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【ホンダ ステップワゴン 新型】コンセプトは「素敵な暮らし」、デザインの見所は

自動車ニュース

ホンダ・ステップワゴンエアー全 24 枚写真をすべて見る

ホンダはメディアに新型『ステップワゴン』を公開し、そのコンセプトやデザインに関し説明を行った。

◆ミニバンネイティブがターゲット

本田技研工業四輪事業本部ものづくりセンター完成車両開発統括部車両企画管理部LPLシニアチーフエンジニアの蟻坂篤史氏によると、ステップワゴンのターゲットユーザーは、「30歳から40歳台の子育て期で、年収は400万円から800万円台の家族」と定義。その特徴として、「既に小さい頃からミニバンがあり、そのミニバンに慣れ親しんで育って来た、いわばミニバンネイティブだ」とし、そういったターゲットに望まれるステップワゴンを企画したとのことだ。

さらに、このターゲットユーザーは、「テロ、経済恐慌、自然災害等を小さい頃から見ており、安心、信頼を求めている。また、共働きが7割を超えており、仕事、子育てなど、とにかく時間に追われており、わずらわしさからの解放、自由を求めている」という価値観があることも分かった

ではそういったユーザーはミニバンに何を望んでいるのか。それは、「あらゆる用途に使え、生活を豊かにしてくれるアイテム」と蟻坂氏。一方、先代では、「購入重視重視点上位項目の、外観デザインとシートアレンジが負けていた。つまりミニバンの基本価値が、競合車に対して若干劣っていた」という。また、「先代はワクワクゲートというユニーク装備に注力しており、若干プロダクトアウトな傾向があった」と振り返る。

そこでグランドコンセプトを、「ユーザーがミニバンに求めている、生活を豊かにしてくれるアイテムとして開発するために、素敵な暮らしをターゲットユーザー、お客様に手に入れてほしいという思いから、グランドコンセプトを“素敵な暮らし”とした」。

◆2つの方向性

内外装のデザインの方向性は、「どんなシチュエーションでもマッチするデザイン」とされた。「どんな風景の中でも違和感なく、どの角度から見ても綺麗に見えるデザインを目指した」と蟻坂氏。「奇をてらったようなことは一切しないが、どこから見ても綺麗なシルエット。なぜか良いと感じさせてくれるようなデザイルを目指した」という。

その上で、ミニバン購入意向者のスタイリング志向性を調査。「約7割が従来の高級、オラオラ、スタイリッシュを求め、残りの約3割がナチュラルなイメージを求めており、2つの指向性に分かれていた」と結果を分析。そこで、「従来の安いものに色々な装備などを足して高くするのではなく、価値観、世界観が違う2つのグレードを用意」。それがシンプルアンドクリーンのAIR(エアー)と、スタイリッシュアンドクオリティーのスパーダという2つのグレートだ。これにより、「お客様の選択、自由の幅を広げられるようにした」とコメントした。

◆塊勝負

AIRのデザインにおけるサブコンセプトは、「素敵な暮らしを実現するライフエクスパンダーボックス」と説明するのは、本田技術研究所デザインセンターオートモービルデザイン開発室プロダクトデザインスタジオアシスタントチーフエンジニアの花岡久和氏だ。「主張の強いクルマによって、お客様のライフスタイルがクルマ中心になるのではなく、お客様それぞれが主役で、お客様のスタイルを素敵に引き立てる存在。家族の可能性を広げてくれるような存在を目指した」という。

そして、「安心と自由という2つのお客様に提供したい価値が、見ただけで伝わるようなものを目指した。安心でしっかりしたキャビンと、それを支えるしっかりした足回り。どこにでも行けそうで、アクティブセーフティを感じる。そういうところが見ただけで伝わるような、“塊勝負”のデザインだ」と述べる。具体的には、「説明的なディテールを一切持たない、塊だけで語りつくせ、そこに最小限のディテールを追加した形だ」。

