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【スバル BRZ 新型試乗】「スポーツカーである以前にスバル車」である…渡辺陽一郎

自動車試乗記

スバル BRZ 新型全 16 枚写真をすべて見る

最近はスポーツカーの売れ行きが下がり、車種の数も激減した。そのために新型になった『BRZ』と『GR 86』の話題性は高い。注目されるのは、BRZとGR 86の操舵感覚や走行安定性の違いが、先代型以上に際立っていることだ。基本部分を共通化した姉妹車の運転感覚に、このような違いを持たせることは珍しい。

両車の違いは、カーブを曲がる時の挙動に集約される。ここではBRZについて述べる。

BRZのカーブでの挙動は


まずカーブの入口で操舵した時の反応は、後輪駆動のスポーツカーとあって正確性は高いが、特に機敏な印象は受けない。

この後、カーブを曲がりながらアクセルペダルを踏み増すと、旋回軌跡を拡大させず、操舵角に忠実に回り込んでいく。続いてステアリングホイールを内側に回しながらアクセルペダルを踏み増すと、車両を回り込ませながら、操舵に対する反応が少し鈍くなってくる。

そこでさらにステアリングホイールを内側へ回しつつ、アクセルペダルを踏み増すと、次は後輪の横滑りに転じる。

このように最初は操舵角に対して忠実に向きが変わるが、次は後輪の接地性を安定方向に優先させ、操舵感が鈍くなる段階が訪れる。そこからさらに積極的な操作をすると、後輪の横滑りが始まるわけだ。

スポーツカーである以前にスバル車である


この過程は、スポーティな運転を安全に楽しむ上で、大切な役割を果たす。ドライバーが車両の旋回状態を常に把握できて、なおかつ速度を高めすぎたと感じた時は、いつでもそれ以上に変化するのを抑えられるからだ。挙動の変化を安定方向に戻すことができる。

特に前述の後輪の接地性を安定方向に優先させて、操舵感が鈍くなる段階に入ると、「ここからは運転が難しくなるよ」と感覚的に伝わってくる。


このBRZの設定は、安全を優先させるスバルらしさだ感じた。開発者は「BRZでもインプレッサでも、クルマ造りの考え方は同じ」と述べた。

BRZの優れた走行安定性は、4輪(特に後輪)が路面を常につかんでいることで達成されている。従ってタイヤが路上を細かく跳ねるような動きも抑えられ、硬めではあるが、乗り心地も適度な引き締まり感が伴って快適だ。この特徴も『レヴォーグ』などと共通で、BRZは「スポーツカーである以前にスバル車」なのだと実感した。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

《text:渡辺陽一郎》

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