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【BMW X6 新型試乗】主張してくるのはエクステリアだけじゃない…中村孝仁

自動車試乗記

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X7よりもはるかにデカく見える

3サイズ、全長4945×全幅2005×全高1695mmである。まあ、数値的には極端に大きな存在ではない。ところが何故かとてつもなくデカく見える。そりゃあ、角張った『X7』はこれよりもはるかにデカく見えるのだが、とはいえこいつ、相当なデカさだ。

E、F、Gとコードネームの正常進化は同時にシャシーの進化でもあるのだが、Gの時代はモジュラー化の影響かCLARプラットフォームと呼ばれている。そのCLARを用いて2020年モデルとして登場したのが現行『X6』である。まあ、簡単に言えば『X5』のクーペ版だ。

最近ドイツでは何でもすぐにクーペ化してしまうのが流行りのようで、2ドアクーペは当たり前としてBMWはこれが4ドアになるとグランクーペなる名前が付き、SUVになると(BMWは常にSAVと呼ぶが)Xの後ろに偶数が並ぶという寸法である。

色々と考察してみた(そんなことするなと言われそう)が、結局デカく見える理由はその猫背風スタイリングにある気がしてならない。何故ならこのクルマが最もデカく見えるのはリアクォーターから見た時、つまり走り去って斜め後方から見たときにそう感じるからである。

大海原を行くクルーザーに乗っている気分

まあ、デカさの話はこれくらいにして広報車両を止めてある地下駐車場から都会の雑踏に乗り出すと、見晴らしの良さと視界の良さ(ただし前方向だけ)が手伝って、まさに大海原を行くクルーザーに乗っている気分。そこへもってきて図体もデカいからまさに「大船に乗った気持ち」とはこのことをいう。と結局またデカさの話になった。

搭載エンジンは直列6気筒3リットルのターボディーゼルである。直6は言うまでもなくBMWのお家芸的なエンジン。ところが最近はライバルのメルセデスが直6に宗旨替えして、特にディーゼルはとてつもなく良いエンジンを作り上げてきた。だから、どうもBMW直6の旗色が悪いのだが、やはり乗ってみると流石にそのトルク感といいスムーズネスといいおよそディーゼルに乗っているという印象は希薄である。

ボンネットを開けるとその直6ディーゼルがまるで井桁の中にすっぽりと納まったようなエンジンルームが姿を現す。井桁は昔だったらさしずめストラットタワーバーなのだが、今はエンジンルームの前後を菱形に囲う補強材やこの井桁の前半分のような補強がBMWでは一般的なようである。

主張してくるのはエクステリアだけじゃない

最近でこそ少しは収まっているものの、一時はグリルがどこまで拡大するのかと少々不安になったことがあるが、少しは収まりつつあるようだ。X6も時代が変わるごとにグリルが拡大した。しかも現行X6のそれはなんと夜になると照明が点灯するというおまけつき。夜間にグリルがやんわりと内側から照らし出されるのである。

さすがになだらかな加工曲線を辿るルーフのおかげで、ラゲッジスペースは当然ながら天地方向には小さい。もっともおよそ必要にして十分と思われたし、床面を開けるとそこにはかなり巨大な床下収納が姿を表す。しかも蓋部分はご丁寧にダンパー付きである。

Xの文字がまるで空中浮遊するように埋め込まれたスワロフスキー製のクリスタルシフトノブを取り巻くセンターコンソールはカーボン調。対照的にシートやドアは白の本革でまとめられていて、エクステリアの存在感同様、インテリアも結構主張しているのがこのクルマ。

静かでスムーズなエンジンと、可変ダンパーが織りなす快適至極な乗り心地も手伝って、のんびりと走ればまさに大船に乗った気分になる。まあよほど広いところでない限り飛ばそうとは思わない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

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