フロントは、「いまのミニバンでは逆に珍しくなった、すっきりしたシンプルな顔立ち。しかしシンプルなだけで、あっさり作りすぎてしまうと寂しく、商用車みたいになってしまうので、繊細に部品割りひとつとっても、綿密なチューニングを施して、どこからどう見ても質感の高い乗用車に見えることに注意した」。例えば、「メッキも繊細に細いストライプ状で通しているが、これで車両をワイドに見せており、この断面ひとつとってもかなりのチューニングを繰り返した」とこだわりを明かす。

花岡氏が最も苦労したのは、目つきの作り方だという。「表情を持たせたいが可愛くなりすぎてもいけないし、人を威嚇するような怖い目になってもキャラクターに合わない。精悍でありながら、親しみもある、そういう目つきを作るために非常に苦労した」と教えてくれた。

もうひとつ、サイドビューのこだわりとして、Aピラーの付け根を大きく後ろに引き、立てたことがある。「視界の良さや、運転のしやすさや居心地といったところに注力しているので、その考え方ありきで、チームで議論し、その結果をエクステリアにフィードバック。つまりエクステリア優先で作ったものではなく、あくまでお客様が使いやすいことを優先したのだ」と、ユーザー目線であることを強調。その結果、「Aピラーを立てて視界を確保したおかげで、しっかりした安心感があるノーズが作れた」という。同時にベルトラインを上げたことで、「ボディにしっかりした厚みが出て、より安心感が増した」とも話す。

そのサイドビューはキャラクターラインの少ないものだ。「これを一定の断面でそのまま流してしまうと、ちょっと面白みのない電車のような貧相な塊になってしまう。そこで、ドアハンドル下回りを中心に張りを上下に持たせた。そして、上から見た輪郭ではサイドシル上面のBピラー周りが一番張り出しており、箱型というよりは樽型に近い形状だ。これらにより、退屈ではない緊張感のある塊となった」と花岡氏。

また新型では3代目まであった太いDピラーが復活。「これによってがっちりとして守られている安心なキャビンを作れた」。もうひとつ初代や2代目のオマージュとして、縦長のテールランプも採用。花岡氏は、「たまに走っている姿を見かけるが、いま見ても非常にすっきりして良いなと思うので、今回明快なオマージュを入れた。これにより誰が見ても間違いなくステップワゴンとわかってもらえるだろう」と述べる。もちろんそれだけではなく、「この縦基調のテールランプと横長のリフレクターで、積載性が高そうなしっかりしたミニバンだと感じられるリアビューになった」とコメントした。

◆精悍に、伸びやかに

一方のスパーダのコンセプトについて、ホンダアクセス商品企画部デザインブロックスタッフエンジニアの大西優一氏によると、「もうひとつの素敵な暮らし、プライムライフボックスだ」という。「家族をしっかり守る存在にしたいという思いから、みんなが安心して自由にどこまでも上質な移動ができるように、デザインコンセプトをプライムライフボックスデザインとし、力強さ、伸びやかさ、そして品格をキーワードにデザインを進めた」と述べる。

フロントは、AIRに対してオーバーハングを20mm伸ばし、「各部品の配置には精悍な顔つきになるように徹底的にこだわり、クルマの質感をより高める作り込みに注力」。各所に置いたメッキも、「効果的な位置、量を徹底して整理し、金属を削り出したような断面にもこだわった。このように緻密な処理が随所に施されている」という。

サイドはAIRと違い、「より低く、そしてより伸びやかなシルエットを作っている」という。フロントロウを周って来たメッキは、サイドシルを途切れることなく通過し、リアに周る。サイドシルの断面も、「前後真ん中で微妙に変化を与え、よりタイヤが踏ん張って見えるように、前後を少し(内側に)入れて作り込んでいる」と話す。またBピラーガーニッシュもピアノブラックにし、さらに上質さを演出している。

テールゲートスポイラーも、サイドビューの伸びやかなシルエットを作る重要な役割を担っている。大西氏は、「先日公開されたティザーですごくクルマが長く見えるというのも、このテールゲートスポイラーでそう感じさせている」とコメントした。

リア周りはフロント同様、「力強さを表現」。そのためにリアオーバーハングを20mm伸ばし、さらに下端を10mmぐらい下げることで、「より分厚く強い塊を作っている」。テールゲートスポイラーも、「しっかりと角を張らせて、よりスクエアに大きく見えるように処理した」と説明。前述のクルマを1周しているロワーメッキも「スパーダのリアをより大きく見せる効果を生みだしている」と語る。

