システムのサウンドクオリティを成長させていくことも、カーオーディオの楽しみどころの1つだ。とはいえ、コストの掛かることは頻繁には行えない。しかし、お手軽な方法がさまざまある。当特集では、それらを多角的に紹介している。
今回は、外部パワーアンプの性能をさらに引き出すための“ワンポイント・テクニック”をいろいろと紹介していこうと思う。知恵を貸してくれたのは、福岡県北九州市の実力店、“施音人工房(さうんどこうぼう)”の谷口さんだ。参考になる話がたくさん訊けた。ぜひ、ご熟読を♪
電源配線の端子類をさまざま試してみると、音の変化を楽しめる!
最初に、電源配線に関することから訊いてみた。
「外部パワーアンプにとって電源はとても重要ですから、配線に関連したこともやれることがさまざまあると思います。
まず、プラス電源は普通メインバッテリーから直接引き込む“バッ直”が行われていると思いますが、その配線に使われている端子類の圧着が確実に行われているかを点検してみましょう。万が一緩みがあるような場合には圧着をし直すと、通電が良くなり音にもその影響が現れたりもします。もちろん、施行時にはしっかりと圧着されているはずですが、走行中の振動等で緩むことも有り得ますので確認しておけば安心ですし。ただし、ご自分でされる場合には自己責任のもと安全性に十分注意を払ってください。あらかじめバッテリーのマイナス端子を外しておく等のセオリーがいくつかありますので、慣れていない場合はショップに依頼してください。
で、そのときに端子をより音に良いとされているものに交換してみるのもアリだと思います。端子類は、素材や形状によって案外音が変わります。例えばスズメッキの端子は低域がずっしりとした腰の座った音がする傾向があり、金メッキの端子はバランスは整いながらも高域がキラッとして明るめな音になる場合が多いです。製品ごとでの違いもあり一概には言えませんが。端子の変更はケーブル交換と比べて掛かる費用は少ないので、いろいろと試されると面白いと思います。
そしてご予算があるのなら、パワーケーブルの交換を検討されても良いと思います。なお、よりハイグレードなものに変えるというのが常套手段ですが、太さを変えるだけでも音が変わることがあります。ちなみに当店では、太すぎるケーブルはあまり使わないようにしています。経験上、太すぎないモデルの方が音が良い場合が多いんです。パワーアンプの消費電力に見合う太さを確保する必要がありますが、その範囲の中で太すぎないものを使った方が音の完成度が高まると考えています。
もしも電源ケーブルの比較試聴ができる環境があれば、いろいろと試してみてください。そうしてご自分にとってのベストな電源ケーブルを探してみると楽しめると思います」
アースポイントの見直しや、エンジンルーム内のアーシングの強化も効果アリ!
マイナス側の配線についてはどうだろう。
「マイナス側の配線も、プラス側と同様に端子類の見直しやケーブル交換を試してみましょう。あとは、アースポイントの見直しもやってみる価値があると思います。そもそも通電性の良いポイントにアースを落としているとは思うのですが、より良い場所を探してみるのは無駄ではないです。アースポイントを変えるだけならあまりコストは掛かりませんから、実験的にいろいろとやってみても良いのではないでしょうか。
さらには、エンジンルーム内のアーシングを見直すのもアリです。アーシングも奥が深くいろいろなやり方や考え方がありますが、使用するケーブルのタイプやアーシングポイントをいろいろと試して音を聴き比べてみても良いかもしれません。なお、アーシングをするとクルマが速くなったりもしますから、その意味でもやる意義は大きいです。
また当店では、細かなところまでこだわりたいとおっしゃるお客様のシステムにおいては、リモート線についても手を加えます。これに関しては、ケーブルの質にこだわるより前に、“バッ直”しているプラス線との電位差をなくす工夫を施したいですね。リレーを噛ませて“バッ直”の電流をリモート線にも供給できるように加工すると電位差が解消されて、音に良い影響が現れます」
信号系の配線においてやれることはあるのだろうか。
「まず、スピーカー出力を入力している場合には、スピーカー出力を取り出している部分の端子類を見直したり、場合によっては結線部分をハンダ付けしてみても良いと思います。より確実に結線することで音に好影響が出るはずです」
入力ゲインの見直しも効果アリ! さらには固定方法を改善するのも1つの手!
その他のテクニックについても教えてもらった。
「他では、入力ゲインの見直しをされても良いと思います。ちなみにゲイン設定は一般的には以下のような手順で行われていると思います。まずはメインユニットのクリップポイントを見極めてクリップする手前のボリュームで入力し、そこからパワーアンプの入力ゲインを上げていきます。そして音が歪む直前で止める。このようなやり方がセオリーです。
しかし当店では、必ずしも歪むすぐ手前がベストだとは考えていません。音を聴いてゲインを決めています。歪ませないことは大前提なのですが、その範囲の中でもっとも位相と帯域バランスが整うポイントを見つけ出しています。興味があればぜひお試しいただきたいですね。
また、固定方法を見直しても音をより良くできると思います。もしもカーペットの上にアンプを載せているのなら、そのカーペットの下にボードを敷くとより良い状況が作り出せます。そしてそのボードの材質、厚み、大きさでも音が変わってきます。基本的にはより硬いものの方が音が良くなると考えています。個人でいろいろな材質のボードを試すのは難しいと思いますので、そのあたりについてはショップと相談してみてください。お店ごとでノウハウがあると思いますので。
インシュレーターの使用も効果的です。パワーアンプの下にインシュレーターを敷くことで車両側からの振動の影響を減らせますし、さらにはパワーアンプの内部で発生する振動を効率良く逃がせるようにもなり、そのことも音に少なからず効いてきます。
このように外部パワーアンプの実力を引き出すための小ワザはさまざまあると思います。ご来店いただけましたら、いろいろなご提案をさせていただきます。お近くでしたらぜひ、お気軽にお越しください」
《text:太田祥三》