ヤワで中途半端で方向性を決めあぐねたバランスの悪さで、今の日本で存在意義はあるのかと思っていたホンダ『シビック』。しかしついに、ここまでふりきったかという思いだ。
デザインはクーペ風。後方にかけてすらりと落ちるように描かれたラインは、垢抜けている。トランクのふただけが開くのではなく、リアガラスごと大きく開く5ドアは、ワゴンやミニバンに親しみ、「荷物と人のいる空間は分ける!」という古臭い考えとは無縁の世代からも受け入れやすい。
フラットな路面での楽しさったらない
そして、乗り心地。タイヤをまわした瞬間から感じる、じわりと路面のざらつきすら伝わってくるリニアな手応え。速度を上げ、コーナーを走らせても、びしっとゆるがないハンドリングは爽快である。
ボディがかっちりと作られているのに加え、アジャイルハンドリングアシストという、コーナー内側の前タイヤなどに微妙にブレーキをかけることで得られる安定感である(おみこしが右に曲がるとき、右前を担当する担ぎ手が歩みを止めることで、右に曲がりやすくなる理屈と同じ)。
フラットな路面で走らせているときの楽しさったらない。そう、フラットならば。
サスペンションの固さ、なにものぞ!という方々に
問題は、路面が荒れているときや、高速道路のつなぎめである。はねる。上下に揺れる。これがつらい。これまで私は「サスペンションが硬いなどと言うのは、年寄りの証拠だ。そんなもの気にせずにクルマを作って欲しい」と言い続けていた。
しかし、今回ばかりは、高速道路の連続したつなぎめで胃が踊っちゃってつらいのである。これはもう、私が歳をとった証拠であろう。それは間違いない。そう、私が悪い。悪いのだが、胃がつらいことも間違いない。このハンドリングの楽しいクルマは、サスペンションの固さ、なにものぞ!という方々に乗りこなしていただきたい。
ロングツーリング重視ならハイブリッドに期待?
カタログ燃費は、1リットルあたり16.3km。今回、高速7:田舎道2:都内1で走った結果(高速も田舎道もそれぞれ制限速度のマイナス10km/h程度)は、1リットルあたり15kmちょいという数字がインパネの消費燃料に記されていた。タンク容量は47リットルなので、700kmは走れる計算になるけれど、今回は500kmを超えるとタンクの針の動きがかなり気になってくる。ほぼ渋滞なしだったけれど、渋滞がもっとあれば、もう少しドキドキするだろう。
500kmちょいで給油ストップは、面倒くさい。ロングツーリング重視の使い方なら、もう少しあとに出てくるハイブリッドのほうがお勧めである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。
《text:岩貞るみこ》