このロワーメッキのために、リアのリフレクターをリアコンビの中にインストール。その結果、「機能部品を集約することが出来、スパーダのリア周りがスッキリし、より上質な雰囲気を出すことが出来た」と述べた。

◆もっと遠くに行きたくなるインテリア

次にインテリアだ。「6世代目ステップワゴンは歴代で築き上げてきた家族のための大空間を、さらに進化させた」と思いを語るのは本田技術研究所オートモービルデザイン開発室プロダクトデザインスタジオアシスタントチーフエンジニアの矢口史浩氏だ。「ミニバンネイティブ世代にもっと安心できること、そして家族の成長とともに自由に柔軟な空間を使えるということを大切に開発した」という。そして、「もっと遠くに行きたくなったり、もっと遊んでみたくなったりする気持ちを後押しできるような空間づくりを行った」と話す。

矢口氏は、「家族みんなが安心して過ごしてもらうために、まず行ったのは空間全体を心地良い素材で包み込むような空間作りだった」と述べる。エクステリアデザインは、フロントガラスの下端、そしてサイドガラスの下端が、一直線で水平に繋げている。インテリアでは、「そこに沿うようにソフトパッドを配置。その結果どの席に座っても外の景色が良く見えるようにしている」という。

また、2列目、3列目の着座位置を先代よりも高めに設定。それに加えてヘッドレストの形状を工夫し、「抜けの良い視界を作り出した。ホンダ史上最大空間を感じ取ってもらえるだろう」とその広さに自信を見せる。

パッケージデザインを担当した本田技術研究所デザインセンターの市川聡子氏によると、視界に関しても相当なこだわりがあるという。「交差点で歩行者を見つけやすくするために、Aピラーを70mm手前(後方)に引いた。また三角窓を廃止し、ドアミラーをドアスキンマウントにすることで、見えるエリアを増やし、さらにボンネットフードは、覗き込んだ時に端がしっかり見えるように工夫した」と述べる。矢口氏も、「すっきりとした視界には非常にこだわった」という。「ワイパーはもちろん、フロントのデフロスターやスピーカーなど、運転席に座った時に(それらがあることで視界が)見えにくくならないように隠している。またガラスに反射して煩わしさを感じさせないように、アッパー面に複雑な造形は入れ込まずフラットにした」とこだわりようだ。

助手席前にある上面部分などを含め、手が触れるところには、「良い素材を使い、ステッチを入れるなどで非常に上質なつくりをし、実はタグなども作った」と矢口氏。助手席前のアッパー部分を開けると、「ボックスティッシュがすっぽりと入るようにユーティリティも考慮。下にも薄型のボックスティッシュが入る」とのことだ。

矢口氏によると2列目にもこだわりがあるという。それは超ロングスライド機構だ。「スライド量は他社を圧倒するくらいのレベル(最大865mm)である」という。さらに市川氏はこの最大の特徴として、「シートサイドにあるレバーによりワンタッチで色々と動かせる。レバーを半分引くと、前後に動かせ、更に一番上まで引くと360度自由に動かすことが出来る」と説明。例えばシートを中央に寄せ一番前に移動させることで、「ドライバーから赤ちゃんに手が届く、赤ちゃんお世話モードが実現出来る」など様々な使い方が想定されている。更に2列目シートはベルトがシートバックに内蔵になっているので、チャイルドシートを装着したままでも、3rdシートへの乗降性を確保している。

また矢口氏によると、「フロアのピースマットの敷き方や色遣い、部品と部品の合わせにも気を使った。床下がすっきりしていると広さを感じ取ってもらえるので、こういったところもポイントだ」という。また、3列目はダイブダウンというステップワゴンオリジナル機構を採用。ただし、先代は「少しシート座面が硬くて柔らかさを感じ取ってもらえなかったので、今回20mmも厚くし、座り心地を向上させた」。更に1、2列目だけでなく3列目のサイドにも柔らかいソフトパッドを配し、「どのシートでも心地の良い空間が作り出せている」とこだわりを語った。

《text:内田俊一》

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