルの両端にはプラグが装着されている。このように、手をかけられる範囲が他のケーブルよりも多いのだ。
では、どのようなモデルがあるのかを紹介していこう。同じくM&Mデザインでは、もっともリーズナブルなモデルとして『SN-MA1700』を用意していて、当品の場合は0.5mのモデルが9000円(税抜)だ。そして最上位モデルである『7N-MA9000CORSA』では、同じく0.5mのモデルが13万円(税抜)だ。
ところで「ハイエンドシステム」では、プロセッサーとパワーアンプとが近接配置されることが多い。そうするとラインケーブルを短くできるので、より高級なモデルを使いやすくなる。
ではまとめよう。このように、ケーブルにも超高級品がさまざまある。そしてそれらは価格に見合った性能を発揮する。そして、どのようなケーブルを使うか吟味するところも「ハイエンド・カーオーディオ」においての楽しみどころの1つともなる。
なお、このことが事実か否かは、実際に体感してみると納得できる。「カーオーディオ・プロショップ」の中には、ケーブルの比較試聴ができるようになっている店舗が多々ある。または、ケーブルの比較試聴会が開催されることも少なくない。そういった店舗を探して訪れたり試聴会に参加したりして、ぜひケーブルによって音が変わることを体験して欲しい。聴けば新たな発見が得られることは間違いない。
今回は以上だ。次回も「ハイエンド・カーオーディオ」の魅力についての解説を続行する。お楽しみに。
太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。
《text:太田祥三》