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【シトロエン C5エアクロスSUV PHEV 新型試乗】コンフォートモード無しでもコンフォート…中村孝仁

自動車試乗記

シトロエン C5エアクロスSUV プラグインハイブリッド全 31 枚写真をすべて見る

プジョー『508 ハイブリッド』に続けて試乗したのは、同じPSAのシトロエン『C5エアクロスSUV プラグインハイブリッド』である。この2台、実はパワートレーンを共有したPHEVだ。

つまり、1.6リットル、ピュアテック直4エンジン(180ps、300Nm)と電気モーター(110ps、320Nm)を組み合わせ、e-EATと呼ばれる8速ATを介して、前輪のみを駆動するPHEVである。

プジョーとの違いは足回り

ではどこが異なるかというと、プジョーの場合は電子制御サスペンションを用いていて、足の硬さをドライバーがチョイスできた。このためドライブモードにコンフォートというチョイスがあったのだが、シトロエンの場合は足は通常の鉄バネを用いたものだから、そのコンフォートモードが無い。だから、ドライブモードはエレクトリック、ハイブリッド、それにスポーツの3つになる。

ただ、鉄バネだからといってこれが既存のガソリンやディーゼルエンジンを搭載したC5エアクロスと一緒かというと、実は違う。リアサスペンションは従来のトーションビームアクスルから、マルチリンクへと変更されているのだ。何故この変更が行われたのか、輸入元のPSAジャパンによれば、バッテリーを後席床下に置くことで、リアサスペンションの負荷が増大し、それに対処するためとのこと。ただ、少なくともトーションビームよりは大きなポテンシャルが与えられていることは間違いない。

といって、では乗り心地が大きく向上しているかといえば、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションを用いるなど元々快適だったことで、確かに変わっているという印象があるわけではなかった。プジョーのように敢えてコンフォートモードが無くても十分にコンフォートだということである。

他のPHEVと差別化できるポイントは

PHEV車の場合そのすべてが電気モーターで発進し、状況に応じてエンジンがかかり内燃機関の駆動へと移行する。もちろん使用するモードにもよるし、充電状況によっても異なるが、その基本は同じと感じる。だから、最近PHEVに乗るとどれも同じように感じられ、比較的最近隣に乗ったパッセンジャーの方は、「この手はどれに乗っても同じですね」と独り言のように呟いた。

確かにそうだ。昔のようにエンジンが快音を立てるわけでも、転舵した瞬間に鋭いノーズの切れ込みを実感出来るほどシャープな運動性能を求められるわけでもない。本当に感じ取ることの出来る部分が希薄になっていると思う。

このC5エアクロスの良さは、やはりセンスの良いデザイン、同じくセンスの良い内装。そして快適な乗り心地などで、そこへPHEVの滑るような出だしやデフォルトのエレクトリックモードで走った時の滑るような走行感覚などが魅力だが、最後の滑るような云々は、ほかのPHEVに乗っても同じ感覚が得られるので、ここは差別化できない。

PHEVの良さを活かすには

そしてこのPHEVの良さを活かすには自宅に充電設備があることが絶対条件だと感じる。WLTCモードによる電動走行可能距離は65kmということだが、灼熱の日本では逆立ちしてもそんな距離を叩き出すのは不可能。12時間以上かけてしっかり充電したところで、走行可能距離として表示されたのは40kmがMAX。そして実際に走行できる距離といえば30kmプラスがいいところだった。裏を返すと家から往復30km以内の走行であれば、ガソリンを一滴も使うことなく完結できる。無類の面倒くさがり屋の私でさえ、帰宅するといそいそとラゲッジルームから充電ケーブルを取り出して、犬のリードよろしく繋ぐのが日課となった。

その恩恵は燃費に顕著な効果となって表れる。そうした状況、つまりいわゆるチョイ乗りが続いている限り、車載コンピューターによる燃費は最大で19km/リットルまで伸びた。撮影段階では14.0km/リットルであったが、それでもガソリンエンジン搭載車としては素晴らしい燃費であったと思う。最終的には320kmほどを走って13km/リットル台に落ち着いた。というわけだから、長距離を一気に走るようなケースでは30数kmの後に必ず内燃機関が目覚めガソリンを消費するので、燃費は落ちてくる。

走行中気付いた面白いことは、内燃機関が働きガソリンで動いている限り表示されるトランスミッションはD8とかD4など、Dレンジで何速に入っているかを示すが、例えば高速上でもアクセルを戻して空走に近い走行をすると、電気に切り替わり(電動走行可能表示がゼロでも)、単にDとのみ表示される。

エンジンがかかる時のショック以外に不満はない

とても快適で優雅なイメージを持つC5エアクロスSUV ハイブリッドだが、ネガがなかったわけではない。一つは電動走行から内燃機関が目覚めてエンジンがかかる時にかなり明確なショックを伴うこと。これはプジョー 508ハイブリッドでは感じられなかったことで、個体差という理由も考えられるが、もう一つはエンジンがかかるとこちらも明確にその振動と音を室内に伝えてきたことなので、個体差とは考えにくい。

それを除けば、走りに不満点はない。メータパネルの表示なども如何にもシトロエン的でプジョーよりも独創性を感じる。やはりシトロエンはとても快適なクルマである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

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