アクセスランキング

【ボルボ XC60 B5 新型試乗】「48V」だけじゃない大きな進化…中村孝仁

自動車試乗記

ボルボ XC60 B5 インスクリプション全 28 枚写真をすべて見る

ボルボ『XC60』に48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載した「B5」と呼ばれるグレードが誕生した。

少なくとも外観から判別できるのは、リアに付くB5のエンブレムだけであとはすべて従来のXC60と何ら変わらない。ただし、マイルドハイブリッド化だけでこのクルマを論じてしまうのは少なくとも間違いだと思う。

性能的に大きく変化しているかと言えば


確かに48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載したところで、従来の「T5」と呼ばれたガソリン車に対して大幅に燃費が良くなったわけでもないし、新たに気筒休止システムが導入されたからと言ってそれが現実的に体感できるものかと言えばそんなこともないし、性能的に大きく変化しているかと言えば、そんなこともない。

ボルボはメーカーとして今後いわゆる内燃機関のみを搭載した車両の生産は行わず、すべて何らかの形で電動化をしたモデルのみをラインナップすると公言し、これまでのPHEVに加えて新たなラインナップとしてこのBの頭文字で始まるモデルが投入されたということだけなのだが、実際に試乗してみてそれほど単純なことではないことが良く分かった。


ISGMと呼ばれる今回の48Vシステムは、一応トルクのブースト、オルタネーターの役割、それにブレーキ回生などを司る。正直なところこのシステムにボルボならではの特徴は無い。電動化というクルマの流れはそうした意味で益々メーカーのメカニカルな個性を失わせていく可能性があるし、現実的にもこの48Vシステムはどことは言わないが他のブランドが採用しているものと基本的に同じだという。

勿論エンジンはボルボオリジナルだ。いわゆるドライブeと名付けられた2リットル直4ユニットは、今回Gen3と呼ばれるフェーズに進化しているという。エンジンの中身自体かなり大幅に刷新されて、エンジンルームを覗いてみても例えばエンジンを覆うプラスチックカバーの形状が従来とは異なり、さらにはエンジンマウント自体がディーゼルと同等の大きなものへと変わっていた。これらは音振対策が施されたことを意味しているようで、実際室内の静粛性は確実に上がっている印象を受ける。

クルマの挙動そのものが明確に異なっている


で、実際にクルマを受け取って乗り出してみてすぐに気が付いたこと。それはクルマの挙動そのものが従来モデルとは明確に異なっているということである。具体的にどう異なっているかと言うと、一言で言えば快適になった。

試乗車はエアサス仕様。これも正直に告白すれば、従来のこのSPAと呼ばれるプラットフォームを用いたボルボ各車に関していえば、いわゆる鉄バネを用いたモデルの方が好感触で、エアサスの良さは全く感じられなかったのだが、今回ばかりは違った。

従来通り、エコ、コンフォート、インディビデュアル、ダイナミックという乗り味を変えてくれる可変システムのうち、コンフォートとスポーツを試してみると、明確にその違いを感じるだけでなく、どちらのモードに入れてもフラット感の強い引き締まった印象が得られるし、高速を走行すればダイナミックにしておけば、どしっと座り感の強い重めのステアリングフィールが高い直進安定性を示してくれる。

試乗当日はかなり強い横風が吹いていて、挙動を乱されることがしばしばあったのだが、非常に安心感が高く修正も容易であった。一方のコンフォートではソフトな乗り心地と程よく制御されたロール剛性を伴って、快適さは従来より大きく上がっている印象を受ける。

自動車業界の新たなフェーズを実感

48Vのおかげで信号待ちなどからの発進でも通常のアイドリングストップとは異なり、間を置くことなくアクセルを踏み込んだ瞬間にスッと走り出す。アイドルストップの場合はどうしてもアクセルを踏み込む→エンジン始動→発進というプロセスで、どうしてもドライバーの意思よりワンテンポ遅れてクルマが発進するが、このマイルドハイブリッドはそれがなく、非常にスムーズだ。

もっとも感じたメリットはそのくらい。実はトルクブーストをしているから、無用なシフトダウンやアップが減じられているそうなのだが、その点はまあ全体の挙動がスムーズになっているという点に集約されて、あまりメリットというかベネフィットとしては感じられない。

コロナのせいでクルマが変わったわけではないが、何となく自動車業界も新たなフェーズに入りつつあることを実感した試乗でもあった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める

《text:中村 孝仁》

編集部ピックアップ

TOP