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【ルノー ルーテシアR.S.トロフィー 新型試乗】当てもなく走り出したくなる欲望に駆られる…中村孝仁

自動車試乗記

ルノー ルーテシアR.S.トロフィー ファイナルエディション全 25 枚写真をすべて見る

現行最後の『ルーテシアR.S.トロフィー』

かつて乗った時も無類の楽しさを提供してくれた、ルノー『ルーテシアR.S.トロフィー』。そのファイナルエディションが限定50台で発売されたので乗ってみた。

以前に乗ったR.S.トロフィーと今回のファイナルエディションではいくつか異なるポイントがあるので、まずはその説明から。

外観はその当時(2015年)から多少のマイナーチェンジを受けていて、ヘッドライトやその下に付くライト類のデザインが変えられている。また、リアエンドのエンブレムなども異なり、ルーフアンテナもファイナルエディションではブラックシャークアンテナとされているなど、視覚的にはだいぶ異なっている。


最も大きな違いはホイールとタイヤ。当時はミシュランのパイロット・スーパースポーツが装着されていたが、今回のモデルではミシュランのパイロットスポーツ4とされていることだ。なお、サイズには違いが無い。

ファイナルエディションとしての仕様の違いは上記したブラックシャークアンテナの他に、ブラックエンブレム(前後)、シリアルプレートなどで大した違いはないのだが、やはり改めて試乗してみるとそのDNAそのものが、ライバルも含めたBセグメントのハッチバックとは大きく異なっていることが良く分かる。

硬くても十分に許容できるサスペンション


普通のクルマからいきなり乗り換えてみると、やはりそのサスペンションの硬さを痛感する。ビシッと引き締まったというか、とにかくボディ全体が一つの石のような塊である印象を強く持たせる。全ての動きがシンクロし、異なるベクトルで動くポイントがどこにもない。

都合8日間走らせていただいたが、足の硬さを痛感したのは初日だけ。人間に対応能力というか慣れにはつくづく感心させられ、2日目になると硬いけどまあ全然許容範囲となり、3日目頃には普通の乗り味に感じてしまう。これは確かに硬いのだが、前述したシンクロした動きにも一因があると思う。

というのも俗に乗り心地が悪いと感じるクルマの場合、例えば突き上げ感だけが突出して誇張されて、特定の路面では著しくそれを感じさせるようなものは、慣れがあってもその瞬間は乗り心地が悪いと感じてしまうのだが、このルーテシアR.S.トロフィーに関しては全域で硬く、しかし同時に路面の如何に関わらず、突出して悪くなる部分がどこにもないから、硬くても十分に許容出来てしまうのではないかと思うわけである。

ちょっと前だったら「超」が付く高性能だ


タイヤが、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツからパイロットスポーツ4に変わっていた。これって格下げ?と思わず思ってミシュランのサイトを覗いてみたが、現状スーパースポーツでルーテシアに合うサイズのタイヤが販売されておらず、その結果のチョイスだったのかな?とも思うが、実際に試乗してみると相変わらずとてつもない横G加速度を示してくれる。

かつてドイツの雑誌『シュポルトアウト』がテストした結果ではタイヤが異なっていた(ダンロップだった)が、このクルマの最大横G加速度は1.3Gだという。これ、普通に超高性能スポーツカーのそれに匹敵するレベルだから、如何に高い旋回Gを持っているかがわかる。恐らくそこまでは行かないにしても同じようなグリップレベルにあるように思える。だから、うわっ、ちょっとオーバースピードで突っ込んだかな?というようなコーナーでも全く動じず何事もなかったようにそのコーナーをクリアするから驚かされる。


エンジンについては手を入れられていない。即ち220ps、260Nmの最高出力と最大トルクを持っている。しかし、凄いと感じさせるのはそのピックアップの鋭さである。とりわけエンジン回転域がストライクゾーンに入っていれば、踏めば即座に反応して鋭い加速が始まる。最近は個人的に少しパワー的には麻痺しているのか、まあこれくらいならちょうどいいか…みたいな気持ちになるのだが、ちょっと前だったら「超」が付く高性能だ。

というわけで乗っていてとにかく痛快極まりなく、これぞ、「走る歓び」とても言おうか、当てもなくどこかに引っ張り出して走りたくなる欲望に駆られるクルマである。もうすでにノーマルモデルは本国で次世代に生まれ変わっている。恐らく早ければ日本でも今年中の導入だってあるかもしれない。ただし、まだR.S.のリリースは無い。一説ではアルピーヌと同じ1.8リットルターボが積まれるという話もある。益々楽しいクルマになる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★ 
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

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