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【トヨタ ヤリス 新型試乗】1.5Lガソリンは、HVと並ぶ主役となる…片岡英明

自動車試乗記

トヨタ ヤリス(1.5Lガソリン)全 16 枚写真をすべて見る

1.5リットルガソリン「Z」に試乗

3代続いた『ヴィッツ』は、モデルチェンジを機に海外と同じ『ヤリス』の名前を与えられ、新たなスタートを切った。期待のヤリスは、誰が見てもヴィッツ系のコンパクトカーと分かる明快なデザインだ。今回も全幅を1700mm以下に抑えている。が、踏ん張り感を増したフォルムで、フロントマスクも凛々しい。

カタログには「これまでのコンパクトの常識を変える、新しい時代のコンパクト」の文字が躍る。開発陣は、毎日をアクティブに躍動させる走りのいいコンパクトカーを目指した。だから世界ラリー選手権(WRC)で活躍しているヤリスWRCのイメージを、量産車にダブらせている。


ヤリスのパワーユニットは3種類あり、すべて直列3気筒のDOHC 4バルブだ。新設計の1.5リットルエンジンには「ダイナミックフォースエンジン」のニックネームが付けられ、ガソリン車、ハイブリッド車ともにロングストローク設計としている。

分かりやすく言うと、『RAV4』に積んでいる2.0リットルのM20A-FKS型を3気筒化した燃焼効率に優れたエンジンだ。ガソリン車に搭載されるM15A-FKS型エンジンは、直噴のD-4システムにバランサーシャフトを組み合わせた。最高出力は88kW(120ps)/6600rpm、最大トルクは145Nm(14.8kg-m)/4800~5200rpmを発生する。

気持ちいいステップ変速制御はヤリスの大きな武器


試乗したのは上級の「Z」で、トランスミッションはダイレクトシフトCVTと名付けたギア機構付きの自動無段変速機だ。タイヤは185/60R15サイズが標準だが、試乗車はオプション設定されている185/55R16サイズのブリヂストンエコピアEP150を履いていた。ヴィッツよりはるかにパワフルだし、CVTは発進ギア付きだから加速は冴えている。ノーマルモードでも軽やかな加速を見せ、パワーモードをチョイスすれば気持ちいい加速を楽しめた。

アクセルを強く踏み込みながら加速するとステップ変速を行う。応答レスポンスは鋭く、キレのいい加速を披露した。パワーモードを選ぶと4000回転を超えたあたりからグッとパワー感が増し、その気になれば6500回転まで引っ張ることができる。エンジン回転数と実際の速度の感覚差をほとんど感じさせない、気持ちいいステップ変速制御はヤリスの大きな武器だ。トルコンAT並みにスポーティな味わいが強く、運転するのが楽しい。

バランサーシャフトを内蔵しているから振動も上手に抑え込んでいる。だが、アクセルを深く踏み込むと3気筒特有のガサツなノイズが耳に付く。世界戦略車なのだから、ヨーロッパ勢並みに遮音を徹底してほしいところだ。また、エコを叫びながらアイドリングストップ機能がないのも不満点のひとつである。積極的に運転するほうが楽しいので、ステアリングにパドルシフトも欲しい。ちなみに高速道路と市街地を130km走っての平均燃費は20km/リットルの大台に乗った。悪くはない数値だ。

『カローラスポーツ』のように限界レベルまでコントロールしやすい


FF車はマクファーリンストラットとトーションビームのサスペンションを採用する。オプション設定の16インチタイヤを履いていることもあり、キビキビとした身のこなしを見せ、ワインディングロードでも正確なライントレース能力を披露した。ロールを巧みに抑え込むとともにダイレクト感のある気持ちいいハンドリングを満喫できる。ヤリスのなかではもっともスポーティなキャラクターだろう。しかもリアは踏ん張りがきく。4輪とも優れた路面追従性を身につけ、うねった路面を走っても優れた接地フィールを見せつけた。

ヤリスのガソリン車は『カローラスポーツ』のように限界レベルまでコントロールしやすい。リニアな操舵フィールは魅力だが、ロールを嫌ってサスペンションのストロークを短くしたこともあり、乗り心地はちょっと硬めと感じる。とくに荒れた路面や段差の乗り越えでは大きめのショックが伝わってきた。とくに1名乗車だと突っ張り感も強い。

また、先進安全装備の洗練度も今一歩だ。トヨタセーフティセンスは廉価グレードを除き標準装備だが、追従クルーズコントロールは30km/hを下回ると解除されてしまう。これはライバルの『フィット』に対し劣っている部分である。レーンキープアシストの制御も、ちょっと荒っぽい。これも残念なところだ。ただし、高度駐車支援システムは、このクラスではダントツの使い勝手のよさだった。

1.5リットルのガソリン車は、ハイブリッド車とともにヤリスの主役となるシリーズで、トータル性能はかなり高い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

《text:片岡英明》

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