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【ホンダ アコード 新型試乗】プレリュードを思わせる着座位置と、国産トップクラスの直進安定性…島崎七生人

自動車試乗記

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やっと乗れた新型アコード

やっと乗れた。これには2つの意味があり、ひとつは折りからのコロナ禍で(内情だが)当初3月に予定されていたプレス向け試乗会が“お流れ”になってしまったから。もうひとつは、北米、中国などではすでに2017年から展開済みのモデルだから、だ。

『アコード』としては今回のモデルで10代目、40年以上となる。120を超える国と地域で累計2000万台が販売されてきたというから、ホンダを代表する車種であるのは間違いないが、今回日本に導入される10代目はタイ製で、販売計画は月間300台(!)という。

個人的な歴代『アコード』のトップ3は1位が1976年登場の初代(の実はハッチバック)、2位がリトラクタブルライトと2600mmのホイールベース、4輪ダブルウイッシュボーンを採用し、日本精機製のブルーグリーンのメーター照明がクールで超欧州車調だった3代目(1985年)、3位は1989年に登場し、U.S.ワゴン(クーペも設定された)が誕生した4代目といったところ。上記3世代のころ、筆者は『アコード』の大ファンといっていいくらいだった……。

『プレリュード』を思い出させる低い着座位置


さて、時はずいぶん流れて今度の10代目である。外観はご覧のとおり今あるホンダのカーラインアップ、特に『インサイト』『シビック』と近似したイメージ。ファストバックに見えるが非ハッチバックという、あの形だ。実車に乗って実感したのは、Aピラーが10cm手前に引かれたことによる前方視界のよさ、車両感覚のつかみやすさ。それと運転席からフードがしっかり見えるのも安心感につながっている。

インテリアは、デザインに凝った風ではなく、オーソドックスな雰囲気。セレクタはホンダ車では見慣れたボタン式で、“R”は掘り込まれた部分に指先を入れ手前に押す動作に区別してあり、誤操作しにくくていい。インパネ、ドアトリムの仕上げは上々だが、スラッシュ成形(やや柔らかい部分)の使用部位をあとひと息広げてもらうと、より満足度が高まりそうだ。


2830mmのホイールベースで後席のスペースは十分あり、シートもたっぷりとしたサイズと適切なクッションで、リラックスした着座姿勢がとれる。すっきりとフルトリム化されたトランクは、開口部高さが25mm低められ、573リットルという容量で理屈抜きで使いやすそうだ。

前席はヒップポイントを25mm、踵を10mmそれぞれ低めたのだそう。「いつの間にか高くなっていた」という着座位置がグッと低められた。確かに初めて乗り込もうとした際、足を前方に投げ出す姿勢は、2、3代目『プレリュード』を思い出させられたほどの低さに感じた。

ハンドリングは表情に乏しいが、直進安定性は国産トップクラス

パワートレーンはe:HEV(イー・エイチ・イー・ブイ)と呼ぶホンダ独自の2モーター方式のハイブリッド。エンジンは2リットル(145ps/17.8kgf・m)、モーターは135kW/315N・m(184ps/32.1kgf・m)のスペック。これに足回りには電子制御現減衰力可変式ダンパーが組み合わせられ、スポーツ/ノーマル/コンフォートの3つのドライブモードが選択可能となっている。“コンフォート”は日本仕様独自に用意されたモードだそう。

実際に走らせてみた印象は、動力性能面は十分に思えた。出足の加速は力強くスムースであり、折々でパワーフローの変化、切り替えでも自然にそれを実行してくれるのはe:HEVらしいところ。乗り味も、サスペンションのモードを問わず、総じて不快な揺れを均してくれる印象で、モードを切り替えでその度合いが変化するのがわかる。


ノイズ低減機能が与えられたホイールとタイヤ(BSレグノGR-EL=235/45R18 94W)は、荒れた路面での“ゴー音”や目地を通過した際の気柱共鳴音を、確かに通常より2ランク程度抑え込んでいる感じはする。

ただしハンドリングはやや無機質というか、車格は違うが、たとえば現行の『シビックセダン』のほうがステアリングフィールにもリアリティ、表情があり、ワインディングを走らせている際の挙動も自然に感じられる。ただし高速巡航中の得も言われぬ直進安定性の高さは、国産車の中でもトップクラスだと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《text:島崎七生人》

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