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【VW パサートヴァリアント 新型試乗】使いやすさに照準、変わらぬパサートらしさ…島崎七生人

自動車試乗記

VW パサートヴァリアント 新型(TDI R-Line)全 22 枚写真をすべて見る

どの世代も変わらない「パサートらしさ」


VW『パサート』の試乗のたびに思うのは“安定・安心”ということ。かろうじて初代B1(1976年=日本)からの各世代には、リアルタイムで試乗経験があるが、どの世代も乗ると「ああ、パサートだな」と思わせられる。激動の世の中で貴重な存在である。

今回の試乗車はヴァリアント(ステーションワゴン)の「R-Line」。ひと足先に試乗済みの「オールトラック」と較べると、固定式のルーフアンテナ込みの全高がヴァリアントのほうが25mmほど低く(1510mm)、フェンダーアーチモールの有無の違いで、25mm幅が小さい(1830mm)。ホイールベース(2790mm)と全長(4785mm)は同数値だ。

つまり、おおよそで言うとヴァリアントはオールトラックよりも30mmほど着座位置が低くなる訳だが、なるほど、そのことに神経を集中してみると、ヴァリアントは乗り込みから、走行中の運転視界やクルマの挙動が、高さ30mmの差分だけスッキリと安定した印象がある。

“アナログ時計喪失の件”を除けば文句なしの居住スペース


過日のオールトラックの試乗記の時よりも語気を強めて言うと、インパネ中央の粋なアナログ時計をなぜ廃止してしまったのか! 百歩譲って直下の加飾パネル部をスッキリさせたかった意図はわかるが、ハザードランプスイッチはアナログ時計の“跡地”に追いやられ、そこはまさしく車名入りの穴埋め用化粧板になります……といった風のフィニッシュなのが(ごく個人的な感想だが)とても残念。合理的な根拠をひとつ加えておけば、運転中、時刻を知りたいときにサッと目がいく一等地でもあるのがこの場所だ。

とはいえ“アナログ時計喪失の件”を除けば、居住スペースに関しては広さ、快適性ともに文句なしだ。


シートはR-Line専用表皮となるナパレザーが奢られ、前席の背もたれは“R”のロゴ入りで、ラグジュアリーというよりスポーティな趣。とはいえシートサイズがタップリした安心感の高い座り心地は『パサート』の美点。何気なく運転席にはシートマッサージ機能も標準装備される。オートエアコンが前席左右、後席と3ゾーンの独立で温度設定可能なのもありがたい。同様に広いラゲッジスペース(650~1780リットル)は使いやすく、ステーションワゴンではあると嬉しいラゲージネットパーティションも標準装備と手抜かりがない。

実用シーンでの使いやすさに照準を合わせた動力性能


試乗車はTDIモデルで、インタークーラーターボ付きの2リットルターボディーゼル(190ps/40.8kgm)を搭載。これに湿式の7速DSGの組み合わせ。さらにドライビングプロファイルを好み、走行シーンで切り替えられるDCC(アダプティブシャシーコントロール)も標準で備わる。

4MOTIONのオールトラックとの比較では2WDということで車重が1610kgに抑えられていること(オールトラックの車重は1760kg)と、車高の差、さらにタイヤサイズの違い(ヴァリアントR-Lineのタイヤ径は19インチだがプロファイルは235/40とオールトラックの245/45よりもスリムだ)により、ステアリング操作に対する無駄な挙動とタイムラグがより小さく(少なく)、気持ちよく走らせられる。

19インチタイヤながらDCCを「スポーツ」に切り替えても、後席でも乗り心地への悪影響はほとんど気にならないレベル。動力性能は実用シーンでの使いやすさに照準を合わせた設定だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《text:島崎七生人》

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